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※紙面抜粋
※2023年9月4日 日刊ゲンダイ2面
※文字起こし
真摯な対応をしていればー。失ったのは中国の輸入だけではない(岸田首相)/(C)日刊ゲンダイ
東京電力福島第1原発の処理水放出で、中国が日本産海産物の全面禁輸を決めたことに対し、日本側も反発を強めている。
自民党の麻生副総裁は3日、仙台市で講演し、中国の対応を「明らかに政治の話で、科学的な話でも何でもないことははっきりしている」と批判。そのうえで「漁業関係者だけでなく、経営者とか政治家、役人も含めてどう対抗するか考えてやっていく必要がある」と強調した。
ALPS(多核種除去設備)を通しても、汚染水に含まれるトリチウムは除去できないが、基準値以下になるように大量の海水で薄めて流すから安全というのが日本政府と東電の立場だ。
いわく、各国の原子力施設も冷却過程で発生する「トリチウム水」を海に流しているから問題ない。東電の放出計画では海に流すトリチウム総量は最大でも年間22兆ベクレルで、他国の原発に比べても圧倒的に少ない。中国の秦山第3原発は143兆ベクレル(2020年)も流しているのだから、日本に文句を言える筋合いではないという理屈である。
これに対し、中国側はトリチウム以外の放射性核種が本当に処理されているのかと疑義を呈している。通常運転の原発から出るトリチウム水と、ドロドロに溶けたデブリに直接触れた汚染水をALPS処理したものが同じだとは科学的に言えないからだ。
実際、ALPS処理水には少なくともセシウム137、ストロンチウム90、ルテニウム106など複数の核種が含まれていることが、東電の発表資料でも明らかになっている。これらの核種を今後、数十年にわたって海に流しても環境への影響はないと言い切れる根拠があるなら、漁業関係者だけでなく、全国民が知りたいはずだ。中国の対応を批判するのは、その後の話だろう。
「政府や東電はトリチウム濃度だけを取り上げて、禁輸に踏み切った中国を非難し、悪者にしていますが、他の核種を無視する日本側の姿勢こそ非科学的ではないでしょうか。本当に問題がないのならば、すべて公表して、諸外国の理解を得られるように説明を尽くせばいい。そういう努力もせず、海洋放出を強行しておいて、クレームに対して屁理屈で返すのは本末転倒です。政府や大マスコミは、中国の反発ばかりを取り上げますが、懸念を表明しているのは中国だけではない。太平洋の島しょ国でも不安の声が上がっています。処理水を薄めて数十年にわたって流せば、生態系に何らかの影響が出てくる可能性は排除できませんが、そうなった時に誰が責任を取れるのでしょうか」(政治評論家・本澤二郎氏)
事実を公表しない日本の対応も「政治的」
中国外交部の華春瑩報道官はX(旧ツイッター)に、「この水が無害ではないと判明した場合、近隣諸国や他の多くの国が海洋放出しないよう勧告する中で、日本は海洋放出を続けられるのか。これが誠実で責任ある国の振る舞いなのか」と英語で書き込んでいた。
この問いに、海洋放出を決めた日本政府はどう答えるのか。処理水は安全だという政府発表を大マスコミが広報し、多くの国民もそれを素直に信じ、「汚染水」などと言おうものなら袋叩きにあう閉鎖性。それで国内世論は統制できるかもしれないが、海洋放出された処理水は公海に広がって行き、その流れを止めることはできない。
中国が「核汚染水」と呼んで危険性を煽るのは政治的な思惑による過剰反応だとしても、それを敵視し叩くだけの日本の手法も同様に「政治的」だ。それで国際社会の信頼を得られるのだろうか。
8月26日のTBS系「報道特集」でも、元原子力委員会委員長代理の鈴木達治郎・長崎大学教授が海洋放出された処理水についてこう語っていた。
「他の国が『危険だ危険だ』という説明には賛成しないが、中にはまだ放射性物質が入っていますので、純粋のトリチウム水とは違うものとして扱わなきゃいけないと思う。他の国の原発や施設からトリチウム水が大量に流れているから大丈夫だという説明は、私は間違っていると思う」
