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※紙面抜粋
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これじゃあロシアに“宣戦布告”同然だ 岸田サミット あらゆる面で「ヒロシマ」を冒涜(上)
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/323325
2023/05/22 日刊ゲンダイ
正義の戦争などない。平和希求の広島で軍事支援表明の狂気
史上最悪のサミットだった(原爆死没者慰霊碑に献花する岸田首相とウクライナのゼレンスキー大統領)/(C)共同通信社
戦争被爆地で初めて開かれたG7広島サミットは、岸田首相が21日の会見で「歴史的なサミット」と言っていた通り、ある意味で歴史に残るサミットになった。戦争のない平和な世界、そして核兵器廃絶を希求するヒロシマの地で、軍事支援の表明が飛び交い、核兵器の保有も正当化。ほかでもない広島選出の首相があらゆる面でヒロシマを冒涜したと言っていい。正義の戦争などない。半世紀にわたるG7の歩みの中で、史上最悪の恥ずべきサミットだった。
主要テーマのひとつは確かにウクライナだった。ロシアが仕掛けた侵略戦争は1年3カ月に及び、欧米などから巨額の軍事支援を受けるウクライナは反転攻勢のタイミングをうかがっている。サミットが始まると、オランダなどが提供を検討していた米国製戦闘機F16の供与をバイデン大統領が容認し、G7首脳にウクライナ兵士の訓練開始を伝達。機動性が高く、対地上攻撃にも優れたF16が配備されれば、ウクライナは制空権確保で優位に立ち、戦況を大きく変えるとされる。当初、オンライン参加とされていたゼレンスキー大統領が仏政府専用機で乗り込んでくると、武器供与はさらに加速した。
ゼレンスキーと会談したバイデンは、高機動ロケット砲システム「HIMARS(ハイマース)」用の弾薬や対戦車兵器、装甲車両など3億7500万ドル(約517億円)の追加の軍事支援を約束。会見で「ゼレンスキー大統領からF16を使ってロシア領内を攻撃しないという保証を得た」と釈明していたが、これじゃあロシアに“宣戦布告”したも同然だ。
国際ジャーナリストの春名幹男氏はこう言う。
「岸田首相は言うまでもなく、バイデン大統領をはじめとするG7首脳は、誰ひとりとして停戦に向けたグランドデザインを描けていないことがハッキリした。この間、ゼレンスキー大統領が求める武器供与をずるずると受け入れるばかり。議長国のリーダーだと気負っていた岸田首相にしても、『ヒロシマでG7サミットをやった』という実績が欲しかっただけなのでしょう。そうでなければ、被爆地で核保有や核の傘を認める『核軍縮に関するG7首脳広島ビジョン』『G7首脳声明』なんて発表できない。初めてG7首脳が揃って原爆資料館を訪問し、平和記念公園で記念撮影する絵はつくれた。教科書にも載るでしょう。その程度の点数稼ぎのために、広島を踏みつけた」
また岸田は「安倍さんもやれなかったことをやった」と高揚し、うまい酒を飲んだかもしれないが、この先、どのツラを下げてお国入りするつもりか。歴史の法廷を待たずとも、必ずやしっぺ返しを食らうことになる。
またしても核保有国の身勝手な声明に被爆者たちの怒りと絶望
被爆者のサーロー節子さんは怒りの会見(C)共同通信社
「自国の核兵器は肯定し、対立する国の核兵器を非難するばかりの発信を被爆地からするのは許されない」
「広島まで来てこれだけしか書けないのか。死者に対する侮辱だ」
被爆者のサーロー節子さん(91)が憤慨するのも無理はない。サミットの展開を見守るため、カナダから3年半ぶりに来日。G7として初めて核軍縮に特化した首脳文書「広島ビジョン」に怒りをぶちまけた。他の被爆者からも「願いはほど遠い」など落胆の声が相次いだ。
「被爆地で開かれるサミットで明確なメッセージを出し、核兵器のない世界を目指すという機運を再び盛り上げる場にしたい」と盛んに言っていた岸田の意気込みは何だったのか。核使用をチラつかせてウクライナを恫喝するロシアを非難するのは当然だが、外務省が発表した文書の仮訳にはこうある。
「我々の安全保障政策は、核兵器は、それが存在する限りにおいて、防衛目的のために役割を果たし、侵略を抑止し、並びに戦争及び威圧を防止すべきとの理解に基づいている」
読む気を失せさせる官僚構文が示したのは、「核兵器のない世界」という究極目標に向けて現実的で責任あるアプローチを取ると称し、G7メンバーの核保有と核の傘の正当化だった。
文書ではNPT(核拡散防止条約)体制の重視や、ロシアに新START(新戦略兵器削減条約)の履行再開を要求。FMCT(兵器用核分裂性物質生産禁止条約)の即時交渉開始やCTBT(包括的核実験禁止条約)の発効を喫緊の課題としながらも、サーローさんらが尽力した核兵器禁止条約については一切触れず、「核廃絶」という文字もなかった。
立正大名誉教授の金子勝氏(憲法)はこう言う。
「終わってみたら、何の希望も見いだせない。広島の人々を二重三重に裏切るサミットで、被爆者をとことん政治利用したのが浮き彫りです。議長国トップだといって根回し外遊に精を出していたのですから、G7首脳声明で揃ってプーチン大統領と協議するくらいの決意をまとめてほしかった。広島サミットは開かない方がよかった」
岸田が首脳を案内した原爆死没者慰霊碑には「安らかに眠って下さい 過ちは繰返しませぬから」と刻まれている。何から何まで神経を疑う。
ゼレンスキー大統領のおねだり訪日、メディアはバカ騒ぎの恐ろしさ
ゼレンスキー大統領はまるで“ヒーロー”扱い(ウクライナ大統領府提供)
酷かったのは、ゼレンスキーの電撃来日を伝える大メディアのバカ騒ぎっぷりだ。
20日の来日時は「ゼレンスキー大統領 まもなく広島到着へ」とのテロップで、ゼレンスキーを乗せた仏政府専用機が着陸する様子を中継。タラップを降り、車に乗り込む姿を映したかと思えば、今度は移動中の様子を空撮だ。21日平和記念公園で岸田と共に献花する際は「とても神妙な面持ちです」と実況中継し、セレモニーの“演出”に一役買ってみせた。
まるで“ヒーロー”扱いだったが、あまりに危機感が薄いのではないか。ゼレンスキーが戦時下の母国を不在にしてまで広島を電撃訪問した目的のひとつは、戦況反転のため、西側諸国から武器提供を取り付けることだ。サミットでは、米国の容認を受け、欧州からF16の供与を取り付けた。
ゼレンスキーにとっては、自国防衛のため各国から武器提供を受けられるか否かは死活問題だ。ただ、各国の武器支援が戦争長期化の一因となっている側面は否定できない。広島の被爆者団体からは「被爆地・広島で武器供与の話が出るのは好ましくない」という声も上がったほどだ。
こうした背景をロクに報じず、大騒ぎするだけでいいのか。政治評論家の本澤二郎氏はこう言う。
「大メディアは、ウクライナへの武器供与の意味を冷静に分析して報じるべきです。ゼレンスキー大統領の来日を礼賛するばかりでは、間接的に戦争長期化を助長しているようなもの。恐ろしいことです。戦争当事国のどちらか一方に寄った報道は危険でしょう」
ゼレンスキーをヨイショしているだけでは、戦争の本質は見えてこない。
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