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※紙面抜粋
※2023年7月22日 日刊ゲンダイ2面
※文字起こし
サラリーマンを“狙い撃ち”(C)日刊ゲンダイ
もう庶民はアップアップだ。物価上昇の勢いが止まらない。
総務省が21日発表した6月の「消費者物価指数」は、前年同月比3.3%の上昇だった。プラスはこれで22カ月連続である。かれこれ、2年近く値上がりが続いているということだ。生活が苦しくなるのも当然である。
品目別では、生鮮食品を除く食料が9.2%上昇と、1975年10月(9.9%)以来、47年8カ月ぶりの高水準。家事用消耗品(12.6%)も上昇が目立った。
とにかくあらゆる物が上がっている。鶏卵35.7%、食用油16.5%、豚肉9.4%、洗濯用洗剤18.4%、キャットフード28.5%……。宿泊料も5.5%上昇した。
しかも、この値上げラッシュは終わりそうにない。8月は牛乳やチーズ、ヨーグルト、シーチキンなどが値上げされる。9月はハム、ベーコン、冷凍食品、10月にはペットボトル飲料などが上がる。これでは、庶民は節約のしようがないだろう。
さすがに、ネット上には<レジで会計見る度うんざりしてる。子どものおやつに果物が減りました。子どももため息ついてるよ。明日は部活の大会だから果物入れてあげたい>などと怨嗟の声が上がっている。
賃金が大幅アップしていれば、まだ物価高に耐えられるが、実質賃金は14カ月連続のマイナスである。
それにしても、どうかしているのは日本銀行である。これほど国民が物価高に苦しんでいるのに、なぜインフレ抑制に動かないのか。欧米の中央銀行は、多少の景気後退を覚悟してでも、物価上昇を抑えようと“利上げ”を続けているのに、日本だけが“ゼロ金利”を維持している。その結果、とうとうアメリカのインフレ率(3.0%)を上回ってしまった。
本来、中央銀行は“物価の番人”のはずである。日銀が物価目標に掲げる2%も、15カ月間連続で超えている。なのに物価高を放置しているのは、どう考えても不可解だ。
経済評論家の斎藤満氏はこう言う。
「かつては日銀も、他国の中央銀行と同じくインフレ抑制に積極的でした。インフレが起きる前に予防的に金融を引き締めていたほどです。ところが、この10年で日銀の姿勢は大きく変わってしまった。庶民が物価高にあえいでいるのに利上げに動かないのは、政界や財務省から『景気が悪化したら困る』『国債の利払いが増えるじゃないか』という圧力もあるのでしょう。さらに、国際金融資本から利上げをストップさせられている、という事情もあるようです。動くに動けないのでしょう」
日本の物価高は、まったく終わりが見えない。
さらに国民から搾り取る気だ
岸田政権は即刻、物価高に手を打つべきだろう。ところが、国民の神経を逆なでするように「サラリーマン増税」を画策しているのだから信じがたい。
これ以上、国民を苦しめてどうするのか。SNSでは〈日本人やめたい〉といった投稿があふれている状況だ。
6月に閣議決定された「骨太の方針」に掲げられたのが、「退職金増税」である。
退職金は所得税の課税対象となっているが、現行制度では「退職所得控除」によって税負担が軽減されている。「控除額」は勤続年数が長いほど優遇されるルールになっていて、とくに20年超勤めると控除額が一気に大きくなり、受け取れる額が増える。
このルールを見直したら、実質的な増税となるのは間違いない。仮に、20年超勤めても控除額が大きくならないように制度が見直された場合、勤続35年で退職金2000万円の人は約45万円の増税となってしまう。
さらに、政府税調の中期答申には、配偶者控除、扶養控除、生命保険控除、通勤手当の課税見直しまで盛り込まれていた。まさに、サラリーマン“狙い撃ち”である。
ただでさえ、庶民は物価高に苦しんでいるのに、よくも平然と「増税」を打ち出せたものだ。どういう神経をしているのか。
「岸田政権は、防衛費倍増、異次元の少子化対策と、カネのかかる政策を次々に打ち出しています。いくら財源があっても足らない。『取りやすいところから取ろう』ということなのでしょう。声が小さい『サイレントマジョリティー』のサラリーマンなら、増税を強いても文句を言わないと踏んでいるのだと思う。しかし、いまでも国民の生活はギリギリです。社会保険料も年々重くなり、2022年度の国民負担率は47.5%に達している。稼ぎの半分しか手元に残らない。さらに増税を強いられれば、国民は消費を控え、日本経済全体も沈滞していくでしょう。岸田首相は『新しい資本主義』を掲げ、『分厚い中間層をつくる』と宣言していたはずなのに、やっていることは、正反対のことばかりです」(斎藤満氏=前出)
物価高にサラリーマン増税とは、この政権は完全にイカれている。
「消費税」の凍結が先だ
物価高にあえぐ国民の負担を少しでも軽くするために必要なのは、増税ではなく減税である。なかでも、効果的なのは「消費税」の凍結だろう。踏み切れば、足元の物価高もあっという間に解消されるはずだ。
多くの国は、コロナ禍で付加価値税の税率を一時的に引き下げている。日本だってやろうと思えば消費税の凍結をやれるはずである。
そもそも、国民が物価高に苦しんでいるのは、すべて政府と日銀の無策のせいである。庶民はそのツケを払わされているのが実態だ。物価が上がれば、その分、消費税の負担も増えていく。もし、日銀が他国の中央銀行と同じように利上げに動いていれば、22カ月も物価上昇は続かなかったのではないか。なのに、自分たちの無策を棚に上げて、さらに庶民から搾り取ろうなんて許されるわけがないだろう。
しかも、税収が増え、税が余っても国民に還元しようとせず、すべて防衛費に回そうとするありさまだ。
いったい、この政権はどこを向いて政治をしているのか。
淑徳大大学院客員教授の金子勝氏(財政学)はこう言う。
「もし、財源が必要なら、法人税の減税によって内部留保をため込んできた大企業に応分の負担をさせるべきでしょう。“金持ち優遇”も見直した方がいい。年間の所得が1億円を超えると1人当たりの税負担が低下する『1億円の壁』をなくすべきです。なのに、中間層のサラリーマンに増税を強いようとしているのだから言語道断です。岸田政権のやっていることは“格差促進”と言うしかありません。大企業がスポンサーだから“優遇”をやめる気がないのでしょう。これでは、新しい産業も生まれず、経済成長も見込めません」
サラリーマンは「まあ、しょうがないか」と納得していてはダメだ。次の選挙で、イカれた岸田政権に鉄槌を下すべきだ。
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