「前代未聞の作業なので、ALPSが本当に30年間、順調に動くのか、トラブることはないのか、トラブった時に情報公開されるのか。安心感や信頼感がまだ得られていない」──。
原子力のプロもこう言っているのに、あたかも他国の原発が海洋放出しているトリチウム水と同じものであるかのように喧伝する政府も、政府発表を垂れ流す大マスコミも、あまりに無責任ではないか。国内外からの疑問に真摯に答えてこそ国家の信用が高まるだろうに、反対意見を敵視し封殺するのでは、自己満足の排外主義でしかない。
海洋放出以外の選択肢を真剣に検討してこなかったことも、不信感を招く要因になっている。スリーマイル島原発事故で選択された大気放出や、モルタル固形化で地下埋設するなどの案もあった中、最も安易な方法が海洋放出だった。しかし、メルトダウンしたデブリに直接触れた水を公海に垂れ流した国などどこにもない。
中国との対立を煽って喜ぶ連中もいる
「最初から海洋放出ありきで進められていた。それで誰にとってメリットがあるかといえば、東電です。経費があまりかからず、お手軽だという理由でしょう。しかし、安保政策で仮想敵国に名指しするなど中国との関係を悪化させてきた延長線上で処理水を海洋放出すれば、全面禁輸のような厳しい措置が取られることは想定できたはずです。政府はこれまで風評対策などとして800億円の基金を設けていたが、とても足りない。漁業関係者への補償などを考えたら、今後いくら経費がかかるか分かりません。海洋放出には経済合理性もないし、国際社会での日本の評判まで貶めてしまえば、トータルでどれだけのマイナスか分かりません」(法大名誉教授・五十嵐仁氏=政治学)
中国の反発は分かり切っていた。それも、米中対立の代理戦争として日中対立を煽りたい連中には好都合だったのかもしれないが、ここでまた新たな火種を生んでどうするのか。台湾有事を煽って、中国とドンパチやるつもりなのか?
政府は4日、水産業者向けの緊急支援策について関係閣僚会議を開き、新たな支援策として200億円程度を充てる案を発表。特に影響が大きいホタテなどについて、中国での加工を経ずに、日本国内で加工して直接輸出する方策を考えるという。これが麻生らの言う「対抗」なのだろうか。インバウンド需要などでは中国に頼ってきたのに、水産業では中国を排除する方向に舵を切る。もちろん、買う買わないは消費者の自由だから、中国が買わないというなら仕方ないだろう。それを糾弾するのはおかしな話だ。
「処理水放出で日本が失うのは、中国への海産物輸出だけではありません。もっと環境に真摯に対応していれば、日本ブランドの付加価値も上がり、国際的に信頼を得られるチャンスだったのに、すべてフイにしてしまった。“今だけ、カネだけ、自分だけ”の岸田政権が、原発回帰のために安易な汚染処理水の海洋放出を決めて、国際社会での日本の立場を台無しにしたのです。太平洋を汚染した日本は環境問題についての発言権もなくなるし、唯一の被爆国として核汚染被害を訴えることも難しくなる。東日本大震災の原発事故の惨状を見たドイツが脱原発を成し遂げたのに、日本は今も原子力ムラの思惑に乗っかって、再生可能エネルギーにもシフトできずにいる。原発はひとたび事故が起きたら取り返しがつかない。それは、今回のALPS処理水海洋放出を見てもハッキリしています。大震災を契機に再生可能エネルギーの分野で世界を牽引することもできたのに、もったいない話です」(本澤二郎氏=前出)
日本と面積や経済力がほぼ同じドイツは、今年4月に「脱原発」を完了させた。風力や太陽光といった再生可能エネルギーの利用を拡大させるという。ドイツ政府は原発について、「維持管理から廃炉までの莫大なコストで将来の世代に負担を強いるべきでない」としている。
福島原発の処理水海洋放出は、少なくとも30年は続く。何代後の首相が責任を持つというのか。その間に日本が失うものは、はかりしれないのではないか。
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