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※2023年11月24日 日刊ゲンダイ1面 紙面クリック拡大
※紙面抜粋
※2023年11月24日 日刊ゲンダイ2面
※文字起こし
経済政策は「夢物語」(岸田首相)/(C)日刊ゲンダイ
「今年の賃上げは30年ぶりの高水準。経済の好循環が動き出しつつある」
「賃上げの流れを確実なものとして、成長と賃金の好循環を回します」
岸田首相が事あるごとに繰り返した「夢物語」が足元から崩れ去ろうとしている。
厚労省が21日に9月の毎月勤労統計調査の確報値を発表し、物価を加味した実質賃金は前年同月比2.9%減と7日公表の速報値2.4%減から下方修正。実にマイナスは18カ月連続だが、驚くのは名目賃金に当たる現金給与総額の伸び率だ。
1.2%増だった速報値から確報値は0.6%増と半減。速報値の計算後に届いたデータを集計した結果、パートらの割合が増えて下がったという。それにしても足元の名目賃金の上昇率が0.6%とはお寒い限りだ。
連合の最終集計によると、今年春の平均賃上げ率は定期昇給分を含めて3.58%と、3.90%だった1993年以来、30年ぶりの高水準を記録。組合員数300人未満の中小組合に限っても定昇込みで3.23%だったが、毎勤統計の結果とは大きく乖離している。
「連合集計は定昇とベースアップの合計値。定昇分は新規採用者など対象外の人もおり、実際の賃金アップにつながっていない側面もある。また、連合集計は労組を持つ企業が対象である一方、毎勤統計は5人以上の事業所が対象。より実態に近い」(厚労省雇用・賃金福祉統計室)
組合員の組織率は年々下がり続け、2022年6月末時点で16.5%と過去最低だ。従業員数の少ない企業ほど組織率は低下する。ホンの一握りを除いて、大半の人々の賃金はちっとも上がっていないのが実情だろう。岸田が唱える「経済の好循環」「賃上げの流れを確実に」の得意文句は、ほとんどホラに近いのだ。
過去43年間で最も貧しい国民生活
まるで給料が上がらず、実質賃金低下に苦しむ家計の様子は、内閣府が発表した今年7〜9月の実質GDP(国内総生産)に、にじみ出ている。速報値は前期比0.5%、年率2.1%と3四半期ぶりのマイナス成長。とりわけ雇用者報酬は実質0.6%減と、過去1年間でプラスは今年4〜6月だけ。あとは全てマイナスである。
マイナス続きの実質賃金に加え、個人消費支出の物価動向を示す「PCEデフレーター」は7〜9月には前期比0.6%増、前年比3.7%増と大幅に上昇。帝国データバンクの調査によると、今年一年間に値上げされた食品は10月までに累計3万2000品目超に及ぶ。物価高騰に給与の伸びが追いつかず、GDP全体の5割を占める個人消費が低迷するのは当然の帰結だ。
国内需要の増加が期待できないせいで、設備投資も2期連続のマイナス。政府もさすがに11月の月例経済報告で、国内経済の基調判断を10カ月ぶりに引き下げ。「緩やかに回復している」との表現に「このところ一部に足踏みもみられる」との文言を付け加えざるを得なかった。
悲惨な国民生活を物語る統計はまだある。総務省の家計調査だと、消費に占める食費の割合を示すエンゲル係数は昨年9月から今年8月まで月平均29%。第一生命経済研究所・首席エコノミストの熊野英生氏のリポートによれば、1980年以降の43年間で過去最高域に達しているという。
エンゲル係数は数値が高いほど、貧しさを表すのは知っての通り。今の国民の暮らしは過去43年間で最も貧しいと言っても過言ではないのだ。
苦悩する「下々」の暮らしなど眼中にない
それなのに、岸田政権がまとめた新たな経済対策は支離滅裂。裏付けとなる補正予算案が24日にも衆院を通過する見通しだが、総額13兆円余りに膨らんだ中身はメチャクチャだ。経済評論家の斎藤満氏が言う。
