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※紙面抜粋
※2023年7月31日 日刊ゲンダイ2面
※文字起こし
前任者のカーボンコピー化してきた日銀の植田和男総裁(C)共同通信社
長引くインフレは収まらないと覚悟した方がいい。
日銀は先週28日まで開いた金融政策決定会合で、国債を買い入れて長期金利を低く抑え込むYCC(イールドカーブ・コントロール)の修正を決定。長期金利の上限を「0.5%程度」から1.0%へと事実上、引き上げた。
会合後に会見した植田総裁は「金融政策の正常化へ歩み出すという動きではない」とし、「YCCのもとで粘り強く金融緩和を継続する必要があり、運用を柔軟化し、上下双方向のリスクに機動的に対応することで、この枠組みによる金融緩和の持続性を高めることが適当だと判断した」などと説明。つまり、円安物価高を引き起こすアベノミクスの大規模緩和路線を維持する姿勢に変わりはないということ。にもかかわらず、YCCを微修正したのは、インフレ圧力に弱まる兆しが見えないからだ。
6月の消費者物価指数(CPI)は、変動の大きい生鮮食品を除くコアCPIが前年同月比で3.3%上昇。3%超えは10カ月連続で、日銀が物価安定目標に据える2%を長いこと上回っている。伸び率は2カ月ぶりに拡大し、高インフレに苦しむ米国の上を行く。 物価の先行きを甘く見積もる日銀は案の定、3カ月に1度見直す経済・物価情勢の展望(展望リポート)の修正に追い込まれた。足元の物価高を反映し、2023年度のコアCPIの上昇率の見通しを4月時点の1.8%から2.5%へ引き上げ。インフレや日米の金利差拡大などに伴う金利上昇圧力にあらがうには、日銀が際限なく国債を買い入れなければならない。今年1月には月間の買い入れ額としては過去最大の23兆円を費やした。日銀の国債保有割合は史上最大で、3月末時点で53.34%に達した。黒田前総裁就任前の12年12月末時点が11.48%だったから、10年あまりで4倍超に膨張したことになる。
3年間で10%のインフレ直撃
日銀のバランスシートは肥大化する一方だが、金融正常化へカジを切れば、財政ファイナンスに味を占める岸田自民党から突き上げを食らう。それで、植田日銀はYCC撤廃に踏み込むでもなく、中ぶらりんな運用柔軟化でお茶を濁したわけだ。植田は「長期金利が1%まで上昇することは想定していない。念のための上限、キャップだ」と歯切れが悪かった。市場の投げ売りも招きかねないことから、会見は中途半端。それがまた金融市場の荒れた動きにつながり、28日の外国為替市場では日米の金利差が縮小するとの思惑から円買い・ドル売りが加速し、円相場は短時間で約3円乱高下。一時1ドル=138円台前半まで上昇し、日経平均株価は前日終値比で一時800円超下落。長期金利の指標となる新発10年債利回りも一時0.575%まで上昇した。これは14年9月以来、約9年ぶりの高水準だ。
経済評論家の斎藤満氏はこう言う。
「植田総裁はYCCの弾力化について、大規模緩和を継続するためだと言い切った。『物価の番人』たる日銀が国民生活をむしばむインフレはお構いなし、放置すると宣言したに等しい。昨年度のコアCPIの上昇率は3.0%。今年度も3%超えは必至です。展望リポートは24年度について4月時点の2.0%から1.9%に引き下げましたが、過去の例に照らせば日銀の物価見通しは当たらない。3年間で10%近いインフレに直面する可能性大です。5月の実質賃金は前年同月比1.2%減で、14カ月連続のマイナス。長期化するインフレが懐を直撃しています。物価上昇のダメージはそれにとどまらない。名目賃金は17カ月連続のプラスですから、所得税や社会保障費の負担は増える。かたや政府の税収は膨らむので、インフレ増税になる。日本の金融資産は2000兆円とされますが、3%のインフレで60兆円も目減りするのも大問題です」
大マスコミに蔓延するマーケット論理
デタラメな金融政策を10年以上も続ける日銀を前に、引き合いに出すのは微妙ではあるが、欧米の中央銀行は大胆で強気だ。インフレ退治に躍起の米国はFRB(米連邦準備制度理事会)が22年3月以降、10回連続で利上げ。先月は据え置いたが、今月は0.25%引き上げ、政策金利は5.25〜5.50%と22年ぶりの高水準となった。ECB(欧州中央銀行)も22年7月以来、9回連続で利上げ。今月も0.25%引き上げ、主要政策金利は4.25%になった。恐る恐るの植田日銀を批判できない大マスコミも責任重大だ。
「大手メディアには誰のための金融政策なのか、という視点が抜け落ちています。株式市場にとって、金融市場にとって、究極的には国際金融資本にとって好ましい形が日本にとっていいことだ、というマーケットの論理が蔓延している印象です。大規模緩和の継続により、企業の資金調達で苦労せず、輸出すれば円安で濡れ手で粟。株高にもつながる。大手メディアは政府や大企業が個人に負担を押し付けている現実を真正面から報じない。このままインフレが続けば景気は悪化し、企業業績も悪化するのは自明の理。元のもくあみです」(斎藤満氏=前出)
東京新聞(30日付朝刊)の調査が官邸と大マスコミの距離感を浮き彫りにしている。官邸で行われる首相会見について、岸田政権発足以降、官邸側に指名されて質問した回数を集計したところ、内閣記者会の常勤19社の間で3倍以上の格差があったという。
21回の会見のうち、指名最多だったのは産経新聞で13回。言わずと知れた自民党政権寄りの媒体だ。NHKが12回。日経新聞、読売新聞、毎日新聞、朝日新聞、フジテレビが9回で続いた。最少だったのは東京新聞・中日新聞とTBSの4回。政権にとって都合の悪い質問をするメディアを遠ざけているのが透けて見える。大マスコミが日銀のガンジガラメに“理解”を示すわけだ。
新たな使命は防衛財源下支え
立正大名誉教授の金子勝氏(憲法)はこう言った。
「岸田首相の『聞く耳』は誰に向けられているのか。米国と財界です。マイナンバーカード問題で内閣支持率が急落し、慌てて地方視察に出向いていますが、一国の指導者が当事者の元に足を運ばなければ事の重大性を理解できないのかという話で、パフォーマンスに過ぎません。岸田首相は米国のバイデン政権からお墨付きを得るため、防衛費倍増を打ち出した。その財源を確保するため、歴代政権が踏襲した公債を軍事目的に活用しないという方針を転換し、建設国債を充てようとしている。国債買い入れの新たな使命を担わなければならなくなった日銀は、購入枠に余裕を持たせるため、YCC微修正に動いたのでしょう。キシダノミクスは定着しませんが、岸田政権の経済政策はアベノミクスよりも残酷です。岸田首相は支持率について『上がったり下がったりするものだ。いずれ上がる』と言ったそうですが、政治オンチもいいところ。乱暴な言い方かもしれませんが、この状況で支持率が上向いたら、国民はアホだということになる。岸田政治を総括し、暴政を止めなければ、経済的にも軍事的にも悪い方向へ向かうばかりです」
日銀法は金融政策の独立性を定めているが、第2次安倍政権が骨抜き。国の借金は膨らみに膨らみ、1270兆円を突破した。生前の安倍元首相は「日銀は政府の子会社だ」とメチャクチャなことを言って正当化していたが、あらゆるツケは国民に回されることを忘れちゃいけない。
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