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※紙面抜粋
※2023年9月23日 日刊ゲンダイ2面
※文字起こし
国民が求めているのは「投資しやすい環境」ではない(C)共同通信社
絶望した国民も多いのではないか──。内閣改造後の会見で「新しい体制で経済対策をつくり、早急に実行していく」と胸を張りながら、国会も開かずのんきに訪米してしまった岸田首相。
それでも、さすがに少しはマトモな経済対策を練っているのだろうと期待した国民もいたに違いない。ところが、出てきた経済政策の目玉が「資産運用特区」の創設だったのだから国民は唖然呆然だろう。
日本時間の22日未明。訪問先のニューヨークで岸田が打ち出したのが「資産運用特区」だった。金融関係者200人を相手に英語で講演し、「世界の投資家のニーズに沿った改革を進める」「日米を軸に資産運用フォーラムを立ち上げたい」とブチ上げた。ほとんど投資家目線だった。
「資産運用特区」の狙いは、英語のみで行政対応が完結するように規制を緩和することで、海外の資産運用会社の日本進出を促すというものらしい。
しかし、いくらなんでも、いま最優先すべき経済対策は「資産運用特区」の創設ではないだろう。まさか、本気でそれで国民生活が良くなると思っているのか。
もはや、この男と国民との乖離は行きつくところまで行ってしまったのではないか。あまりにも認識がかけ離れている。ジャーナリストの鈴木哲夫氏がこう言う。
「いま庶民が求めているのは物価対策でしょう。1年以上、物価高が止まらず暮らしは相当苦しくなっています。それに『資産運用特区』をつくったとして、投資にカネを回せる余裕のある庶民がどれほどいるでしょうか。岸田首相は庶民の暮らしが分かっていない。分かろうともしていないのだと思う。驚いたのは、今年の夏休み、夫人と一緒に高級百貨店の日本橋三越に行き、1時間、買い物を楽しみ洋服や食品を購入したことです。しかも、それをメディアに報じさせている。なぜ、パフォーマンスでもいいから、激安スーパーに行かなかったのか。いったい岸田首相は、誰のために経済対策を打とうとしているのでしょうか」
これでは国民生活が良くならないのも当然である。
誰が衰退国に投資するのか
そもそも、特区を創設したとして、それで日本が投資の対象になるのだろうか。30年間、停滞する日本経済に本気で投資したいと考える投資家がどれだけいるのか疑問だ。
バブルの絶頂だった1989年、世界の株式時価総額のランキングで日本企業はトップ10に7社も入っていたが、いまやトップ100で見ても、日本企業はトヨタ自動車が39位にランクインしているだけだ。
国際競争力ランキングでも、調査対象の64カ国・地域中、日本は35位と過去最低に落ち込んでいる。国民1人がどれくらい稼げるかを示す労働生産性も、21年はOECD加盟38カ国中、29位。韓国には2018年に抜かれてしまった。
もはや日本の国力低下は隠しようがない。足元で進む円安も、それを物語っている。国際決済銀行が21日に発表した今年8月の円の実質実効為替レートは、53年ぶりに過去最低を更新。1ドル=360円の時より、円の価値は落ちているのだ。
そんな日本経済の実態を見透かしているのだろう。岸田が演説で「資産運用特区」の創設をブチ上げても、株価はピクリとも反応せず、むしろ、22日の日経平均の終値は前日比168円安というありさまだった。経済評論家の斎藤満氏はこう言う。
「『通貨が強い国に資金を投じる』が、投資の鉄則です。かつてと違い国内企業の国際競争力は落ち、円の実力も落ち込んでしまっている。そうした国にいくら投資を呼びかけても、リスクを嫌がる投資家が資金を投じるとは思えません。もちろん、外国人が日本の土地や企業を買収するケースも見られますが、それは円安が急激に進行し、『お値打ち価格で買えるから』というだけのこと。将来の成長に期待する本質的な投資とは別物です」
菅政権より劣る経済政策
いま日本経済に必要なのは、「資産運用特区」の創設といった小手先の株価対策ではなく、産業の構造転換なのは明らかだ。
人材を育て、新たな産業を生み出す。凋落した国力を高めるには、それしかないはずだ。企業の収益力がアップしなければ、株価だって上がりはしない。
なのに、岸田政権からは、日本経済を再生させるための政策がまったく出てこない。まだ菅政権の方が、日本経済の再生を本気で考えていたのではないか。
やり方は強引だったり、賛否はあったが、インバウンドを呼び込むことで「観光立国」を目指し、日本の農産物の輸出に総力を挙げていた。携帯電話の料金引き下げも実現させている。
前出の鈴木哲夫氏はこう言う。
「秋田の農家出身、集団就職という菅さんは、庶民生活と、農業や観光といった日本の強みを肌で知っていたのでしょう。叩き上げだから、仕事をしなければという気持ちも強かったのだと思う。一方、岸田首相は典型的なセレブ育ち。ただ、たとえセレブでも庶民生活を知ることはできるはずです。かつて『所得倍増』を掲げた池田勇人首相は、庶民の暮らしを知るために、わざわざ変装して店に行き、野菜の値段などをチェックしていたといいます。国民の生活を気にしていたのでしょう。岸田首相に、そうした思いがあるのかどうか。満を持して出してきた経済政策の柱が『資産運用特区』なのだから心配です」
この期に及んでアベノミクスを継続
「新しい資本主義」などと口にしていたが、この期に及んで投資規制の緩和を押し出すなんて、岸田の発想の根っこは、相も変わらずアベノミクスの継続ということだ。
しかし、10年続けたアベノミクスで分かったことは、たとえ「異次元緩和」で大企業がボロ儲けしても、庶民にはまったく恩恵はないということだ。しかも、大企業は新たな事業への投資や「人への投資」をせず、内部留保ばかりため込んできた。アメリカで生まれたGAFAといった新興企業が育つことはなかった。その結果、「失われた30年」の停滞を招いたのだ。
そんなことは分かり切っているはずなのに、この先も新自由主義、アベノミクスを継続させようとしているのだから、どうしようもない。「失われた30年」が40年、50年に引き延ばされるだけだろう。
「異次元緩和、アベノミクスの大きな弊害は、知らず知らずのうちに大企業を弱体化させていくことです。異次元緩和による低金利と円安によって、大企業はぬるま湯につかり、企業努力を怠っても収益を上げられる構造になっている。しかも、一般の国民にとっては、恩恵がないばかりか物価高の要因になってしまっている。一刻も早く現状の路線から脱却すべきです。ところが、日本経済は、この麻薬漬けから抜け出せなくなっている。岸田首相も新たな道を模索する気概がない。『資産運用特区』の創設がその象徴です」(斎藤満氏=前出)
経済対策の柱が特区創設という暗澹。このまま岸田に任せていたら、日本経済は破滅必至だ。今さら「投資してくれ」なんて、見当外れもいいところだ。
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