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※2023年10月16日 日刊ゲンダイ1面 紙面クリック拡大
※紙面抜粋
※2023年10月16日 日刊ゲンダイ2面
※文字起こし
ありのままか小芝居か(会見する細田博之衆院議長=右)、岸田首相は一般論で逃げる忖度(C)JMPA
岸田政権の遠心力に全く歯止めがかからない。自民党と半世紀超も癒着してきた旧統一教会(現・世界平和統一家庭連合)への解散命令の請求、反日カルト集団の関連会合で賛辞を贈っていた細田衆院議長の辞任会見。先週末の永田町の動きを経て実施された報道各社の世論調査は、散々だった。
共同通信の調査(14、15日実施)では、内閣支持率は先月の調査から7.5ポイント下落し、32.3%。2021年10月の岸田政権発足後、最低だった昨年11月と12月に記録した33.1%を下回った。不支持率は前回から12.8ポイントも跳ね上がり、過去最高の52.5%。自民が教団との関係を「断てていない」と答えたのは、「あまり」も含め計61.1%に上った。「統一教会問題はこれで幕引き」(官邸関係者)とのもくろみは木っ端みじんである。
毎日新聞の調査(14、15日実施)もボロボロ。支持率は25%。発足以来最低だった先月の調査と変わらず、政権運営の危険水域とされる30%割れは4カ月連続。不支持率も先月と同じ68%だった。ふざけた議長会見に沈黙する岸田自民党。国民は二度たまげさせられた。逆に、踏ん張ったのが不思議なくらいだ。
安倍元首相の横死から1年3カ月。銃撃事件から間もなく安倍を中心とする自民と旧統一教会のズブズブの関係が白日の下にさらされ、最大派閥の清和会(安倍派)の領袖だった細田にも疑惑の目が向けられてきた。19年10月に教団関連団体UPF(天宙平和連合)が主催したイベントに出席し、現トップの韓鶴子総裁の講演前に登壇。「この国際指導者会議の場は大変意義深い」と絶賛し、「今日の盛会を、そして会の内容を安倍総理に早速報告したい」と力を込めていたのだ。しかし、記者会見には一切応じず、「議長は会派離脱中」という理由で自民の点検対象から除外。批判を受けてA4用紙1枚とか2枚の文書でコメントを2回出し、教団関連団体の会合に8件出席したことなどを認めたが、詳細は語らずじまい。
年が明けて今年1月、衆院議院運営委員会の理事との懇談方式で非公開の説明を行ったが、国政選挙での教団票差配は「思い当たる事実はない」と回答。「安倍さんは大昔から関係が深い。こちら(自分)は最近だ」などと言いっぱなしだったのである。
「私はずーっとうつ状態」
逃げ回った末、ようやく開いたのが13日の会見だった。初期の脳梗塞や前立腺手術の影響などによる体調不良で議長を辞任するからという名目で、参加できたのは国会を取材する衆院記者クラブなどの加盟社で各社1人。会場入りできたのは約30人。結果的に予定の30分間をオーバーし、55分間ほど続いたが、制限だらけの上、はぐらかしのオンパレードだった。
旧統一教会との関係や会見を避けた理由を問われると、「安倍さんが殺されたのは、統一教会問題とは全く関係ない。私はいつも悲しんでいる。ずーっとうつ状態なんです。なぜ安倍さんが死ななきゃならないのか。7年間も(第2次安倍政権を)支えてきた私が、どうしてここでまだ苦労しなければならないのか」。教団との関わりを重ねて問われ、UPF会合に渋々触れたものの、「私としては〈安倍総理にもよろしく申します〉と言ったが、伝えていない。第一、伝える必要もない。ちょっとサービスで申し上げただけ。実質は何もない」。
安倍から教団との接点について聞いたかとの質問には「話したことは全くない。ただ、長い関係があったのは存じ上げている」。清和会会長時代の16年参院選をめぐる教団票の差配については、「私は会長を代わっており、その段階で参院選の問題は関与していない」とデタラメを言ったり、「それは伊達(忠一)さん(当時清和会所属、のちに参院議長)にお願いしていた」と責任転嫁したりしながら、「私は一切関わっていない」と言い張り、癒着を頑として認めなかった。
教団問題以前に報じられた女性記者や党職員へのセクハラ疑惑についても「単なるうわさ話」と否定。「5人でもセクハラを受けたという人が出て初めて『#MeToo』(運動)が成立する。私のところには1件もない」とハラスメントの本質を無視したメチャクチャな持論を展開した。
セクハラかわし世情に訴えるパフォーマンス!?
