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※紙面抜粋
※2023年8月24日 日刊ゲンダイ2面
※文字起こし
岸田首相の「責任を持つ」発言の軽さ…(C)共同通信社
東電福島第1原発で増え続ける汚染水の海洋放出が24日、強行された。あの苛烈事故から12年あまり、被災地の復興はいまだ道半ば。2015年に安倍政権と東電は「関係者の理解なしにはいかなる処分も行わない」と福島県漁連に文書で約束したにもかかわらず、岸田政権はそれを反故にし、地元の理解を得ないまま、出口の見えない汚染水の垂れ流しに突き進んでいる。
ゴリ押しした岸田首相は「廃炉プロセスの前提となるステップが今回の処理水の海洋放出」「廃炉を進め、福島の復興を支援するためには処理水の処分は先送りできない課題」などと正当化したが、全くのデタラメ。廃炉の見通しは全く立っていないからだ。
「原発敷地内が貯蔵タンクで満杯になる」と海洋放出をせかしてきた東電の計画はこうだ。
23年度は汚染水処理後に移し替えるタンク約30基分にあたる計約3万1200トン分を大量の海水で希釈し、4回に分けて放出。1回目はトリチウム以外の放射性物質の濃度が基準を下回ることを確認した約7800トンを約17日間かけ、海底トンネルを通じて沖合1キロに流す。空になったタンクを撤去し、その跡地を溶け落ちた核燃料(燃料デブリ)の保管場所などに使うことで、廃炉作業を進めるとしている。政府と東電は51年までの廃炉完了を目標に掲げるが、作業が進む保証はない。
今年度の純減はタンク10基分
敷地内に保管されているタンクは約1000基で、総量およそ134万トン。汚染水は22年度時点でも1日あたり約90トン増えている。東電の試算では汚染水が1日100トン増えると、今年度中の純減は約1万2200トン。タンク10基分が減るに過ぎない。
その上、汚染水の発生源である燃料デブリの取り出し方法は未定で、時期も見通せない。1〜3号機には合計880トンあると推定されていて、当初は21年中に試験的な取り出しを始める予定だったが、装置開発の遅れなどで2度延期。今年度後半の開始を目指してはいるものの、取り出す量はわずか数グラム。下手をすれば天文学的な時間を要する可能性がある。
51年廃炉を目指す東電の計画は、大甘を通り越した机上の空論。汚染水放出は永遠に続くといっても過言ではないだろう。福島県内にある除染土にしても、東電は45年までに県外で最終処分するというが、これも道筋をつけられていない。
法大名誉教授の五十嵐仁氏(政治学)はこう言う。
「放出強行をめぐる問題は、政府が平然と約束を破っただけにとどまりません。IAEA(国際原子力機関)が『国際的な安全基準に合致する』との報告書を公表したのを錦の御旗に、科学的な安全基準をクリアしていると強調していますが、そもそも東電は信用に値する企業なのか。柏崎刈羽原発のテロ対策をめぐっては、原子力規制委員会から原発を運転する適格性を疑われている。侵入検知器は多数故障し、社員がIDカードを使い回すメチャクチャをやっていた。東電は当事者意識を決定的に欠いています」
デタラメ尽くしの東電は値上げで大幅黒字
東電は一事が万事で、インチキ集団のそしりを免れない。大量発生する汚染水にしたって、すぐに解決できると甘く見て耐久性の低い急ごしらえのタンクで事に当たり、水漏れ事故を続発させた。世論の批判に慌てた安倍政権が13年に廃炉・汚染水対策関係閣僚等会議を設置すると、その後の対応は政府任せ。後継の菅政権が21年に海洋放出の方針を決めてからは、小早川智明社長は漁業者らに会うこともなくなった。
岸田政権が放出を決定した関係閣僚会議に出席後、ぶら下がり取材に応じた小早川は「風評を起こさないという強い覚悟、責任を果たしていくことが重要だ。私の責任の下、取り組みを実現していきたい」と言っていたが、その後、東電が開いた会見に姿なし。「漁業者の理解は得られたのか」と問われた汚染水対策責任者の口から出たのは、「〈関係者の一定の理解を得た〉という政府の認識の下、放出時期が示された」という逃げ口上だった。
「政府も東電も風評を払拭すると強調しますが、それは実害がないのが前提。汚染水をALPS(多核種除去設備)で処理することでほとんどの放射性物質を基準値未満にし、除去できないトリチウムは薄めて放出するから影響はないといっても、長い間に蓄積し、悪影響を及ぼす恐れはゼロではない。シャニムに突っ走るのは、地元などの理解を得る自信がない裏返し。そうした姿勢がむしろ風評被害をエスカレートさせているのがなぜわからないのか」(五十嵐仁氏=前出)
福島の日常を奪った連中がボロ儲けしていることも忘れちゃいけない。東電ホールディングスの23年4〜6月期の連結決算は、最終損益が1362億円の黒字。発電燃料の高騰が一服したのに加え、6月に家庭向けの電気代を値上げしたことも利益を押し上げたのだ。
大反発する中国はボルテージを上げ、外務省の汪文斌副報道局長は23日の会見で「2023年8月24日が海洋環境の災難日とならないよう望む」と警告。毛寧報道官は「放射能汚染水が安全なら海洋放出の必要はなく、安全でないなら、なおさら海洋放出すべきではない」と牽制していたが、岸田政権は真正面から反論できるのか。経産省の専門家部会は、海洋放出▽水蒸気放出▽地層注入▽水素放出▽地下埋設──の5案を検討し、最短期間かつ低コストだという理由で海洋放出に決まった経緯がある。
国民の生活より政府の無謬性
岸田は「たとえ今後数十年の長期にわたろうとも、処理水の処分が完了するまで、政府として責任をもって取り組む」と力むが、その日まで権力の座にあるわけがないし、この世にいるかも分からない。日本の男性の平均寿命は男性が81.05歳(2022年)。白寿を迎えた首相経験者は、大往生した中曽根大勲位くらいだ。
だいたい、安倍政権の約束を反故にした張本人がしらじらしい。廃炉ができなければ、汚染水は永久に発生し続けるのに、東電社長、岸田の「責任を持つ」発言の軽さは笑止の至り。「後は野となれ山となれ」の無責任全開である。立正大名誉教授の金子勝氏(憲法)はこう言った。
「中間貯蔵施設の建設をめぐり、当時の石原伸晃環境相が〈最後は金目でしょ〉と口を滑らせたことがありましたが、自民党政権に通底しているのは札びらで頬を叩く無責任体質。国民の生活よりも政府のメンツ。政府の無謬性神話のために、国民を犠牲にする。放出強行はひとつの象徴といっていいでしょう。
大手マスコミによる刷り込みで岸田首相はハト派のイメージが消えませんが、首相に対する見方を変えなければとんでもないことになる。岸田政権は国民に信を問うことも、国会で審議することもなく、重要政策を政府だけで決めてしまう。国民主権に立脚した民主主義をないがしろにし、封建時代さながらの専制政治に走っている。政治信条があやふやな一方、長期政権への志向は高く、米国のお墨付きや右派の支持を得られる政治しかできないと認識しなければダメです」
内閣支持率はマイナンバーカード問題や物価高騰などでつるべ落とし。個別面接方式のため信頼性が高い時事通信の8月の世論調査では、前月比4.2ポイント減の26.6%に落ち込み、政権維持の「危険水域」とされる2割台に再び沈み込んだ。福島愚弄の岸田暴政は次の調査にどう出るか。
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