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中国禁輸に対抗し岸田政権が旗振るも…日本産水産物「食べて応援!」大合唱のアベコベ
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/life/328872
2023/09/09 日刊ゲンダイ
家計も助けて(参院経済産業、農林水産両委の連合審査会で答弁する西村康稔経産相)/(C)共同通信社
「食べて応援!」の大合唱だ。東京電力福島第1原発で発生したALPS処理水の海洋放出をめぐって8日、衆参両院で経産委員会と農水委員会の連合審査会が開かれた。放出を強行した岸田政権は国を挙げて日本産水産物の消費キャンペーンを打っているが、先にやるべきことがあるんじゃないか。
◇ ◇ ◇
「国内消費の拡大に向けて、さまざまなイベント、キャンペーンを実施している」──。参院の連合審査会で、西村経産相は中国による日本産水産物の全面禁輸を念頭に説明。「閣僚も先頭に立ってやろうということで、岸田総理も8月30日にALPS処理水の海洋放出後に水揚げされたスズキやタコを食べられて、安全性や魅力などをアピールした」などと胸を張った。
焦点となったのは「中国依存からの脱却」と「国内需要の拡大」だ。立憲民主党の徳永エリ議員が東大大学院准教授の意見を引き合いに、「中国向けの日本の水産物輸出は1600億〜1700億円」「国民約1億人が年間1600〜1700円を上乗せして消費することで中国向け輸出分を国内需要に置き換えることができる」と指摘した。
徳永議員が国内の需要拡大に向けた施策を求めたのに対し、適性が疑われている野村農相は「浜田防衛相が全国の自衛隊の基地や駐屯地で、すべて食材は『常磐モノ』に切り替えるということで指示された」などと答弁。「相当、消費拡大につながるんだろうと思います」と、トンチンカンな受け答えをしていた。
水産物は軒並み値上がり、物価高騰で実質賃金も16カ月減
(農水省の公式SNSから)
そんなトップとは対照的なのが、農水省の公式X(旧ツイッター)。これがバズりまくっている。
〈#食べるぜ ニッポン!〉とのハッシュタグを考案し、〈食べるぜ〉を赤色、〈ニッポン!〉を銀色の独特なフォントで強調した画像を作成。画像とともに〈日本産水産物の消費拡大に資する取組を実施します〉を投稿したところ、なんと閲覧数は1900万回超え。公式アカウントを開設して以来、最多記録をたたき出した。
〈#食べるぜ ニッポン!〉の元ネタは、2016年にツイッター上で話題を呼んだ〈5000兆円 欲しい!〉の画像といわれている。農水省にオマージュしたのかどうか聞くと、「そうではなく、インパクトの強いフォントを使った」(広報室)との回答だった。
政府は一丸となって「食べて応援!」の旗を振っているが、家計を取り巻く厳しい事情を承知の上なのか。
水産庁の「水産白書」(2022年)によると、「漁業及び養殖業の平均産地価格」は21年に前年から16円/キログラム上昇し、327円/キログラムに値上がり。不漁によって漁獲量が減少しているサンマやスルメイカも高騰し、生鮮魚介類の年間1人当たり購入量(22年)は前年より14%減少した。価格の大幅な上昇が要因とみられている。
農水省の「食料・農業及び水産業に関する意識・意向調査」によれば、魚よりも肉を買う理由は「肉類を家族が求めるから」(45.9%)に次いで、「魚介類は価格が高いから」(42.1%)だった。
「食べて応援!」とハッパをかけられたところで、水産物は値上がり。物価高騰で実質賃金の16カ月マイナスが響き、家計消費支出は5カ月連続マイナスだ。無策の犠牲になっている水産事業者は気の毒だが、応援して欲しいのは消費者も同じだ。経済ジャーナリストの荻原博子氏がこう言う。
「国内の水産物需要が伸びないのは、やはり値段が上がっているからでしょう。かつては庶民の味方だったサンマも値上がりしています。肉類も高騰していますが、鶏肉なら魚の切り身よりも安い。ガソリンや電気・ガス代の高騰、食品の値上がりが家計を圧迫して節約志向が強まっているのに、政府は『食べて応援』する余裕があると考えているのでしょうか。まず政府には、国産の魚を庶民が気軽に食べられる政策を打ち出して欲しいものです」
もとをただせば、人口減で細る国内需要を穴埋めするために農林水産物・食品の輸出拡大が図られた。買い手がいなくなった途端に「食べて応援!」なんて言われると、こう言い返したくなる。だったら5000兆円欲しい!
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