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※紙面抜粋
※2023年11月8日 日刊ゲンダイ2面
※文字起こし
鼻白む持論をまた大展開の旧統一教会(現・世界平和統一家庭連合)の会見。(上は、岸田首相)/(C)日刊ゲンダイ
統一教会(現・世界平和統一家庭連合)の田中富広会長らが7日、また欺瞞に満ちた会見を開いた。安倍元首相が凶弾に倒れてから教団が会見するのは9回目。日本トップの田中が出席するのは3回目で1年3カ月ぶりだった。東京・渋谷の教団本部で開かれ、今回も会場の都合を理由に参加できたのは招待された大手メディアのみ。本紙は除外された。
質疑で記者から「広い場所を確保し、時間制限なしでフリーランスなどにも門戸を開くべき」と求められた田中は、「私が最初に会見した時はホテルでしたが、暴動のようなことが起きて、そのホテルは二度と使えなくなりました。民間のホテルにも迷惑をかけたこともありますので、ご理解いただきたい」と被害者ヅラ。参加を拒否された記者らと押し問答になったことを指しているようだが、何から何までブラックジョークが過ぎる。
大手メディアが生中継した7日の会見で統一教会が打ち出したのは、国への60億〜100億円の供託だ。元信者らの被害補償が必要になった際の原資として預けるというが、これとて財産隠しの一環。東京地裁で審理中の解散命令請求が確定すれば、税制優遇のある宗教法人格は剥奪され、1000億円規模ともいわれる教団の財産は裁判所が選任する清算人に処分される。
それを恐れた統一教会が韓国にある世界教団本部などに移転させる懸念が高まり、立憲民主党と日本維新の会は臨時国会に財産を保全する法案を提出。立法が待たれている。
「100分の1に減少」を連呼
田中は教団の資産総額については回答を避けながら、「解散命令裁判が確定するまでは資金の海外移転は考えていない」と釈明。「今国会で議論される財産保全措置法の必要性は全くない」と強調し、「それでも不安をお持ちの方のために特別供託金の提案をさせていただきます」と善行のようにアピール。
しかし、解散命令請求の対象である宗教法人の供託については「根拠法がなく、今のところ考えられない」(東京法務局)のが現状だ。現実味がないことを承知の上での提案にもかかわらず、田中は「このたび限定の特別措置として国の方で制度を用意していただければ、当法人で準備させていただく所存です」と続けた。
供託金の根拠は、全国統一教会被害対策弁護団が集団交渉で教団に請求する総額の約40億円だという。田中は「教団として法的に有効と認めたのは8億円」としつつ、「60億円あれば十分と考えるが、念のため最大100億円まで対応できる」と説明したが、弁護団は潜在的な被害額を含めると1000億円程度の可能性があるとしている。100億円は小さな額ではないが、被害全体からすればスズメの涙だ。
同席した勅使河原秀行教会改革推進本部長は「2009年のコンプライアンス宣言以降の献金について民事訴訟で和解した額は約5500万円で、09年以前から100分の1に減少しているわけです」「控訴審和解した献金も約2000万円で、09年以前から100分の1に減少しているわけです」と連呼し、「組織性、継続性、悪質性はいずれもない」などと主張。
数千万は端金だと言いたいのか。「22年事件以降はですね、教会改革推進本部を設置し、1回10万円以上の献金を受け取る時は(原資が)借金ではないことや、家族を困窮させることがないことを必ず申告していただき、受領証を発行している」と臆面もない。
政治家がよくやる政治資金集めのパーティーで、同一企業や団体、個人によるパー券購入額が20万円を上回った場合、政治資金収支報告書に記載しなければならない。逆に下回れば購入が表に出ることはないから、やりたい放題だ。統一教会の手法はこれとほぼ同じで、10万円に満たなければ信者の都合はお構いなしで、カネを収奪しているということ。
反日カルト集団は今なお反省ゼロ。組織防衛しか頭にない。解散命令と財産保全措置逃れに躍起なのがミエミエだ。もっとも、半世紀超も統一教会と癒着してきた自民党は財産保全の法整備に極めて消極的。憲法が保障する「信教の自由」をタテに立法に否定的だ。
