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※2023年10月10日 日刊ゲンダイ1面 紙面クリック拡大
※紙面抜粋
※2023年10月10日 日刊ゲンダイ2面
※文字起こし
時代遅れの祭典にどれだけの税金を積み増すのか(岸田首相)/(C)日刊ゲンダイ
自民党が「減税」をチラつかせるのは、決まって選挙前だ。そして、選挙が終われば国民に負担増が降りかかってくる。この繰り返しだ。
岸田首相が、物価高対策に関して「今こそ税収増を国民に適切に還元すべき」などと言って、10月中に経済対策を取りまとめるよう指示したことで、選挙が近いのではないかというムードが永田町に蔓延している。
自民党内からは、「20兆円規模の財政出動」や「消費税減税」を求める声も出てきた。物価高に苦しむ国民生活を真剣に考えているわけではなく、選挙目当ての動きだ。選挙に弱い自民の若手・中堅議員が名を連ねる「責任ある積極財政を推進する議員連盟」は、「物価高対策として消費税の5%への減税、食料品など8%の軽減税率が適用されている商品は時限的に消費税率ゼロ」なんて提言もしているが、何を今さらという話だ。ガソリンの暫定税率廃止にも難色を示してきたのに、消費税減税が実現する可能性は限りなく低い。選挙向けのパフォーマンスでしかないのは、国民もお見通しだ。
10日告示の衆院長崎4区補選と5日に告示された参院徳島・高知選挙区の補選は、ともに与野党一騎打ちの構図で、接戦が予想されている。ここで2敗すれば、岸田の解散戦略にも綻びが生じてくる。
「増税メガネ」のあだ名を気にしているという岸田は、減税イメージを打ち出して22日の投開票までに少しでも支持率を上げて補選を乗り切り、あわよくば解散に打って出るつもりかもしれないが、「減税解散」で簡単にごまかされると思っているなら、国民をバカにし過ぎだろう。
減税は法人と一部の特権階級だけ
岸田は今般の経済対策について、「税制、給付、社会保障におけるさまざまな軽減措置、インフラ投資、その他あらゆる手法を動員して思い切った対策にしたい」と言っているが、これまでブチ上げてきた「新しい資本主義」は新しくなく、「異次元の少子化対策」がちっとも異次元じゃなかったことを考えれば、「思い切った対策」も推して知るべしというものだ。
「減税といっても、設備投資減税や賃上げ税制など法人向けのメニューか、ストックオプション減税のような一部の特権階級が対象のものばかりで、一般国民にはほとんど関係ない。『増税メガネ』、さらには『増税クソメガネ』という不名誉なあだ名を返上したくて、減税を強調しているのでしょうが、広く国民全体に恩恵がある消費税減税は決してやろうとしない時点で、岸田首相が言う『減税』はマヤカシなのです。それは、反対の声が多いインボイス制度を強行して消費税の税収を増やそうとしていることを見ても分かる。本気で国民負担を減らす気があるのなら、減税アピールの前に巨額の税金を投入する大阪万博の中止や縮小を決めるべきではないでしょうか」(法大名誉教授・五十嵐仁氏=政治学)
準備の大幅な遅れが問題になっている2025年大阪・関西万博の会場建設費は、18年当初の見積額が1250億円だったが、20年時点で1850億円に上振れ。建築資材の高騰や工事の遅れでさらに膨れ上がる見込みだ。この建設費は国、大阪府市、経済界が3分の1ずつ負担することになっている。つまり、3分の2が税金で賄われるのだ。建設費が上振れすれば、その分、国民負担も増える。
承知断念の札幌冬季五輪に大阪万博も続くべき
30年の冬季五輪・パラリンピック招致を目指していた札幌市が5日に断念する方針を固めたことは、大阪万博にとってもひとつの指針になるのではないか。
札幌市の秋元市長は11日、日本オリンピック委員会(JOC)の山下会長と会談し、34年以降の招致について進め方を協議する。
12日からはインドで国際オリンピック委員会(IOC)の理事会が予定されていて、年内にも開催地が決まりそうなタイミングで札幌市が招致断念を決めたのは、開催に関して市民の支持が広がらなかったことが大きい。
IOCは開催都市の選定に「市民からの支持」を重視するとしている。今年4月の札幌市長選では、五輪招致の是非が焦点になった。推進派の秋元市長が3選を果たしたものの、得票率を大きく減らした。招致に反対する候補に票が流れたためだ。この結果を受け、JOCの山下会長も「市民の多くの方々が懸念と不安を持っていることがはっきりした。理解を得ないで進めていくことは現実的に困難だ」との見解を表明していた。
支持が広がらなかった背景には、21年の東京夏季五輪をめぐる汚職や談合で逮捕者が相次いだことがある。
「コロナ禍で開催を強行した東京五輪は完全に負の遺産になってしまった。逮捕者が続出して五輪のイメージが悪くなったことだけでなく、ケタ外れの開催費用も国民負担としてのしかかってくる。大阪万博も同じことになるのは目に見えています。理解が広がらずに札幌冬季五輪の招致を断念したことを踏まえれば、世論調査で国民の大半が『関心がない』と答えている大阪万博も中止か、少なくとも当初予算の1250億円で収まるように規模を縮小すべきでしょう。身の丈に合わない税金投入は国民の理解を得られません」(ジャーナリスト・横田一氏)
東京五輪は当初の5倍に膨張
会計検査院が昨年末に公表した調査報告によると、道路整備など関連経費も加えた東京五輪・パラリンピックの開催費用総額は3兆6845億円に上るという。「コンパクト五輪」とか言って開催地に立候補した際の見積もりは約7340億円だったが、終わってみれば5倍に膨れ上がっていた。そこからどれだけ中抜きされ、裏で汚いカネが飛び交っていたのかも分からない。うたかたの祭典に血税が消えてしまった。
大阪万博では、膨張する建設費とは別に、政府が会場警備費として200億円程度を負担する方針だ。安倍元首相の銃撃死などを理由に、警備態勢の強化に国費を投じるというのだ。
見えない負債もある。各国の万博パビリオン建設が進まないことを受け、経産省はゼネコン向けの「万博貿易保険」を創設。発注元の参加国側から工費が支払われない場合に代金の9割以上を保証するというもので、取りっぱぐれリスクを減らして建設会社の受注を促進する狙いだが、この保険は政府が全額出資する日本貿易保険が運用する。原資は税金だ。
「万博などという時代遅れのイベントにどれだけ税金を積み増すのか。これだけ遅れが出ているのに無理して開催したところで、五輪も万博も利権の祭典でしかないことに国民は気づいている。得をするのは一部のステークホルダーだけで、多くの国民にとっては負担増になるだけなのです。岸田政権は一事が万事で、支持率目当てで一部の支持層に税金をバラまき、結果として国民負担を増やしている。20兆円規模の補正予算を組んでせっせと法人減税をするなどという話は典型です。20兆円は国債発行で賄うのでしょうが、それは将来的に国民負担になるだけなのです。1兆円減税するから後で20兆円払えと言っているようなもので、デタラメもいいところ。岸田政権の『減税』にダマされてはいけません」(五十嵐仁氏=前出)
岸田は8月末の万博関係者会議の席上、「内閣総理大臣として政府の先頭に立って取り組む」とか言っていたが、それだけの権限があるのなら、先頭に立って万博中止を決めたらどうなのか。マヤカシの減税アピールより、よほど支持率アップに効果があるのではないか。
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