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※紙面抜粋
※2023年5月25日 日刊ゲンダイ2面
※文字起こし
全能感に酔いしれている(岸田首相)/(C)共同通信社
最優先課題にしてきたG7広島サミットを終えた岸田首相は、今も高揚感に包まれているようだ。
24日、衆院予算委員会ではサミット閉幕を受けて今後の外交などについて議論する集中審議が開かれた。冒頭、岸田は「5月19日から21日まで、G7広島サミットを議長として主催しました」と、その概要を報告。
「国際社会が歴史的な転換期にある中で開催された今般のG7広島サミットでは、G7の揺るぎない結束を改めて確認することができた」
「当初の狙い通りの成果が達成できた」
「史上初めて独立文書化した『核軍縮に関するG7首脳広島ビジョン』の発出を得た」
「ゼレンスキー大統領を加えて世界の平和と安定に関する議論を行った」
「大きな歴史的意義を持つものと考える」……。
サミットの成果を「歴史的」「史上初めて」と自画自賛し、悦に入っている。
「ウクライナのゼレンスキー大統領が広島サミットに参加したことで世界の注目を集め、内閣支持率も大幅アップした。総理が自信を深めるのも当然でしょう。万能感に浸ったまま、この勢いで今国会の会期末までに解散・総選挙に突き進むという観測が一気に広がりつつあります」(自民党中堅議員)
24日の集中審議でも、解散に関する質問が頻発。そのたびに岸田は「今は解散等については考えていない」という常套句を口にするのだが、支持率も株価も上がっている「今なら確実に勝てる」と、早期解散を望む声が自民党内で大きくなっている。
「指摘は当たらないと強気一辺倒
「サミットが評価されて支持率が上がったことと、衆院解散はまったく別の話です。賛否両論あるテーマについて国会での議論を深め、争点を示して国民に聞くのが本来の解散総選挙のあり方でしょう。岸田政権が推し進める大軍拡や、そのための財源確保法案がちょうど国会で審議中なのだから、徹底審議した上で国民に信を問うなら分かります。しかし、岸田首相は何を聞かれてもマトモに答えようとはしない。それでいて、4年間の衆院議員任期を2年以上も残しているのに、与党側の都合で勝てる時に選挙をやるというのは筋が通りません。あまりに国民をバカにしています」(法大名誉教授・五十嵐仁氏=政治学)
24日、防衛費増額のための財源確保法案が参院で審議入り。野党から「増税などの国民負担を強いる方針を国会審議を経ず決めた」「憲法をないがしろにしている」などと追及された岸田は、ことごとく「指摘は当たらない」と突っぱね、サミットの成果を誇った。異様なまでの興奮、全能感。この強気の姿勢が、解散風を煽るのだ。
昨年末に安保関連3文書の改定や防衛費増額に伴う増税などを決めた際も、岸田は「結局、全部やったのは俺だよ」と自慢していたという。サミットを経て、大宰相気取りで「安倍元首相にもできなかったことを俺はやった」と高揚感を強めているのだろうが、その前に、国民生活を高揚させて欲しいものだ。
厚労省が23日に発表した毎月勤労統計調査(確報)によれば、3月の実質賃金は前年同月比2.3%減と大幅マイナス。実質賃金の低下は、これで12カ月連続だ。2022年度の実質賃金も前年度比1.8%減と2年ぶりのマイナスだった。下げ幅も14年度(前年度比2.9%減)以来の大きさだ。
岸田は今年の春闘の賃上げ成果を強調するが、この物価高に賃金の伸びが全く追いついていない。消費者物価指数は前年同月比で3.8%も上昇している。来月からはまた電気料金が上がる。
国民に負担を強いるしか能のない政権は、本来なら選挙どころではないはずなのだ。
大メディアの提灯報道が支持率を上げ、解散風を後押し
