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保険証廃止でコスト削減の“大甘試算”また発覚! 厚労省は利用登録者「減少」を想定せず
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/life/328261
2023/08/30 日刊ゲンダイ
集中企画・マイナ狂騒(44)
都合の悪いは数字は出さない(加藤勝信厚労相=右)/(C)日刊ゲンダイ
マイナ保険証の存在理由が揺らいでいる。相次ぐトラブルで信用ガタ落ちな上、マイナカードとは別に「資格情報のお知らせ」の携行も必要になり、使い勝手の悪さを露呈。残る「コスト削減」効果も厚労省の“楽観シナリオ”が崩れれば、成り立たなくなる。
岸田首相は今月4日の会見で「今まではすべての加入者に保険証を発行してきたが、今後はマイナ保険証を持たない人に資格確認書を発行するので従来の健康保険証に比べ、発行コストや保険者の事務負担は減少する」とメリットを強調した。
◇ ◇ ◇
厚労省は健康保険証廃止に伴うコスト削減について「ごく粗い試算」を実施。@マイナ保険証の利用登録率が65〜70%と現状より進めば、100億〜108億円削減A現状の52%のままなら76億〜82億円の削減──としている。マイナ保険証が普及すればするほど、削減額が大きくなるということだ。
ここで疑問が湧く。利用登録解除により、利用登録者が減る“悲観シナリオ”は存在しないのか。
厚労省は8日にマイナンバー情報総点検本部で〈一度登録した後も、マイナ保険証の利用登録の解除を可能とし、資格確認書を交付〉との方針を示した。厚労省は日刊ゲンダイに「もともとマイナ保険証の利用登録は任意である以上、登録を外したい方は解除できるようにすべきと考えました」(医療介護連携政策課・保険データ企画室)と説明している(14日付)。
「利用登録を解除しても、当面は資格確認書が送られてくるため、申請する手間もかからないし、解除後に再登録もできる。マイナ保険証の安全性や利便性など、利用登録するメリットが見えてくるまで、多くの人がいったん、登録を解除して様子をみようと考えてもおかしくありません」(埼玉県保険医協会の担当者)
いかにも日本的な組織の欠陥
健康保険証廃止に反対!(C)共同通信社
厚労省によると、解除にはシステム改修が必要だ。健康保険証は来年12月8日までに廃止される予定だが、「資格確認書の送付の準備もあるため、遅くとも来秋には解除できるようにする必要がある」(医療関係者)という。
デジタル庁の公表データによると、今月20日時点でマイナ保険証の利用登録は6600万人に上るが、解除が可能になれば、3000万人、2000万人へと激減する可能性がある。その場合、コスト削減額も大幅に少なくなるはずだ。
厚労省は登録者の減少シナリオを想定せず、岸田氏の「コストや事務負担は減少する」という会見の言葉に沿ってのみ試算したのだろう。まるで森友問題で官僚が安倍元首相の国会答弁に合わせ公文書を改ざんした姿を彷彿とさせる。無謀な開戦から変わらない日本的組織の欠陥だ。
厚労省に利用登録率が下がるケースで試算がされていない理由を聞いたが「対応できる担当者が不在で答えられない」(国民健康保険課)とのことだった。
「厚労省は利用登録が減少するシナリオについてもすみやかに試算を示し、フェアな議論をすべきです」(埼玉県保険医協会の担当者)
都合の悪い数字は出さない──。そんな態度を続ければ、マイナ不信が募るだけ。利用登録率はみるみる急降下だ。
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