http://www.asyura2.com/23/senkyo292/msg/136.html
Tweet |
※2023年10月11日 日刊ゲンダイ1面 紙面クリック拡大
※紙面抜粋
※2023年10月11日 日刊ゲンダイ
※文字起こし
世襲3代目の古びた家庭観の持ち主(岸田首相と秘書官だった長男・翔太郎氏)/(C)共同通信社
狂気の「留守番虐待」条例が撤回に追い込まれた。自民党の埼玉県議団が10日、県議会に提出していた虐待禁止条例の改正案を取り下げると発表した。全国で相次ぐ置き去りによる子どもの死亡事故を受け、子どもの車内放置を禁じる内容との触れ込みのはずが、県議団は県議会での質疑などで「放置」の定義を拡大解釈。一気に反発の声が広まった。
その説明によると、子どもだけで登下校させても、公園で遊ばせても、お使いに行かせてもダメ。自宅に子どもだけで留守番させるのはもってのほかで、近所に回覧板を届けたり、ゴミ出しなどで一時的に外出するのもダメ。これらは全て「放置」とみなされ、玄関の外で宅配便を受け取る程度がギリギリセーフ──。
共働きやひとり親世帯に限らず、日常で当たり前に見る光景だが、県議団はこれらの放置行為を「虐待」と定義。成人の擁護者に小3以下の児童への放置を禁じ、小4〜6については努力義務とした。罰則は設けないが、県民には疑われる事案を見つけたら、速やかに通報するよう義務づけた。
これでは、いつ誰もが「虐待する親」にされてしまっても、おかしくない。あまりにも現実離れした解釈の数々に多くの国民は、のけぞったに違いない。
改正案は今月4日に提出。6日に開かれた福祉保健医療委員会で自民に加えて公明も賛成し、数の力で押し切って、あとは13日の本会議での採決を待つのみ。定数93人の埼玉県議会で単独過半数を維持する自民の県議たちが考えを変えなければ、成立寸前だったのだから、ムチャクチャの極み。いくら何でもやりすぎだ。
「トンデモ埼玉」との矮小化は許されない
確かにネグレクト(育児放棄)や車内への置き去りで幼い子どもが次々と命を落としているのは大問題とはいえ、ここまで虐待の対象を広げれば、ただでさえ苦労の絶えない子育て世帯を、さらに追い詰めるだけである。
さすがに、このトンデモ条例には〈埼玉では子育てできない〉などとネット上を中心に批判が殺到。改正案の可決阻止を目指すオンライン署名への賛同は10万筆近くに達した。県選出の自民党国会議員たちも「寝耳に水」(県連会長の柴山昌彦衆院議員)だったようで、8日にはさいたま市が地盤の牧原秀樹衆院議員が、自身のX(旧ツイッター)に〈これだけの反対の声がある中強引に進めるのは私は断固反対〉と投稿していた。
身内にまで反対意見を突きつけられたのが効いたのか、県議団は13日の採決を断念。SNS上には〈『翔んで埼玉』が『トンデモない埼玉』にならなくてよかった〉などと安堵の声が飛び交っているが、今回の条例騒ぎは「撤回で幕引き」とはいかないだろう。
県議団の田村琢実団長は10日の会見でも、改正案の内容に「瑕疵はなかった」と言い張り、撤回の理由については「私の説明不足。全て私の責任」と弁明。「私たちの言葉足らずにより、県民の皆さまはもとより全国的に不安と心配の声が広がった」とも語っていたが、悪いのは不安を感じた県民や国民の方だと言わんばかりにも聞こえる。
むしろ、身内からのダメ出しは「言葉足らず」どころか、「雄弁すぎた」せいで「子どもを守る」ことを口実に、子育て世帯にさらなる抑圧を強いるという改正案の本質を包み隠さず露呈させたからではないのか。この期に及んでも、完全に諦めた雰囲気は感じられない。
そもそも、今回の条例騒動は自民党内の一部のおかしな地方議員が勝手にやらかした問題ではない。党内のアナクロな「理念」に基づく組織的な動きで、決して一地方議会の大暴走として矮小化すべきではないのだ。
古びた家族観に従えるのは一握りの富裕層のみ
