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※紙面抜粋
※2023年8月9日 日刊ゲンダイ2面
※文字起こし
秋本真利議員(左)は姿をくらまし木原誠二官房副長官は沈黙、「のど元過ぎれば」でとことん国民を愚弄している(C)日刊ゲンダイ
とことん、有権者を舐めているとしか思えない。
洋上風力発電事業を巡り、自民党を離党した秋本真利衆院議員が、風力発電会社「日本風力開発」(東京)の塚脇正幸社長から約3000万円の不可解な資金提供を受けていたとされる疑惑のことだ。同事業を巡っては、20年11月開始の公募で、秋田県沖など4区域について入札が行われ、経産省などは21年12月、三菱商事を中心とする企業連合を選定。
この時の選定に外れた日本風力開発はその後、公募基準の見直しなどを求めて秋本に陳情したとみられ、実際、22年2月の国会質問で、秋本は「次回の公募から評価の仕方を見直していただきたい」「運転開始時期のウエートを見直すべきだ」などと発言していた。
政府は翌3月に選定基準の見直しを始めると発表。東京地検特捜部の調べなどによると、10月27日に新たな運用方針が公表された翌日、塚脇社長が東京・永田町の衆院第1議員会館にある秋本事務所を訪れ、1000万円近くを現金で渡したとされる。特捜部はこのカネなどが国会要望の見返りだった疑いがあるとみて捜査しているが、秋本、塚脇社長ともに賄賂性を否定。2人は2021年10月ごろに共同出資して馬主組合を設立しており、カネのやりとりは「馬の購入費などに充てるためだった」などと説明しているわけだ。
自民党では責任は「取る」から「ある」に
だが、仮にその言い訳の通りだったとしても、国民の負託を受けた国会議員という「公僕」が、一私企業の利害関係者と共同出資して組合をつくっていた行為自体が不適切と指摘せざるを得ない。
まして、議員会館で多額の現金をやりとりしていたなんて言語道断で、「李下に冠を正さず」を通り越して、破廉恥極まりないだろう。
そして何よりも許せないのが、疑惑の渦中にある秋本が何一つ説明しないまま姿をくらましていることだ。やましいことがないのであれば、正々堂々と公の場に出てきて会見を開き、塚脇社長との関係や国会質問の趣旨、馬主組合を設置した理由、議員会館でカネを授受するに至った経緯など、コトの経緯を洗いざらい明らかにすればいいだけだ。
外務政務官を辞任し、自民党も離党したということは、秋本にも思い当たるフシがあると受け取られても仕方がないわけで、そうであれば議員辞職するのが当然。逃げ回って済む話ではないのだ。
岸田首相もまるで他人事のようだ。「国民の疑念を招くような事態になったことは大変遺憾に感じている」などと言っていたが、ちょっと待て。首相として、秋本を外務政務官という要職に起用した任命責任をどう感じているのか。総裁として離党を認める前に党に対して事実解明の徹底を指示するのが本来の姿ではないのか。それなのに何もせず、秋本のトンズラを見逃して平然としているからクラクラする。
政治アナリストの伊藤惇夫氏はこう言う。
「安倍政権では、閣僚の不祥事が起きると、首相の安倍さんは『任命責任がある』と繰り返すものの、何もしないままでした。そうした流れから、自民党では責任は『取るもの』ではなく、『あるもの』へとすり替わり、それを認めるムードができてしまった。今回の問題でも如実に表れていると思います」
国民全体の奉仕者等という認識も良識ない
ほとんど雲隠れ状態の秋本に噛みつかないメディアもメディアだ。
芸能人やスポーツ選手の不倫が報じられると、昼夜を問わず関係者を執拗に追いかけ回すクセに、疑惑や醜聞の相手が自民党議員となると途端に弱腰になるからどうしようもない。これでは自民党政治家がやりたい放題になるわけで、そんな大メディアの腰抜けぶりを見透かしているのだろう。岸田の最側近である木原官房副長官は、秋本以上に説明責任を果たしていないと指摘されている。
2006年に東京都内で男性が死亡したことに関し、妻が警視庁に事情聴取されていたと週刊文春に報じられた木原。文春は木原が捜査に不当介入していた疑惑を複数回にわたって報じ、これに対し、木原は文春を刑事告訴したことや、立憲民主党の公開質問状に対して「事件性がないと判断された事柄を語るのは、人権上重大な問題を惹起する」などと主張したものの、1カ月近くも公の場に姿を見せず、沈黙したままだ。
副長官は首相の外遊に同行し、首脳会談や国際会議の内容を報道陣に説明する役割もあるのだが、7月に岸田が欧州と中東を訪問した際は磯崎官房副長官が同行するという、徹底した“逃げ恥ぶり”。常識的に考えれば、「もはや副長官の任に値せず」と判断されてクビが当たり前なのに、9月に想定される内閣改造・自民党役員人事では、ナント! 「木原続投説」まで流れ始めているから唖然呆然ではないか。
今だけ、自分だけ、カネだけ━━の自民党
驚くのはそれだけじゃない。昨夏の安倍元首相の銃撃事件を機に自民党議員と旧統一教会(現世界平和統一家庭連合)の怪しい蜜月ぶりが発覚し、法曹界などから宗教法人の認可取り消しや解散を求める声まで出るほど統一教会が社会問題化したにもかかわらず、いつの間にか教会ベッタリの“汚染議員”が何食わぬ顔で復活。次期衆院選の自民党公認候補や支部長に名を連ねているから世も末だ。
一事が万事、この調子。これまでも自民党議員が関わったとされる疑惑、醜聞が度々発覚したが、いつもウヤムヤ。渦中の議員はさっさと離党し、病気などを理由に公の場から姿を消し、説明責任を果たさない。そうして、国民やメディアの関心が薄れ、ほとぼりが冷めた頃にちゃっかり現場復帰する……という、「のど元過ぎれば」ナントカのパターンが繰り返されてきたのだが、これを国民愚弄と言わずに何と言うのか。
もはや、今の自民党議員には国民全体の奉仕者という認識も良識もない。選挙に勝ったから、多数議席を押さえているから──と、どんどん強欲、傲慢さがエスカレート。自民党女性局のフランス視察旅行に対して「観光目的」との批判の声が上がったが、あの非常識ぶりは女性局だけでなく、党全体を包む悪しき空気感を表していると言っていい。要するに物価高と低賃金に苦しみ、タケノコ生活を送る国民など眼中にないのだ。
福田赳夫元首相の秘書で、自民党本部情報局国際部主事を務めた中原義正氏がこう言う。
「今のように自民党議員が今だけ、自分だけ、カネだけ──のような体質になり、国民から支持されなくなったのは、かつての田中角栄のように国民生活について本気で考える政治家がいなくなったからだろう。とりわけ、岸田首相はまるでリーダーシップがない。政治がこの体たらくでは日本社会も沈没しかねない」
国民もいい加減、自民党にノーを突きつけないと、さらに好き勝手を許すことになる。
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