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※紙面抜粋
※2023年7月24日 日刊ゲンダイ2面
※文字起こし
「変わらねばならない」のは誰か(こども家庭庁の「こどもまんなかアクション」のイベントに出席した岸田首相=左2)/(C)共同通信社
九州や東北地方が記録的な大雨で被害を受ける中、涼しい顔してNATO(北大西洋条約機構)首脳会議やEU首脳協議に出席するための欧州訪問と、立て続けの中東歴訪で外遊三昧の夏を満喫した岸田首相だが、19日に帰国するや、今度は見え透いたパフォーマンスで国内問題の“やってる感”を演出し始めた。
21日には栃木県足利市で障害者の自立支援に取り組む施設を訪問。施設の利用者が働くワイナリーを視察し、従業員や家族らとの車座対談を行った。
これは、全国各地で国民と意見交換を行う「全国行脚」の第1弾だ。秋までに6〜7カ所を回る予定で、少子化対策やデジタル、認知症対策などの現場を視察し、「聞く力」をアピールする狙いだという。ちなみに、初回に選んだ足利市は自民党の茂木幹事長の選挙区でもある。
22日は“異次元の少子化対策”の一環として、子育て支援に対する国民の理解を深めるための国民運動「こどもまんなかアクション」のキックオフイベントに出席。岸田は「給付や保育制度の充実なども大事だが、政策を気兼ねなく活用してもらうために社会も変わらなければならない」とあいさつした。
「キックオフ」に引っ掛けたのか、イベントには元サッカー女子日本代表で2月に出産した丸山桂里奈らも出席したが、毎日新聞などによれば、このイベントの委託費は1350万円だという。委託先は電通プロモーションプラスだ。
こども家庭庁の今年度予算では、こうしたイベントなどの情報発信に投じる費用として2.5億円が計上されている。
子どもでなくイベントに予算
「こども家庭庁の潤沢な予算が子どものためではなく、イベントのために使われるなんて、税金の使い方が完全に間違っています。首相のパフォーマンスに予算を投入するのではなく、異次元の少子化対策と言うのなら、大学までの学費無償化など実効性のある施策を真剣に考えて欲しい。それに加えて、茂木幹事長のお膝元での車座対談よりも、いま優先すべきは豪雨の被災地対応だったのではないのでしょうか。この週末も被災各地でボランティアが活動していましたが、今後は災害級の猛暑が続くと気象庁が注意を呼びかけています。炎天下のボランティア活動に任せているだけで、政治は何をやっているのか。岸田首相は、豪雨被害を放置して外遊に出かけただけでなく、官房長官や防災相に現地入りして被害状況を把握するよう指示したと言うだけで、帰国後も担当大臣に丸投げなのです。危機感がまったく感じられません」(政治ジャーナリスト・山田厚俊氏)
この週末の首相動静を見ると、岸田が国民のことなんて、これっぽっちも考えていないことがよく分かる。
22日は令和国民会議(令和臨調)の1周年大会に出席した後、こども家庭庁主催の「こどもまんなかアクション」開始記念行事に出席し、あいさつ。午後4時過ぎには恒例の「ヘアモードキクチ神田日銀通り店」で散髪し、午後6時56分から赤坂の高級しゃぶしゃぶ店「ざくろ」で裕子夫人と食事。翌23日は終日「公邸で過ごす。来客なし」だった。
少子化対策も国会運営も「変わらなければ」と他人事
「ただでさえ庶民は物価高で生活を切り詰めているし、豪雨の被災地では今なお避難所生活を強いられている人もいる。そういう時に首相が高級店で夫人と食事している姿を見て、国民はどう思うでしょうか。家庭を大切にする岸田首相は良き夫であり、良き父なのでしょう。それは素晴らしいことですが、首相の仕事は一般サラリーマンとは違います。ワークライフバランスはもちろん大事ですが、首相の双肩には1億3000万人の生命と財産がのしかかっているのです。良き家庭人として生きたいのであれば、首相を辞した方がいいかもしれません。自分の地位と家庭が優先で、国民生活に無頓着な人に国の舵取りをする資格はない。車座対談で国民の声を聞くといっても、お膳立てされた場で官僚ペーパーを読み上げているだけですから、国民の塗炭の苦しみを理解しようとする気持ちが本当にあるのか疑問です。“聞いてるふり”を続けるだけならば、車座対談を何度やっても支持率向上にはつながらないでしょう」(山田厚俊氏=前出)
岸田は22日、「こどもまんなかアクション」のキックオフイベントの前に出席した政策提言組織「令和国民会議」の第2回会合でスピーチし、「時代は大きく変化している。国会の運び方やありようも変わらなければならない」「批判にとどまるだけでなく、国民に対して選択肢を示すことができる議論を形で示していく努力をしていくことが大事」などと話した。この発言には非難囂々だ。国会軽視にも程がある。
首相は行政府の長であり、国民の代表である議会の審議を受け、批評を受ける立場なのだ。これまでも、安倍元首相の国葬や防衛費倍増を国会審議を経ずに勝手に決めるなど、岸田の国会軽視は甚だしいのだが、首相が立法府のあり方に言及するのは異例だ。国会は批判をせず、黙っていろとでもいうのか?
庶民の生活苦が理解できない
少子化対策についても「社会が変わらなければならない」、国会も「変わらなければならない」──。どんな課題も、岸田は常に他人事なのだ。
当事者意識の希薄な岸田の発言を受け怒り心頭に発したのだろう、小沢一郎(事務所)のツイッターが強い口調でこうつづっていた。
<完全な馬鹿。変わるべきは意味不明なこの総理であり、自民党の利権政治。この総理は確実に国を滅ぼす。事態は極めて深刻である。皆が目を覚ますべきである>
本当にその通りで、岸田の頭にあるのは来年の自民党総裁選で再選されるかどうかだけ。国民生活も、この国の行く末もどうでもいいのだ。政権維持のために米国のバイデン大統領に媚を売り、防衛費を倍増する。国民の声も「聞いてるふり」をする。それで支持率が上向くと思っているのだとしたら、おめでたい。
「全国行脚で国民の声を聞くふりのパフォーマンスを始めたのは、支持率急落に焦っている裏返しでしょう。ただ、岸田首相は国会議員3代目で、祖父の代から東京・渋谷の広大な土地に一族のマンションを構えるエスタブリッシュメントです。庶民生活の苦しさなど実感できるわけもなく、彼が売りにしている『聞く力』も、民草の声を聞いてやるという上から目線でしかありません。特権意識の塊なのですよ。これだけ庶民生活が傷んでいるのだから、まっとうな為政者なら、防衛費倍増を諦めて災害対応や物価高対策に回すでしょう。ところが、岸田首相は政権延命しか考えておらず、そのために米国に媚を売る。国民生活なんて二の次なのです。本気で支持率を回復させたいのであれば、傲慢な政権運営を反省して、マイナカードと保険証の拙速な一体化を撤回し、福島第1原発事故の汚染水の放出を急ぐのではなく、“核のゴミ”を根本から止めることを考えるべきです」(政治評論家・本澤二郎氏)
読売新聞が21〜23日に実施した世論調査では、岸田内閣の支持率は前回6月調査から6ポイント下落して35%だった。これは内閣発足以降、最低の数字だ。逆に不支持率は52%で過去最高。毎日新聞の22、23日調査でも、内閣支持率は前回調査から5ポイント下落の28%だった。
国民生活より自分の保身優先なのがミエミエの岸田には、国民も辟易しているのだ。
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