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主権者意思での万博中止は正当
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2023年11月15日 植草一秀の『知られざる真実』
財政で一番大切なことは、本当に必要なもの、ことに支出を充てて、本当に必要でないもの、ことには支出を充てないこと。
しかし、現実は逆になっている。
何よりも大切な政府支出は無残に切り刻まれる。
その一方で、必要性がまったくないものに湯水のようにお金が注がれる。
どういうことか。
利権になる支出は拡大、利権にならない支出はカット、ということなのだ。
大阪万博問題が話題になっているが、正解はすでに出ている。
中止するしかないだろう。
当初の予算で執行できるなら、当初の方針を決めた根拠に基づき対応すればよい。
もともと、大阪万博を開催する必要もないし、それだけの財政資金を投下するなら、これよりも大切なもの、ことへの支出を優先するべきだった。
しかし、議会等の意思決定のプロセスを経て決定したのなら、実施もやむを得ないだろう。
意思決定の仕組みが定められており、正規の手続きに則って決定をしたのなら、多数の人が反対するとしても、実施することに一定の根拠はあると言えるからだ。
しかし、いま問題になっているのは費用が激増しているということ。
会場建設費が当初のおよそ1.9倍の最大2350億円に膨らむ見通しになった。
不足分を大阪万博実施に賛成の人や企業が自腹を切って捻出するなら実施も正当化される。
しかし、まったくそうではない。
当初、会場建設費は、国、府市、経済界で3等分して負担することとされた。
万博協会は当初、建設費が約1250億円と想定していたが、2020年の1度目の増額で1850億円に積み増しされた。
このときに府市両議会は再度増額が生じた場合は「国が責任をもって対応」とする意見書を可決した。
府市が「府市が責任をもって対応」とすることを決めたのなら意味がある。
府市が決めたのは、自らが負担することではない。
「国が負担すること」とする意見書を可決したところで、相手のあること。
勝手に決められることではない。
建設費の増額分を「国、府市、経済界で3等分して負担」というと、国民の負担は発生しないかのような錯覚が生まれるが、とんでもない。
「国」、「府市」とは誰のことか。
国民であり、府民であり、市民だろう。
万博開催で利益を得られると考えるから経済界はお金を出すのだろう。
万博を開催したい経済界と万博を開催したい個人が不足資金を賄うべきだ。
「国」の負担、「府市」の負担は国民、府民、市民の負担である以上、国民、府民、市民の同意が必要だ。
FNNなどが11月11・12日に実施した世論調査では、大阪・関西万博について「このまま開催」と答えた人は15.2%だったと報じられている。
「開催中止」との回答が26.9%
「費用を削減して開催」との回答が56.7%
だったとのこと。
「開催中止」と「費用を削減して開催」が全体の8割を超えている。
世界のなかで日本経済の衰退は突出している。
ドル表示名目GDPの推移では1995年を100としたとき、2022年の日本のGDPは76。
日本経済は27年前の4分の3の規模に縮小した。
同じ期間に米国GDPは3.3倍になり、中国GDPは24.5倍になった。
日本の労働者一人当たりの実質賃金は1996年から2022年までの26年間に14.4%も減少した。
世界最悪の実質賃金減少だ。
この状況下で、ほとんどだれも望んでいないイベントに1000億円単位の財政資金を注ぎ込もうとしていることが異常だ。
望んでいるのはその財政資金投下で潤う、一握りの利権関係者だけ。
東京の都市博を中止した実例がある。
日本国民が大声を出して万博中止を求めよう。
岸田首相に「聞く力」があるのかどうかを検証する、極めてわかりやすい、良い機会だ。
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