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※紙面抜粋
※2023年9月8日 日刊ゲンダイ2面
※文字起こし
到底「解体的出直し」とは言えない(故・ジャニー喜多川氏の性加害問題について会見する、右からジャニーズ事務所の藤島ジュリー景子現社長、東山紀之新社長)(C)日刊ゲンダイ
この国のエンタメ業界を牛耳る組織の異常性が改めて浮き彫りである。ジャニーズ事務所創業者の故・ジャニー喜多川元社長による性加害をめぐり、事務所が7日、ようやく会見。300人もの報道陣が詰めかけ、質疑は4時間超に及んだ。そこで発表されたのは、ジャニー氏の姪の藤島ジュリー景子社長が性加害を事実と認め、「心からおわびを申し上げます」とする謝罪。5日付で社長を引責辞任したものの、被害者の補償にあたるため代表取締役にとどまる中途半端な処分。そして、後任に元少年隊の東山紀之氏(56)が就いたというア然とする新体制への移行だった。
一連の性加害問題を調査してきた外部専門家による「再発防止特別チーム」(座長・林真琴前検事総長)が先月末に発表した調査報告書は、「喜多川氏は古くは1950年代に性加害を行って以降、ジャニーズ事務所においては1970年代前半から2010年代半ばまでの間、多数のジャニーズJr.に対し、長期間にわたって広範囲に性加害を繰り返していた」と認定。性加害が繰り返された原因として@ジャニー氏の性嗜好異常Aジャニー氏の姉・メリー氏による放置と隠蔽Bジャニーズ事務所の不作為C被害の潜在化を招いた関係性における権力構造--があったと結論づけ、こう提言し、実行を求めた。
「ジャニーズ事務所が解体的な出直しをするため、経営トップたる代表取締役社長を交代する必要があると言わざるを得ず、ジュリー氏が代表取締役を辞任すべきと考える。これにより、ジャニーズ事務所におけるガバナンス不全の最大の原因の一つである同族経営の弊害も防止し得ることになる」
作法を身につけた大番頭が矢面に
ところが、フタを開けてみれば、ジュリー氏にとって身内も同然の東山氏へのポスト委譲。ジュリー氏は100%株主のままで、院政シフトは疑いようがない。
高千穂大教授の五野井郁夫氏(国際政治学)はこう言う。
「ジャニー氏による性加害問題は、英BBCが3月に放送したドキュメンタリー番組『J-POPの捕食者 秘められたスキャンダル』によって国内外に周知され、頬かむりを続けてきたジャニーズ事務所がようやく追い込まれましたが、差別やハラスメントを看過しない国際感覚からすれば、『解体的出直し』とは到底言えない。あり得ません。東山氏が会見で〈藤島とは14歳ぐらいのときに会って、僕らは幼なじみみたいな関係性〉と言っていたように、2人の付き合いは深く、家族同様。キャスター経験も積んだ東山氏は弁が立ち、創業一族に不利益になることは決して口にしない作法も身につけ、安心して矢面に立たせられる大番頭ということなのでしょう。もっとも、自身の性加害疑惑について厳しく追及されると想定していたのか。不同意わいせつ罪の公訴時効は12年。そのあたりまでは計算済みだったのかもしれませんが」
少なく見積もっても数百人とされる性加害が明らかになったのに、ジュリー氏は社長を辞めただけで大株主として君臨。後任の新社長は子飼いで、ハラスメントを暴露された人間を就ける無神経。同族経営の弊害がむしろクッキリである。ジュリー氏は「幼なじみ」に禅譲した理由について「最年長でうちに一番長くいてくれた」「タレントの気持ちが分かる人の方が溝をつくらないと思った」と言っていたが、東山氏の資質を問うあけすけな質問が複数の記者から何度もぶつけられた。
記者 元Jr.が出された書籍の中で、東山社長の性加害について言及している部分がある。
東山 僕が性加害をしたということですか? Jr.に対してですよね? 僕はしたことはないです。
会見で追及された新社長の性加害疑惑
指摘された書籍は、性加害の被害者でもある元Jr.の山崎正人氏が、木山将吾のペンネームで2005年に上梓した著書「Smapへ-そして、すべてのジャニーズタレントへ」。それによると、東山氏は10代にして2代目社長のような雰囲気を漂わせ、ジャニー氏の番頭気取り。親分を彷彿とさせる癖を見せていたという。