「国民の方を向いていない岸田政権は、物価高対策や異次元の少子化対策など、個別政策ではまったく評価されていない。4月の衆参5補選で4勝1敗だったといっても、その勝ち方は微妙でした。だから、支持率が多少持ち直しても解散には踏み切れないという見立てが多かったのですが、サミットを境に風向きが変わったのは感じます。それには、これだけ国民生活が傷んでいるのに、議長国サミットの成功を喧伝して岸田政権をもり立てる大メディアの存在が大きい。他の参加国ではここまで大々的に報道しませんよ。サミット閉幕時の議長国会見で、真っ先に衆院解散についての質問があったことも象徴的です。サミットと解散は関係ないはずなのに、日本のメディアは政局報道に終始している。会期末に野党が内閣不信任案を提出すれば、それが解散の大義になるなどと牽強付会な理屈で政権をアシストする始末です」(政治ジャーナリスト・山田厚俊氏)
NHKをはじめとする大メディアが朝から晩まで中継して議長国サミットを持てはやしたおかげで支持率がハネ上がったが、そもそも広島サミットには、岸田が誇るような歴史的成果があったのか。
■岸田首相の地元メディアは辛辣
岸田の選挙区であり、サミット開催地になった広島の地元紙「中国新聞」は、大メディアと比べて辛辣だ。サミット以降も連日、批判記事が掲載されている。サミットが閉幕した21日には「広島サミット/核軍縮ビジョン 抑止論肯定は許されない」と題した社説で、岸田が「史上初めて」と胸を張った「広島ビジョン」に対して、こう注文を付けた。
<保有国や米国の傘の下にいる同盟国の立場を肯定し、忖度するような記述には目新しさもない。ビジョンが、多くの原爆死没者が眠る広島の地名を冠するにふさわしいとは思えない。実効性を伴わぬまま、核廃絶への姿勢だけをPRする「貸し舞台」に広島を利用されても困る>
24日も「衆院解散の観測 浮き足立たず議論尽くせ」と掲げ、社説でこう書いていた。
<防衛費増額では、そもそも増強する防衛力が専守防衛を逸脱しないのか、疑問が残ったままだ。首相の説明は具体性を欠き、議論がかみ合っていない>
<防衛増税の時期決定や少子化対策の財源確保策など、国民負担につながる財源論議が深まり、国民に判断材料を示してから信を問うべきだろう>
<「サミット解散」と選挙に利用する動きがあれば広島の思いを踏みにじることになるのではないか。首相はよく考える必要がある>
被爆地の悲哀と長年向き合ってきた地元紙の気概を感じるが、こういう正論が大メディアに載ることはまずない。岸田の高揚に寄り添うように、サミット成功を礼賛するだけだ。
「被爆地で開催されたサミットで核抑止を正当化し、ウクライナへの戦争支援を大々的に発信するなんて、ヒロシマを冒涜しているとしか思えません。しかし、中央メディアの記者はサミット期間中だけ現地について行って、政府関係者から聞いた手柄話を垂れ流すわけです。政権の思惑通りの提灯報道が支持率を上げ、解散風を後押ししている。欺瞞に満ちた広島サミットを検証したり、サミットの勢いを借りて解散に突き進むことを戒めるべき大メディアが政府の広報機関になってしまっています。その方が売れるからといって、メディアが一斉に政治と同じ方向に走ることは、国民から判断材料を奪うことになり、実に危うい。サミット成功だから解散という無理筋の理屈が幅を利かせる現状では、ジャーナリズムの役割も問われています」(五十嵐仁氏=前出)
戦時中もそうだった。戦争を正当化する軍部に同調する世論が高まると、当初は批判的だった大新聞も迎合して大本営発表を垂れ流すようになり、それに呼応した国民がさらに戦争を支持する。そういう負のサイクルから抜けられなくなった末の敗戦だったのではないか。メディアが権力監視の役割を見失えば、国全体が誤った方向に進んでしまう。そのツケを負うのは結局、われわれ国民だということを忘れてはいけない。
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