「本来の趣旨である物価高対策に投じるのは約2.5兆円。全体の2割にも満たず、それも原油元売りを喜ばせるガソリン価格高騰対策の延長など補助金頼み。その上、従来の公共事業の継続に計2.2兆円、中長期にわたって産業を支援する基金に計4.3兆円を計上。とても『緊要』とは言えない事業に兆円単位の巨費をつぎ込むのです。こうしたムダな歳出を削り、定額減税の原資にあてるなら、まだ納得できますが、岸田政権のやっていることは真逆。おまけに防衛増税に加え、次元の異なる少子化対策の財源を医療保険料に上乗せして徴収することまで企てています。選挙対策で言い出した減税詐欺のマヤカシで世論の総スカンを食うのは当然。国民を愚弄するのも『いい加減にしろ!』と言いたい」
ヨコシマな下心がミエミエの愚策だけに、岸田は減税の理由すらロクに説明できない。当初は「物価高対策」のはずが、実施は早くても来年6月で「即効性がない」と批判されると「デフレ脱却」「国民の可処分所得を下支えする」に切り替え。時には「子育て支援の意味合いを持つ」と苦しい理屈を持ち出し、最近は「賃上げを下支えする」とか言い始めている。
すでに年内解散カードを取り上げられ、何のための減税なのか、恐らく自分でも分からなくなっているに違いない。「増税イメージを払拭するためぐらいしか思いつかない」と、立憲民主党の泉代表に国会審議でコケにされる始末である。
「岸田ノー」で国民の心をひとつに
しょせん岸田も世襲3代目のボンボン議員。食料品や燃料費の値上がりに苦悩する「下々」の生活など眼中にないのだ。ただでさえ、日本の相対的貧困率は21年で15.4%に達し、OECD加盟国で最悪の水準。子どもの貧困率も深刻で、21年は11.5%、特にひとり親世帯は44.5%に跳ね上がり、およそ2人に1人が貧困状態にあるのだ。
それなのに今年2月、朝日新聞が報じた逸話にはギョッとする。同月、官邸を訪れた連合の芳野会長がひとり親世帯の惨状について「夏休みや冬休みは給食がなく、体重が減る子もいる」と話すと、岸田はソファから身を乗り出し、「え、そんな子どもたちがいるんですか」と驚いたというのだ。
「現実を把握せず、国民の暮らしに関心のない総理は一刻も早く退場すべきです」と、前出の斎藤満氏はこう続けた。
「日本の家計の金融資産残高は約2000兆円。岸田政権が3%の物価高を放置すれば、1年で60兆円も目減りしてしまう。しかも、岸田首相は『金融資産倍増』を掲げ、家計の金融資産の中から現預金1100兆円を投資に振り向けようとしています。しかし、現預金のうち全体の6割を所持するのは60歳以上の高齢者です。現預金を取り崩しリスク資産に回しても、いざ損失を出せば現役世代と違って取り戻す時間が少ない。老後資金が不足すれば長生き自体がリスクとなりますが、岸田首相には『損をしたら早く死ね』ということなのか。世論の大勢は選挙よりも国民生活に目を向ける首相を望んでいます」
国民の多くはもうこれ以上、いよいよ怪しくなってきた岸田の経済与太話に付き合っている暇などありゃしないのだ。
「ふがいない野党に目ぼしい『ポスト岸田』候補不在という惰性の政治にあぐらをかき、思い上がった態度がさすがに国民のハナにつき、岸田首相は今、重い代償を払わされています。今月の世論調査で内閣支持率は軒並み20%台に突入し、政務三役の醜聞辞任ドミノに加え、自民党5派閥のパー券収入不記載という新疑惑も噴出。岸田首相に上がり目ナシで、来月の支持率は10%台に沈んでもおかしくない。いい加減、自民党も『岸田おろし』に動かなければ国民は不幸になるばかりです」(法大名誉教授・五十嵐仁氏=政治学)
国民は「岸田ノー」で心をひとつにし、政権ぶん投げの「Xデー」を近づける必要がある。
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