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岸田所信表明演説空虚な歩み
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2023年10月24日 植草一秀の『知られざる真実』
「日本国内閣総理大臣として、私の頭に今あるもの、それは、「変化の流れを絶対に逃さない、掴み取る」の一点です。
最初に掴まなければならない変化の流れは、「経済」です。
「経済、経済、経済」、私は、何よりも経済に重点を置いていきます。」
議場を白けさせる岸田首相の空虚な言葉。
岸田文雄首相が10月23日に所信表明演説を行った。
岸田氏はこう続けた。
「「変化の流れを掴み取る」ための「一丁目一番地」は経済です。
「低物価・低賃金・低成長のコストカット型経済」から「持続的な賃上げや活発な投資がけん引する成長型経済」への変革です。」
空虚な言葉が続く。
2021年10月に首相に就任した岸田文雄氏は翌22年5月に英国ロンドンで講演した。
「今日は、私が提唱する経済政策、特に新しい資本主義についてお話ししたいと思います。
私からのメッセージは一つです。
「日本経済は、これからも、力強く成長を続ける。安心して、日本に投資して欲しい。」、
Invest in Kishidaです。」
しかし、日本経済は昔も今も「力強く成長して」いない。
日米独仏英中の名目GDP推移(ドル換算、1995年=100)
※グラフクリック拡大
1995年の日本のドル表示名目GDPを100として指数化すると2022年のGDP水準は76になる。
27年間で日本のGDPは24%も減少した。
同じ期間に中国の名目GDPは245倍に拡大、米国のGDPは3.33倍に拡大した。
この事実があるなかで岸田首相は、
「日本経済は、これからも、力強く成長を続ける」
と声を張り上げた。
日本国民として心から恥ずかしく思う。
岸田氏が首相に就任した2021年10月の所信表明演説。
岸田氏は次のように述べた。
「私が目指すのは、新しい資本主義の実現です。
新自由主義的な政策については、富めるものと、富まざるものとの深刻な分断を生んだ、といった弊害が指摘されています。
成長の果実を、しっかりと分配することで、初めて、次の成長が実現します。
第一の柱は、働く人への分配機能の強化です。
第二の柱は、中間層の拡大、そして少子化対策です。
第三の柱は、看護、介護、保育などの現場で働いている方々の収入を増やしていくことです。
第四の柱は、公的分配を担う、財政の単年度主義の弊害是正です。」
岸田内閣が発足して2年の時間が経過する。
コロナ禍からの脱却が遅れに遅れた上、いまだに本格的景気回復を実現できていない。
2022年度の日本の実質GDP水準は2019年度を下回っている。
実質GDP推移(実質、兆円、2015年価格)
※グラフクリック拡大
岸田首相が
「「低物価・低賃金・低成長のコストカット型経済」から「持続的な賃上げや活発な投資がけん引する成長型経済」への変革」
を基軸に据えていること自体が誤りである。
物価上昇=インフレを放置して「持続的賃上げ」を求めても問題は解決しない。
インフレ下の賃上げがインフレを上回ることはない。
賃上げも実施できるのは一握りの大企業にとどまる。
インフレを超える賃上げを実施する中小零細企業などほとんど存在しない。
2年前の所信表明演説で岸田氏は「分配の是正」が重要だと述べたが、分配の是正はまったく進展していない。
インフレ亢進を放置すれば大企業労働者と中小零細企業労働者の格差は一段と拡大する。
大事なことは「インフレを抑止し、実質賃金上昇を誘導するとともに、すべての労働者に保証する最低所得水準を大幅に引き上げる」こと。
同時に税制改革の焦点は消費税減税だ。
消費税こそ格差拡大の元凶である。
税収が増大し、それを国民に還元するというなら、消費税減税を断行するべきだ。
岸田首相が打ち出しているのは負担が軽減され続けてきた大企業へのさらなる減税措置の拡大である。
「分配の是正」どころか「格差のさらなる拡大」に邁進していると言える。
岸田内閣の退陣が最大の経済対策になる。
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