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※紙面抜粋
※2023年6月2日 日刊ゲンダイ2面
※文字起こし
北朝鮮の打ち上げは失敗、もう広島サミットの空虚(岸田首相=左)/(C)日刊ゲンダイ
北朝鮮が弾道ミサイル技術を使用した「軍事偵察衛星」を、予告期間初日の先月31日に打ち上げ失敗したが、「可能な限り早期に2回目の発射を断行する」と強気の姿勢を崩していない。日本政府は、残る予告期間の今月11日までに再発射する可能性があるとみて、迎撃態勢を継続している。
1日は、浜田防衛相が来日した米国のオースティン国防長官と会談。北朝鮮の再発射に備え、日米韓3カ国の連携と警戒監視の強化を確認した。オースティンは「米国はあらゆる必要な措置を取る」と表明し、米国が核を含む戦力で日本防衛に関与する「拡大抑止」へのコミットメントは揺るぎない、とも言明した。
北朝鮮の今回の失敗は「開発を急がせすぎた」との見方がある。軍事偵察衛星の運用は、金正恩総書記が2021年の朝鮮労働党大会で掲げた5カ年計画の重要課題のひとつ。「今年4月までに1号機の準備を完了する」と表明していたため、期限が優先されたのではないかというのだ。
急ぐ背景には正恩の威信とともに、日米韓による包囲網強化に対する北朝鮮の焦りがあるのは間違いない。
特に米韓は、4月の尹錫悦大統領の訪米時に、核・ミサイル開発を進める北朝鮮に対して、重大な方針決定をしている。拡大抑止の強化を盛り込んだ「ワシントン宣言」である。米軍の核戦力について米韓両国が協議するため、次官補レベルの「核協議グループ」の設置を決め、米国が核ミサイルを搭載する戦略原子力潜水艦や戦略爆撃機を恒常的に韓国に派遣することも決めている。「より見える形」で戦略兵器を配備するということだ。
こうした中、北朝鮮は何としても早く、米韓の動向を探ることのできる「目」の役割を果たす偵察衛星を獲得し、同時に核・ミサイル技術を蓄積したいということなのだ。
元外務省国際情報局長の孫崎享氏はこう言う。
「米韓が北朝鮮に脅威を与える兵器の配備や軍事演習をどんどん進めている。北朝鮮の立場からすれば、座して死を待つわけにはいかない。何らかの反撃をしなければ、という心境になっているわけです。そのために、米本土に届く核兵器を持ちたいというのが軍事衛星を打ち上げる理由。日本へはミサイル発射で威嚇する。いずれも北朝鮮にとっては『抑止』ということです」
北朝鮮が使う「核保有は防衛」の論理にG7は反論できるのか
まさに、軍拡が軍拡を呼ぶ「安全保障のジレンマ」だ。北朝鮮にとっては核兵器を持つことが、自国の「防衛」であり、「抑止」という考え方。ウクライナ侵攻を続けるプーチン大統領を“お手本”にしているのだろう。
ロシアは核兵器を使用できるとする基準を「国家存立の危機」とし、クリミア半島など占領地を死守し、西側諸国のさらなる介入を阻止するための最後の手段として、核兵器を使う可能性を排除していない。戦術核兵器を限定的に使ってあえて緊張を高め、相手に停戦などを強いる恐れも取りざたされており、ウクライナも武器支援を続けるNATO(北大西洋条約機構)も、ロシア本土には手を出せない。
だが、核兵器を「抑止」に使うこの“論理”こそ、先月のG7広島サミットにおいて、岸田首相の肝いりでとりまとめられた「核軍縮に関する広島ビジョン」を想起させる。
「核なき世界」の実現をライフワークとする岸田は、「理想の実現に向けたG7首脳の決意、行動を示す力強い歴史的な文書になった」と誇らしげだった。しかし、「広島ビジョン」の実態は、ロシアを名指しして核兵器の使用や威嚇を許さないと牽制する一方で、G7各国の核保有や「核の傘」による安全保障を正当化し、「核抑止」を肯定する内容だった。
<我々の安全保障政策は、核兵器は、それが存在する限りにおいて、防衛目的のために役割を果たし、侵略を抑止し、並びに戦争及び威圧を防止すべきとの理解に基づいている〉
この一文に象徴される広島サミットのペテンを前に、ロシアや北朝鮮から「俺たちの核兵器も防衛目的だ」と主張されれば、現実には返せる言葉がない。
実際、金正恩の妹である与正・朝鮮労働党副部長は、1日に談話を発表し、「われわれの衛星打ち上げが非難されるならば、米国をはじめ既に数千の衛星を打ち上げた国々が全て糾弾されるべきだ」と自国の行動を正当化していた。
「朝鮮半島の安定を目指すなら、米韓の軍事演習による威嚇は逆行している。どうして西側は軍事衝突を避ける行動を取れないのか。結局、残念ながら米国にとっては、緊張を高めることが自国の利益になるからでしょう。特にバイデン政権は武器産業とのつながりが強い。ロシアと中国と北朝鮮を煽れば、その地域の緊張が高まり、周辺国は防衛費を増やす。まさに日本がそうです。しかし、世界は本当にそんな緊張を求めているのかどうか。G7は世界を安定させるための組織だと思っていたが、今は逆に緊張を高めるブロックになってしまっています」(孫崎享氏=前出)
自由主義陣営VS権威主義陣営の「分断」が世界から平和を遠ざける
世界を安定ではなく緊張させるG7に対し、落胆が激しかったのは広島の被爆者たちも同じだった。「広島出身の首相が議長を務めるならば」と期待をかけたのに、「核廃絶」に踏み込まないどころか、平和都市・広島を“政治利用”されたのだから当然だろう。
広島サミット最終日、オンライン会見した日本原水爆被害者団体協議会の事務局長は「核抑止論をもって、核の傘の下で戦争を煽るような会議になった」と怒りに震えていた。今の北朝鮮の行動を見れば、まさにその通りになっている。北朝鮮は岸田の掲げる「核なき世界」など空論だと嗤っているかのようだ。
理想論が駄目だとは言わないが、G7がつくり出す「自由主義陣営VS権威主義陣営」の分断は、明らかに世界から平和を遠ざける。
どんなに「歴史的なサミットだった」と岸田が自画自賛しようが、あれからわずか10日間で、世界はどうなっているか。ウクライナでのロシアの攻撃は続き、首都キーウへは連日の空襲。対するウクライナは反転攻勢のタイミングを計っている。そして、追い込まれる北朝鮮はロシアと中国を後ろ盾に、軍備増強にますます注力していく。「核なき世界」どころか、むしろ「核のボタン」が押される日がどんどん近づいているというのが現実ではないか。
国際ジャーナリストの春名幹男氏は言う。
「広島サミットは一体、何だったのでしょう。『ごまかしのサミット』だったことがどんどん露呈しています。そして、私が考える岸田首相の最大の欺瞞は、対北朝鮮で米韓が合意した『新核戦略』に日本は事実上組み込まれているのに、その一方で『核なき世界』の理想を口にしていることです。サミットでは北朝鮮のことは議論されず、日米韓首脳会談も時間が短すぎて本格的な議論にならなかったので、ひとまず岸田首相は安堵しているでしょうが、拉致問題を抱えている日本は米韓とも立ち位置が異なるはずです」
「被爆地出身」や「ライフワーク」がいかに空疎であり、広島サミットがいかに空虚であったか……。半月も経たないうちに、もう化けの皮が剥がれた。
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