〈彼はマージャンだけではなく、人のパンツを脱がすことが大好きだった。僕も何度もヒガシに背後からパンツを引きずり下ろされ、イタズラされたことがある。そして、パンツを脱いだままよろける姿でいる僕に、ヒガシは『こっちへ来い!』と命令しながら、無理やりに僕の手を引いて、マージャン卓のある部屋まで引き摺っていくのだ〉
〈その部屋ではジャニーさんが待っていて、オロオロする僕を見て大喜びする。『キャッキャ』とまるで少女のように笑い転げている。そのうえ、何度か手を出してきて、僕のペニスを握るのだ〉
〈ヒガシはそれを最高に楽しそうにながめて、腹を抱えて笑うのだ。これが日常茶飯事のお遊びなのだ。品行方正だとジャニーとヒガシが主張する少年合宿所の内実だった。ヒガシはジャニーズ気質を最もよく受け継いでいた〉
「電気アンマ」でJr.の股間を刺激し、勃起させて喜んだり、自分の性器を露出。数人のJr.が食卓を囲んでいると、皿に自分のむき出しの性器をのせて「僕のソーセージを食え!」と命令したこともあったという。
関連質問は止まらない。
記者「Smapへ」で書かれていることは事実ですか?
東山 僕はその本を読んでいないので、きちっと分かりませんが、事実ではないと思っております。書籍になった場合、やはりある程度のことを書かなければいけないのかなとも思いますので、どうしてもやっぱり噂だったりそういうもので、見られることも多々ありますので、それに関して分かりかねます。
記者 なぜ読んでいないのに虚偽だと分かるのか。
東山 ネットで見ました。
記者 Jr.に自分のパンツを脱いではけばと言ったり、電気アンマをしたり、陰部をさらして「僕のソーセージを食え」と。やられた人たちは覚えている。(中略)ある種の加害を連鎖的にやってしまったんじゃないか。
東山 本当に覚えていないことの方が多くて。若気の至りとか、当時の幼稚さもあったとは思うんですね。
日テレとテレ朝「出演に変更なし」
地位を利用して犯罪行為を繰り返した故人の所業に目をつぶり、臭いものにフタをする腐った組織から脱却するはずが、新体制を託されたのは疑惑まみれの東山氏。創業者を冠した社名も変更しない。一般社会のコンプライアンスとは明らかにかけ離れている。解散が当たり前のジャニーズ事務所が世紀の茶番会見で乗り切れると踏んだのは、視聴率ありきのテレビ局とのズブズブの癒着が今後も続くからではないのか。
特別チームの調査報告書はこうも提言している。
〈メディアは取引関係の中でその影響力を行使することにより人権侵害を即時にやめさせるべきであったし、また、そうすることができたはずであった。そして、このような極めて悪質な人権侵害が行われた高度の蓋然性を認識しながら、その事実を頑なに否定して何ら適切な対応をしてこなかったジャニーズ事務所は、メディアその他の取引先等が適切な人権デュー・ディリジェンスを実施するならば、人権尊重・保護の見地から問題のある企業であるとして取引を断絶され、企業として存亡の危機に立たされることがあってもおかしくない立場にあったものと考えられる〉
主要な取引先であるテレビ局が毅然とした対応を取り、出禁にするくらいの覚悟を見せれば、ジャニーズ事務所はたちまちヘタる。ところが、日本テレビとテレビ朝日はすぐさま、ジャニタレの番組出演に変更の予定はないと表明した。
ジャーナリストの青木理氏はこう言う。
「テレビ局の番組編成はエンタメが主ではあるものの、報道においては最低限の矜持があった。そうした空気が後退したのは、ジャニーズをはじめとするタレントが報道番組のキャスターを務め始めたあたりからでしょう。視聴率を左右するキャスティングに重きを置く姿勢があからさまになり、教条的なジャーナリズムを期待しようがないほど絶望的になった。一連のジャニーズ問題は、深まるメディア不信の象徴でもある」
テレビ各社が厳しい質問が飛び交う会見をネットで生中継しても、これまで通り付き合うのなら加害者も同然だ。共犯といっていい。
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