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※2023年10月20日 日刊ゲンダイ1面 紙面クリック拡大
※紙面抜粋
※2023年10月20日 日刊ゲンダイ2面
※文字起こし
経済対策ではなく支持率対策(岸田首相)/(C)日刊ゲンダイ
20日召集の臨時国会。第2次岸田文雄再改造内閣発足後、初の論戦の舞台となる。
政府は今月中にまとめる物価高対応などの経済対策を11月2日に閣議決定し、その裏付けとなる2023年度補正予算案を今国会に提出する方針だ。
「増税メガネ」に過剰に反応
「増税メガネ」の呼び名を気にしているという岸田首相は、増税イメージの払拭に躍起で、このところ「成長の成果である税収増を国民に還元」と呪文のように唱えていた。どのような形で還元するつもりなのかと思ったら、期限付きの所得税減税を検討すると言い出した。それも、与党からの提言を受けた形ではなく、岸田が自ら言い出した体裁にして“減税イニシアチブ”をアピールしようという算段だ。
きょう官邸に自民・公明両党の政調会長と税調会長を呼んで、期間限定の所得税減税を具体化するよう指示。来週23日の所信表明演説で高らかに宣言する流れだ。
「減税は続ければ効果がありますが、期間限定では無意味なバラマキと変わりません。仮に1回きりなら、何の効果もない。当初は企業向けの減税メニューばかりだった経済対策が酷評され、『増税メガネ』のあだ名が定着して内閣支持率も下落したものだから、急ごしらえで所得減税を言い出したのでしょうが、国民の不満をなだめるためだけの弥縫策という他ない。そもそもが選挙のための経済対策であり、今の日本経済にとって何が必要なのかを真剣に考えたわけではないから、所得減税も小手先の対応だと国民に見透かされて、ますます支持率が下がるのがオチでしょう」(経済評論家・斎藤満氏)
木曜日の19日は自民党各派閥・グループの定例会が開かれ、政府が打ち出す経済対策についての発言が相次いだ。
とりわけ驚いたのが、谷垣グループ代表世話人で岸田と昵懇の遠藤利明・前総務会長が「(岸田は)増税メガネということに少し過剰に反応されてますし、選挙を意識して減税ということがありますが、まずは生活に不安を感じている皆さん方にしっかりと国が支援をしていくことが優先すべき課題だ」と話していたことだ。
増税イメージ払拭と選挙のための減税策だとゲロったわけで、所得税減税が定額にしろ定率にしろ、そんな口先のゴマカシで国民の支持を得られると考える方がおかしい。
なにしろ、岸田が打ち出した防衛費増額や異次元の少子化対策には多額の財源が必要で、実現するには国民負担増が避けられない。少なくとも、今後5年間で43兆円に増やす防衛費の年1兆円分は増税で賄うと岸田自身が表明している。いま3万円減税されたところで、その後に30万円の負担増が待っているのなら、これはもう「減税詐欺メガネ」ではないか。
どうしても防衛費増額をしたいのなら、税収増をそのまま回してもらった方がマシなくらいだ。期間限定で還元されても、その先に消費税や社会保険料の恒久的アップが待っているのでは、たまったものではない。
それに、岸田が指示する「税収増の還元措置」が定率減税だとすれば税制改正が必要で、早くて来年度からの実施になり、足元の物価高対策には間に合わない。年度途中の定額減税ならば非課税世帯への給付金とセットで、税収増分を還付する1回こっきりで終わる可能性大だ。
ホルムズ海峡封鎖、宗教戦争のリスクにも危機感ゼロ
「岸田政権が迷走している間に、中東情勢が緊迫化していることも非常に大きな懸念材料です。イスラエルとパレスチナのイスラム原理主義組織ハマスの衝突は、周辺国も巻き込んで一触即発の状況にある。もし、イランが参戦するような事態になれば、ホルムズ海峡が封鎖される可能性があります。日本は原油輸入の9割を中東に頼っていて、そのほとんどがホルムズ海峡を通って日本に運ばれてくる。中東情勢が不安定になれば、まずエネルギー供給の問題もあるし、石油価格が高騰すれば電気代や物流などすべてのコストが上がり、すさまじい影響が国民生活に降りかかってきます。いま政府がまとめようとしている経済対策では、とても対応できません。イスラエルが地上侵攻に踏み切れば、中東全体を巻き込んだ戦争に広がりかねないし、それがユダヤVSイスラムの世界的な宗教戦争に発展する可能性もある。ところが岸田政権には危機感がまったく感じられず、目先の選挙と自身の地位を守ることを最優先しているのだから呆れます」(斎藤満氏=前出)
17日にはハマスが実効支配するパレスチナ自治区ガザの病院で爆発が起き、パレスチナ人約500人が死亡したとされる。イスラエル軍は病院空爆を否定し、パレスチナの過激派組織「イスラム聖戦」のロケット弾発射失敗によるものだと主張しているが、真相はハッキリしない。
18日にイスラエルを訪れた米国のバイデン大統領は、病院爆破は「ガザのテロリスト」による犯行だと断定。今週中にもイスラエルの軍事支援に「前例のない」規模の予算を議会に要請することを明らかにした。20日、米国民向けにテレビ演説を行って、ウクライナとイスラエルへの連帯のメッセージを掲げる予定だ。
「やってる感アピール」だけ
だが、この混乱に出口も見通しも立たないことはハッキリしている。米国は2つの戦争を抱え、来年に大統領選が控えるバイデンはガンジガラメだ。そのうえ3日に米国史上初めて解任された連邦下院議長の後任も決まらない。19日に2回目の投票が行われたが、候補者が誰も過半数を得られず、決着しなかった。議長人事に振り回されているのは日本だけではない。
民主主義のチャンピオンだったはずの米国が分断と瓦解の危機に瀕し、ロシアとウクライナの戦争も中東情勢も先行きが見通せず、世界は混迷を極めている。問題は、こういう非常時に米国に付き従うだけの日本でいいのかということだ。
その日にもイスラエルがガザに地上侵攻を始めようかと国際社会の緊張が高まっていた16日に都内のスーパーマーケットを視察して、「野菜が高くなっている」などと能天気に話していた岸田は、さすがにマズイと思ったのか、17日から中東諸国の首脳らとの電話会談を始めた。
すでにエジプトのシシ大統領やサウジアラビアのムハンマド皇太子、欧州連合(EU)のフォンデアライエン欧州委員長ら6つの国・組織の首脳と電話会談を行ったが、当事国のイスラエル、パレスチナ自治政府とは話ができていない。
「やってる感をアピールしているだけなのです。本来なら、イスラエルとアラブ諸国の双方と関係を積み上げてきた日本の立ち位置を生かして、緊張緩和を主導することも可能なはずです。イランとも独自のパイプを維持しているし、今年はG7の議長国でもある。ところが岸田首相は、イスラエルの同盟国である米国の顔色をうかがって、主体性のある外交を展開することができない。自分の政権延命しか考えていないからです。これは経済対策にも通じるところで、国民の生活支援より支持率アップが目的になっている。こんな政権が続けば、国民は奈落の底に突き落とされてしまいますよ」(法大名誉教授の五十嵐仁氏=政治学)
岸田の無能無策を嘲笑うかのように、19日の東京株式市場でも日経平均は暴落。前日比611円63銭安の3万1430円62銭で取引を終え、これまで心理的節目として意識されていた3万1500円を下回ってしまった。
トップの保身と場当たりに振り回される国民は、このままでは本当に万事休すだ。
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