自民党議員に文書送付と電話攻勢で懇願
統一教会問題を長年追及してきた鈴木エイト氏はこう言う。
「岸田首相が国会審議で答弁していましたが、野党法案に反発する統一教会は、自民党国会議員およそ50人の事務所に文書を送り付け、『宗教活動の自由と財産権に対する侵害が著しい』『違憲違法な立法措置がなされないようにお願い申し上げる』などと訴えている。電話攻勢もかけています。自民党側と話がついているのかは判然としませんが、財産保全の法整備を回避する折衷案として供託プランをブチ上げたのでしょう。
自民党のアシストで実現すれば、100億円を除く教団の財産を自由にしていいと認めることになる。銀行から送り先が発行したインボイスがなければ海外送金できないと指導されたとの説明がありましたが、高額献金が必要な『先祖解怨』の行事は韓国でのみ執り行われ、現地で支払う。外為法スレスレの100万円未満の現金持ち込みも増えています。
会見全体を通して、統一教会が問題の本質をどうとらえているかが浮き彫りになった。田中会長は『おわびする』と言いながら、『被害者も被害額も不明確』『被害者が特定されて初めて謝罪という言葉が使われる』と明確な謝罪から逃げた。『信仰を失って返還請求したら、即被害者というのは距離がありすぎる』とも言って『被害者』という表現も能動的に使わなかった。教団の加虐性を薄め、矮小化させる意図がアリアリです」
進退について問われた田中は「事件直後から役員会議の議案にのせたが、会長を辞めるというより、教団改革に集中していきたい」と言っていたが、本音は辞めたくてしょうがないという。
「そもそも、統一教会の人事は世界本部からの指令がなければ行われません。解散命令請求がカウントダウンに入っていた先月、米ラスベガスの教団施設で開かれた幹部会合に韓鶴子総裁も出席し、田中会長を含む6人の引責辞任が指示された。請求を回避するためです。しかし、命令確定は免れられるとの読みが優勢になり、いったん見送られましたが、情勢が厳しくなればお目こぼしを得るために田中会長らのクビを切ることになるでしょう。本人もすっかりヤル気を失い、辞めたがっていると聞きます」(鈴木エイト氏=前出)
解散させても解体させない計算
反日カルト集団は内部からも崩壊しつつあるようだが、世界本部は金づるがバンザイするのを決して容認しない。瀕死の統一教会が「100億円供託」ですがる岸田政権にしたって、汚染閣僚だらけだ。
政権浮揚を狙った9月の内閣改造直後から木原防衛相、伊藤環境相、鈴木総務相、盛山文科相の関わりが指摘されていたが、国会審議で松村国家公安委員長も祝電を数回送っていたことが判明。世間がア然とする中、パパ活疑惑で文科政務官を更迭された自民の山田太郎参院議員の後任に、本田顕子参院議員を任命した岸田首相の感覚には驚きを禁じ得ない。
かつての後援会筆頭最高顧問が統一教会の関連団体「日韓トンネル推進熊本県民会議」の議長を務めた崇城大理事長の中山峰男前学長だからだ。岸田が悲願の首相就任にリーチをかけた21年の総裁選で、県内の党員・党友票の取りまとめに動いた「熊本岸田会」の会長でもある。
汚染内閣の解散命令請求と財産保全をめぐるドタバタを見るマトモな国民の視線は冷たい。高千穂大教授の五野井郁夫氏(国際政治学)はこう言った。
「民法の不法行為を根拠に解散命令請求をしたのですから、宗教法人格を悪用して不正蓄財した統一教会の財産を被害者へしっかり戻すのが筋。ですが、岸田政権、統一教会ともに本気度がうかがえない。異常な献金要求で家庭を破壊された信者の被害を重く受け止めているとは到底思えませんし、あうんの呼吸で関係を維持しているように見える。自民党は集票マシンとして機能してきた教団を生かさず殺さず、宗教法人は解散しても、組織の解体は企図していないのではないか。教団票がなければ落選危機に直面する議員がゴロゴロいますから」
統一教会とベッタリだったのに「会合に出ただけ」などとごまかし続ける自民議員と、そんな連中にすがる統一教会の茶番劇にはつきあいきれない。
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