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※紙面抜粋
※2023年7月27日 日刊ゲンダイ
※文字起こし
慌てて火消しも「大軍拡」だけは聖域(宮沢洋一税調会長は岸田首相のいとこ=右)/(C)日刊ゲンダイ
唐突な発言だった。
「サラリーマン増税は全く考えていない」
岸田首相がこう話していたと、自民党の宮沢洋一税制調査会長が25日に明かしたことだ。宮沢は首相官邸で岸田と会談。そこで岸田が「自分が全く考えていないサラリーマン増税うんぬんといった一部のマスコミ報道がある」と不満をあらわにし、宮沢が「税調で議論したことはなく、私の頭の隅にもない」と応じたというのだ。26日は松野官房長官も「サラリーマンを狙い撃ちにした増税は行わない」と否定した。
岸田や宮沢の言う「サラリーマン増税」は、6月末に出された政府税制調査会の中期答申で羅列されていたもの。今後の税制のあり方を示す中で、退職金や通勤手当、配偶者控除、扶養控除、生命保険控除に加え、社宅の貸与、食事の支給、従業員割引といった現物支給まで、課税制度の見直し対象として俎上に載せられていた。
実際に「退職金増税」は6月に閣議決定された「骨太の方針」に盛り込まれ、控除額が減らされる方向で具体的に動き出している。サラリーマンを狙い撃ちしたさらなる増税がこれに続くとみて、日刊ゲンダイほか夕刊紙や週刊誌、テレビのワイドショーがこぞって政府税調の答申を取り上げ、SNSには悲観した人たちの<日本人やめたい>といった投稿があふれたのだった。
こうした状況に岸田は慌てたのだろう。ただでさえ、内閣支持率はつるべ落としだ。先週末には毎日新聞の世論調査で28%となり、今年2月の調査以来、再び3割を割り込む“危険水域”へと大暴落である。トラブルが相次ぐマイナンバーカードの問題も抱えている。そこへ「サラリーマン増税」への批判が加われば、内閣支持率はさらに下落しかねない。そこで岸田は、ひとまずサラリーマン増税の否定に走った。そんなところだ。
だが、口先首相のことである。どんなに増税を否定したって信用ならない。
そういえば宮沢は、永田町に解散風が吹き荒れていた時にも、「(内閣)不信任案が出たら、首相の性格からすると受けて立つ可能性もかなり高い」と突然“予告”して周囲を驚かせた。
「宮沢さんは岸田首相のいとこで、政権のサポート役」(自民党関係者)だというから、「サラリーマン増税」を否定する唐突な発言も岸田の政権維持のために一役買ったということか。
「やるか、やらないか」ではなく「いつやるか」
岸田政権は「財務省政権」と言われる。くだんの宮沢も、妻の問題で注目されている側近の木原誠二官房副長官も村井英樹首相補佐官も、岸田を支える面々はみな財務省出身である。
何かチャンスがあれば財源確保のための増税を虎視眈々と狙っているのが財務省。彼らにとってはサラリーマン増税は既定路線で、「やるか、やらないか」ではなく「いつやるか」なのだ。
国債や借入金などを合わせた政府の債務、いわゆる“国の借金”は、今年3月末の時点で1270兆円に上り、過去最大を更新した。国の借金がニュースなどで報じられる際には、必ず「財政状況は一段と厳しくなっています」などと付け加えられる。岸田政権になってまもなく2年。「財源がない」という言葉が強調され続けてきた。
それなのに、岸田は防衛費を2027年度までの5年間で43兆円まで倍増させることを決め、それを増税してまで断行する。一方で本来、優先されるべき少子化対策は、「次元の異なる」とか「加速化プラン」など言葉だけが躍り、年3.5兆円の予算規模を決めておきながら、財源確保の方策については先送りした。
最新の合計特殊出生率は過去最低の1.26である。少子化対策は長く続けなければどうにもならない。「どうせ増税に頼ることになるのだろう」と身構えるのが庶民心理だ。
政府税調はれっきとした首相の諮問機関である。答申には<経済社会の構造変化の中で非課税等とされる意義が薄れてきていると見られるものがある場合には、そのあり方について検討を加えることが必要>と書かれている。サラリーマン増税に今すぐ手を付けなくとも、将来的な検討課題として“提案”しているとしか読めないのだ。岸田がいくら否定しても増税は間違いない。
税理士で立正大法制研究所特別研究員の浦野広明氏(税法)が言う。
「今の財政状態から考えたら、財務省の頭の中には『増税』しかありません。だからこそ、答申全体から何を読み取るかが重要で、手当や控除の見直しなど、挙げられているような増税が現実になったらどういう“被害”が出るのかを明らかにするのが大事なのです。批判されなければ政府はどんどん増税を進めて行きます。それに『庶民増税』で取れるところから取るというのはおかしい。自民党の支持層なので政府は手を付けませんが、稼ぎの多い大企業や富裕層に応分負担を求める『総合累進課税』にするべきで、その方が税収は増えます」
米国の言いなりで無理したツケが大きすぎる
こうした増税をめぐる岸田政権のやり口が姑息なゴマカシばかりなのを国民はもはやお見通しだ。
中でも許し難いのは、大軍拡だけは聖域化したこと。米国にシッポを振って防衛費をNATO(北大西洋条約機構)並みのGDP(国内総生産)比2%にするとしたため、43兆円という数字の達成にあらゆる財源を回すのである。
そのための法人税、たばこ税、所得税の増税のうち、所得税は東日本大震災からの復興を目的とした「復興特別所得税」の事実上の流用だ。現状の2.1%の復興税の税率を1.1%に下げ、新たに防衛財源のための付加税1%分を新設する。その代わり、時限措置の復興税の期間を13年延長する。政府は「個人の所得税負担額は変わらない」と言い訳するが、そんな詭弁にはだまされない。納税者をバカにしている。
一方で、「24年度以降」としてきた防衛増税の実施時期は、「25年度以降」に先送りする方針だ。22年度の一般会計決算が71兆円超という過去最高の税収増となったことで、決算剰余金が2.6兆円にもなり、当初の予定より防衛費に回せる財源が増えたことが背景にある。つまり、来年度は防衛増税は実施しない、ということになるが、解散総選挙の前に増税を決めることに自民党内が難色を示しているという裏もある。
国民の血税を、あっちへこっちへ自分たちの都合で動かし、つじつま合わせ。あまりにフザけている。経済評論家の斎藤満氏はこう言う。
「岸田首相は『総理』という自らの立場を守るため、最大のサポーターであるバイデン米国の支持を得ようと防衛費倍増の“条件”をのんだ。43兆円が出発点になってしまったので、防衛増税をせざるを得なくなり、それが批判されると、目くらましで少子化対策を打ち出し、今度はその財源のためにさらなる増税をせざるを得なくなっている。しかし、消費増税だと目立つので、控除のカットなどこっそり取れるところから取ろうとしているのです。米国の言いなりで無理をしたツケが大きすぎます」
決算剰余金はこれまで補正予算として災害や経済対策など緊急時に使ってきた。今なら防衛費ではなく、物価高対策に回すべきだろう。実質賃金は14カ月連続のマイナスなのである。必要なのは増税ではなく、減税だ。
「ガソリン代や電気・ガス代の補助の時限立法のような中途半端なものじゃなく、消費税を5%に戻すなりした方が物価高にはよほど効果があります」(斎藤満氏=前出)
すべてのツケを国民に負担させる。こんな悪辣政治はもうたくさんだ。
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