自民党内のいわゆる「保守派」にとっては、地方議会こそが、自分たちの理念を押し付ける主戦場だ。かつて「新しい歴史教科書」を巡る問題でも「つくる会」とタッグを組み、全国の地方議会に手を突っ込んで、先の侵略戦争を美化する教科書を導入させる目的で請願や陳情を次々と採択させていったものだ。
埼玉県議団も条例の改正案を提出する際は「放置や置き去りの禁止を明文化した条例は全国で初めて」とアピールしていた。「全国初」と胸を張ったのは「子どもを守る」を合言葉にして、その裏で歪んだ理念を日本中に広めたがる保守派の強い意思すら、うかがえるのだ。
「今回の条例騒動から、にじみ出ているのは古色蒼然とした封建主義的な家族観です」と言うのは、高千穂大教授の五野井郁夫氏(国際政治学)だ。こう続けた。
「ひと時も子どもから目を離さず面倒を見ろと押し付けるのは結局、女性を家庭に縛り付けることを強制したがっているのと同じ。女性は子どもを産んで育てるのが当然という伝統的な家父長制度に基づく時代錯誤の発想です。この古くさい家族観こそ、関係を絶ったはずの統一教会(現・世界平和統一家庭連合)や、今も強力な支持団体である右派団体『日本会議』と相通じている価値観で、この国の少子化を30年以上も放置させてきた最大の要因でもあります。今回は衆参2補選の最中であり、解散・総選挙への警戒感も根強いため、世論の逆風を恐れて引っ込めたに過ぎません。この政党の理念は、そう簡単には変わりません」
密告奨励のディストピアで子育ては無理
大騒ぎになるまで「静観」していた自民党の国会議員はよくぞ、「次元の異なる少子化対策」などと言えたものだ。子どもの留守番すら虐待とみなす異次元レベルのトンデモ条例は、国民が求める少子化対策のニーズから明らかに逆行している。
「今の自民党内には世襲が当たり前という特権意識が渦巻き、国会議員はもちろん、地方議員クラスでも子育てや教育費の負担に悩む庶民の苦しさが理解できないのでしょう。今回の条例は、子育て中の女性が働きに出た途端、即ネグレクト扱いにした上、『密告』まで奨励する。そんなディストピアのような社会で、安心して子どもは育てられません。自民党の家庭観に従える世帯はベビーシッターを雇えるような一握りの富裕層くらいなものです。共働きが許されなければ世帯収入はガタ落ち、旦那がバンバン稼ぐ世帯しか子育てが許されなくなる。イビツな階級社会へ一直線です。自民の価値観栄えて国滅ぶという本末転倒な姿さえ想像できないのが、今の自民のお粗末さです」(五野井郁夫氏=前出)
今年4月発足の「こども家庭庁」の名称に、わざわざ「家庭」を盛り込んだのも、自民党の保守派が「子どもは家庭で育てるものだ」と騒ぎ立てたから。社会の実情に沿った制度の導入を拒み、子育て責任を女性に押し付け、少子化を放置してきた自民党。こんなアナクロ政党に国政を任せておいていいのか。立正大名誉教授の金子勝氏(憲法)はこう言った。
「世襲3代目の岸田首相自身、古びた家庭観の持ち主で、子育ては妻の『ワンオペ育児』に任せきり。長男を後継含みで首相秘書官に据えた身内びいきに加え、公邸忘年会のバカ騒ぎで辞職に追い込まれても、悪びれもしません。女性閣僚の数だけ増やし、女性の活躍に寄り添うふりをしても、しょせんは舌先三寸。次元の異なる少子化対策だって異次元の軍拡路線の一環で、戦前の『産めよ、増やせよ、国のため』のスローガンと同じ兵隊の数を増やしたいだけに過ぎないのではないでしょうか」
これじゃあ、自民は22日投開票の衆参2補選に勝てるわけナシ。いくら、自民がごまかしても、有権者はもう、アナクロ政治をお見通しだと信じたい。
▲上へ ★阿修羅♪ > 政治・選挙・NHK292掲示板 次へ 前へ
最新投稿・コメント全文リスト コメント投稿はメルマガで即時配信 スレ建て依頼スレ
▲上へ ★阿修羅♪ > 政治・選挙・NHK292掲示板 次へ 前へ
スパムメールの中から見つけ出すためにメールのタイトルには必ず「阿修羅さんへ」と記述してください。
すべてのページの引用、転載、リンクを許可します。確認メールは不要です。引用元リンクを表示してください。