NGリストを用意して2時間制で逃げ切ろうとしたジャニーズ事務所並み、否、それ以上の噴飯会見は疑惑の説明とは真逆の被害者ヅラ。日頃は品行方正なクラブ所属記者が語気を強め、挙手がなくなるまで会見続行を求めたのはもっともだ。衆院議長公邸という権威の塊みたいな場所で、主があれほど突き上げられたことがあっただろうか。
高千穂大教授の五野井郁夫氏(国際政治学)はこう言う。
「蚊の鳴くような声といい、質問が聞き取れないようなそぶりといい、細田議長の一連の振る舞いには、パフォーマンスじみた印象を受けました。79歳で持病を抱えておられる。病との闘いで体調が優れない高齢者を記者が寄ってたかって責め立てイジメているような絵をつくり、世情に訴えようとしたのか。あわよくばセクハラ疑惑をかわそうと企んだのか。もしそうなら逆効果ですし、ありのままの姿だとしたら議員の職責を果たすことはできないでしょう。どこを切り取っても、お粗末極まりない会見だった」
当然、細田をめぐる報道は軒並み手厳しく、野党からも非難囂々となったが、与党からの批判は皆無と言っていい。
「残念ながら、非常に関係深かった安倍さんがいなくなった今、やはり自民党と教団のつながりの説明責任は細田さんにはあるように思う」
表立ってこう批判したのは、「自民党ひとり良識派」を自負する村上誠一郎元行革相くらいだ。
「5人衆」と肉ディナー
細田会見からおよそ3時間半後。官邸でぶら下がり取材に応じた岸田首相は「自民党の多くの国会議員が接点を有していたことについて、国民の皆さまに改めておわび申し上げる」「関係遮断を徹底する」と強調する一方、「一般論として、名乗り出る人がいなければセクハラはないという考えは適切ではない」と一般論で逃げる忖度である。質疑を4分で切り上げ、公用車で向かった先は六本木。客単価3万円ほどの高級ステーキ店で自民の世耕弘成参院幹事長と2時間半も話し込んでいた。世耕は清和会の「5人衆」の1人だ。いずれ戻って来る老害を静かに延命させる策でもめぐらせていたのか。
こんなデタラメがまかり通る理由はただひとつ。自民全体が細田と同じ穴のムジナだからだ。国会議員の半数以上が旧統一教会と関わりを持ち、1人が口を割れば共倒れだ。権力を握っている限り、「赤信号みんなで渡れば怖くない」で乗り切れる。保身のためには国民も国会も軽視するのが今の自民党の常識なのだ。立正大名誉教授の金子勝氏(憲法)はこう言った。
「細田議長は自分の無実を証明するために、旧統一教会をおちょくった。利用価値のなくなったオモチャをポイ捨てしたも同然で、政治家の悪辣さを露骨に表に出してしまった。ジェンダー平等意識の低さもしかりです。傲慢な権力者、はなはだしい時代錯誤。居場所を失うべき20世紀型政治家が自民党には健在だということを浮き彫りにした。議会制民主主義の手本とする英国では、下院議長の選挙区には対立候補を擁立しない慣例がある。政争に巻き込まれることなく、公正中立な議会運営に専念するための権威を持っているのです。三権の長たる衆院議長を首相になれない重鎮議員の一丁上がりポストにしたツケが衆参ダブル補選(22日投開票)に回っている。いずれも与野党一騎打ち。与党が2敗したら岸田首相は解散を当分打てない。党総裁再選戦略に禍根となること必至です」
ラストサンデーの15日、岸田は長崎4区入り。「激動の時代に、どの政党の政策を選び取るかという選挙でもある。自公連立政権の政策を進めていくべきか、みなさんに問いかけなければならない」と叫んでいた。答えはノーしかない。
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