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※紙面抜粋
※2023年11月9日 日刊ゲンダイ2面
※文字起こし
意味不明(岸田首相)/(C)日刊ゲンダイ
岸田政権の迷走、支離滅裂ぶりが際立ってきた。
8日に行われた衆院財務金融委員会で、鈴木財務相から驚きの発言が飛び出した。
鈴木は、岸田首相が臨時国会前から訴えてきた「減税で還元する」との説明や意味について、立憲民主党の階議員から問われると、「(税収増分は)政策的経費や国債の償還に既に充てられてきた」と答弁。さらに「(還元は)財源論ではなく、国民にどのような配慮をするかとの観点で講じるものだ」と言い放ったのだ。
いやいや、ちょっと待て。岸田は2022年度までの2年間で、所得税と住民税の税収が合計約3.5兆円増えたことを踏まえた上で、「税収増を分かりやすく国民に税の形で直接還元する」と繰り返してきたはず。この言葉をそのまま受け取れば、増えた税収分を国民に戻します──という意味になるのだが、鈴木の答弁を整理すると、過去の税収増分はすでに使用済みであり、岸田が言う還元の「原資はありません」と認めたに等しい。
鈴木は「コロナ禍という苦しい期間に税収が増えた分をわかりやすく税という形で直接国民に戻し、国民の負担を緩和したい(意味)」などとモゴモゴ言っていたが、要するに岸田が唐突にブチ上げた「税収増を還元」は大嘘だと“暴露”したわけだ。
岸田政権の政策は「すべてが意味不明の妄想」
鈴木はまた、政府が来年6月からの実施を目指す所得税と住民税の減税を行えば、行わない場合に比べて国債の発行が必要になるとも言っていたが、新たに国債を発行して「借金」をすることがなぜ、「還元」になるのか。
あまりにむちゃくちゃで、これじゃあ、野党から偽装減税、増税隠し減税などと突き上げられるのも当然。今後の国会もますます大荒れ必至だ。
埼玉大学名誉教授の相澤幸悦氏(経済学、金融論)はこう言う。
「税収は上振れも、下振れもあるわけで、上振れしたら、当然、借金返済などに充てる。そっくりそのまま『還元の原資』になるはずがないでしょう。そもそも、税収増分を還元という話自体が思い付きとしか思えません。岸田政権が物価高に苦しむ国民への“還元”策を本気で考えるのであれば、食料品などの消費税率の引き下げでしょう。低所得者層ほど恩恵があるし、新たな財源も必要ありません。岸田首相は、異次元の少子化対策を派手に打ち上げながら、財源はこれから考えると言い出すなど、すべてが場当たり的です。周囲に政策的な助言を行うブレーンがいないとなると、あらゆる政策が同様に行き詰まることになりかねません」
政府は先週2日の臨時閣議で、物価高に苦しむ家計支援を柱とする総合経済対策を決定。岸田は会見で、「カギを握るのは賃上げと投資だ」と強調。6日の経済財政諮問会議でも、「来年の春闘に向けて、経済界に対して私が先頭に立って賃上げを働きかけていく」と意気込んでいたが、これもトンチンカン。賃上げするかどうかは、あくまで企業、経済界の判断であり、岸田がやるべきことは、実質賃金が18カ月連続で前年割れしているような経済環境を一刻も早く変えていくことではないのか。
「すべてが意味不明の妄想」──。野党だけでなく、与党からも批判的な声が飛び交い始めた岸田政権。退陣がいよいよ現実味を帯びてきたようだ。
岸田と一緒に自民党も瓦解させることが最善策
「09年の政権交代前に雰囲気が似ている。立て直しができなければ次期衆院選に大きく影響する」
7日付の読売新聞は<支持率下落 与党に危機感><「青木の法則」が現実味>と題し、岸田内閣に対するメディア各社の世論調査の結果に危機感を訴える閣僚経験者の声をこう報じていた。
「青木の法則」とは、自民党の青木幹雄・元官房長官が唱えたとされる「内閣支持率と与党第1党の支持率が合計50%を切れば、政権は瓦解する」──というものだ。
例えば、政権末期の森内閣は内閣支持率8.6%、自民党支持率22.5%、麻生内閣は同22.2%、同23.4%、鳩山内閣は同19%、民主党支持率20%(いずれも読売調査)などがあてはまるという。
岸田内閣の直近の内閣支持率・自民党支持率をみると、読売が34%.30%、朝日が29%.26%、毎日が25%.23%、日経が33%.32%、共同が28.3%.34.1%、時事が26.3%.21%、NHKが36%.36.2%。
「合計50%」を切っているのは、毎日と時事だけとはいえ、朝日もスレスレで、他の調査でも急落傾向は顕著だから、そろって5割を割り込んでも不思議ではない。まさにつるべ落としで真っ暗闇へまっしぐらだ。
国民生活よりも最重要なのは「総理の椅子」
公選法違反事件に絡んで法務副大臣を辞任した柿沢、女性問題で文科政務官を辞めた山田。わずか1週間足らずで政務三役が2人も辞任に追い込まれた岸田政権。
岸田は「適材適所」などとエラソーに言っていたが、もっとも適材適所じゃないのが岸田本人なのは言うまでもない。
国民生活よりも最重要なのは「総理の椅子」。国民のために働くのが政治家の本来の仕事なのに、権力にしがみつくのが仕事だと勘違い。党内派閥の意向と財界の動向ばかり気にし、出てくるのは庶民いじめの愚策ばかり。
「サラリーマン増税」「防衛費大増税」と立て続けに増税策が報じられ、世論の批判が高まった途端、形ばかりのヘンテコな“減税策”でごまかそうとする破廉恥。
そして、そんな男を総裁に担いでいる自民党もまた論外だろう。票に結び付くのであれば庶民の財産を収奪する怪しい宗教団体とも平気で手を結び、利権、権益を維持するためなら補助金をガンガンばらまく。
低賃金に苦しむ庶民がどんなに困っていても一顧だにせず、世界一高給といわれる3000万円超の歳費削減を検討しようとさえしない。
「人民の、人民による、人民のための政治」は、近代民主主義政治を表す言葉として知られるが、第2次安倍政権以降の政治は「自民の、自民による、自民のための政治」だ。
政治アナリストの伊藤惇夫氏はこう言う。
「岸田首相の求心力が低下している様子がうかがえるものの、かといって党内で“岸田おろし”の動きが広がっているわけでもない。かつてテレビ番組で首相になって最初に取り組むことを問われた際、『人事』と答えていたのが岸田首相ですから、そういう意味では人事がうまくいっているのかもしれません。ただ、それも限界寸前でしょう」
もはや岸田と一緒に自民党も瓦解させることが、国民生活が早く良くなるための最善策と言っていい。
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