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中国懸念の論拠報じぬNHK
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2023年8月28日 植草一秀の『知られざる真実』
処理後汚染水の海洋投棄に反対する識者は多い。
市民の多くも反対している。
反対しているのは中国だけでない。
しかし、主要メディアが言論を完全に統制している。
どの部分が言論統制であるのかと言えば、処理後汚染水海洋投棄に反対する人々の論拠をまったく伝えないこと。
海洋投棄を是認する側の論拠は明確だ。
ストロンチウム汚染水は海外でも海洋投棄されており、日本での海洋投棄は基準値以下に抑制したものであるということ。
IAEAは海洋投棄するとされる処理後汚染水のトリチウム濃度が「国際的な安全基準に合致している」とした。
このことをもって処理後汚染水海洋投棄を正当化している。
海洋投棄に反対する者はこの事実を全面的に否定しているわけではない。
この説明を鵜呑みにはできない懸念があること、またフクシマの汚染水が特殊なものであることを挙げている。
新華社は8月27日に「福島汚染水の海洋放出はいかにして決まったのか」と題する記事を掲載。
このなかで、懸念される事項を列挙している。
いくつかを紹介する。
1.原発敷地内の貯水タンクには放射能汚染水が約134万立方メートル保管されており、うち133万立方メートル余りが処理済みとされているが、東電が定義する「処理水」の基準を満たすのは3割程度にとどまり、基準に満たないいわゆる「処理過程水」がおよそ7割を占めている。
2.東電が提出した放射能汚染水の処理やその他関連データに対し、専門家や環境保護団体は科学的な見地から、幾重もの疑念を抱いている。
同記事は次の専門家見解を紹介している。
「米ミドルベリー国際大学院のフェレン・ダルノキ・ベレス教授は、日本が提出するデータは「不完全、不正確、不一致で一面的」だと指摘。
日本の環境保護団体「FoE Japan」は東電の「処理水」という呼び方について
1)ALPS「処理」水の一部でヨウ素129やストロンチウム90などの放射性核種が依然として基準値を超えている
2)東電がこれまでに検査した水サンプルは貯蔵汚染水のわずか3%に過ぎず、検査結果は代表性に乏しい
3)福島の「処理水」は溶融炉心と直接接触しており、通常運転の原発からの排水と同列に論じることはできない
などの問題を指摘している。」
3.東電にはデータの改ざん、原発安全問題の隠ぺいといった「黒歴史」がある。
これらの論拠があり、処理後汚染水の海洋投棄に反対する見解が提示されている。
しかし、日本のメディアは反論の根拠を一切示さない。
「科学的根拠に基づく評価をしろ」
と日本政府が主張していることだけを報じる。
この報道は問題を解決するためのものでなく、中国を悪に仕立て上げるためのもの、問題をよりこじれさせるためのものと言える。
実際、そのために、こうした偏向報道が強められているのだと思われる。
「統制された情報」しか入手できない市民は、中国が理不尽なことを主張しているとしか捉えられなくなる。
主要メディアはこの状況下で世論調査を実施して、「海洋放出を評価」の世論が優勢であると伝える。
同時に、「中国が理不尽な主張を展開している」との印象が刷り込まれる。
韓国の徴用工に対する補償問題とまったく同じ日本の情報操作手法が展開されている。
徴用工問題に関する賠償責任に関して日本政府は1965年の日韓請求権協定で解決済みとして「韓国政府は国際法に則った主張を展開するべきだ」と主張。
日本のメディアは日本政府の主張しか報道しない。
すると、これ以外の情報を持たない市民は「韓国政府は国際法に反する主張を展開している」と思い込んでしまう。
しかし、韓国側には韓国側の主張が存在する。
国際法の発展により、政府による協定が存在しても個人としての請求権は残るとの考え方が有力になっている。
この点を踏まえると韓国政府(前政権)の主張は国際法違反でなくなる。
「意見が対立している問題については、できるだけ多くの角度から論点を明らかにすること」(放送法第4条)
がなければ、市民はものごとを適正に判断できない。
逆に言えば、市民に適正に判断させないために情報操作が行われているのだ。
日中対立は意図的に創作されている。
その延長線上に極東での戦乱創出という大きな目的が浮かび上がる。
情報操作に操られ、無意味な戦争を創作されることほど馬鹿げたことはない。
私たちは戦争を創作する者の歪んだ謀略を見抜いて平和な世界を構築しなければならない。
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