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岸田政権は短期で終わるか長期化か 首相おろしの動きが生まれない2つの要因 日本外交と政治の正体
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/326617
2023/07/27 日刊ゲンダイ ※後段文字起こし
安倍元首相より、はるかに米国意向を着実実施の岸田首相(日米首脳会談)/(C)ロイター
韓国の報道機関が取材に来た。本題を終え、お茶でもという時、「ところで、岸田政権は短期ですか、長期ですか」と問われた。
「残念ながらどうもよく分からないのです」と答えざるを得なかった。
現状を見ると、支持率は急落している。時事通信が実施した7月の世論調査によると、岸田内閣の支持率は前月比4.3ポイント減の30.8%。支持率下落は2カ月連続である。他の報道機関の内閣支持率も軒並み低下している。
2020年9月に退陣した安倍内閣のNHK世論調査(同年8月)は内閣支持率が34%。21年10月に退陣した菅内閣の同調査(同年9月)は内閣支持率30%だった。
岸田内閣の支持率低下は、マイナンバーを巡るトラブルが主たる原因である。これは国民全体に関係する問題で、混乱解消のメドはなく、支持率が上昇する契機が見えない。多分、支持率はじり貧の展開になるだろう。
ただ、それでも、岸田首相おろしの動きは見られない。考えられる要因は、第1に米国の支援、第2に自民党内の力学だ。
残念ながら日本は米国の属国的存在だ。米国の占領時代から今日まで、政界、官界、マスコミ、検察、経済界ほぼすべての組織において、米国が支持する首相は支える一方、米国が好まない首相はおろすというメカニズムが確固として存在する。
20年9月に退陣した安倍内閣は中国問題をめぐり、米国とぎくしゃくしていた。続く菅氏に関しては米国の信任を得る機会が少なかった。
他方、岸田首相は対ロシア、対中国、対韓国、安全保障政策全般(軍事費の増額)のいずれを見ても、安倍元首相よりもはるかに米国の意向を着実に実施している。そして米国も岸田首相支援を明確にしている。
つまり、今の日本国内で、岸田首相よりも米国に好まれる政治家はいない。自民党の政治力学では、最大派閥の安倍派(清和会)はバラバラだ。これは岸田首相との連携を図る森元首相の思惑通りに進んでいるのではないか。要するに“倒幕”のエネルギーが今の自民党内にないのである。
他方、野党の立憲民主党は政策面で自民党に挑戦するものがない。日本維新の会は、岸田政権がずるずると延命することで、自民党そのものの支持率低下を待っている。
結論的に言えば、多くの国民の支持を失っても、岸田政権の延命が続くのではないだろうか。予測に自信あるか、と問われれば全くないのだが。
孫崎享 外交評論家
1943年、旧満州生まれ。東大法学部在学中に外務公務員上級職甲種試験(外交官採用試験)に合格。66年外務省入省。英国や米国、ソ連、イラク勤務などを経て、国際情報局長、駐イラン大使、防衛大教授を歴任。93年、「日本外交 現場からの証言――握手と微笑とイエスでいいか」で山本七平賞を受賞。「日米同盟の正体」「戦後史の正体」「小説外務省―尖閣問題の正体」など著書多数。
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