http://www.asyura2.com/23/senkyo290/msg/377.html
Tweet |
※紙面抜粋
※2023年5月10日 日刊ゲンダイ2面
※文字起こし
目標は「アベ越え」(岸田首相=衆院財務金融委、9日)/(C)日刊ゲンダイ
「1人当たりの国民総所得は足元の縮小傾向を逆転し、最終的には年3%を上回る伸びとなる。10年後には現在の水準から150万円増やすことができる」
こう胸を張ったのは、安倍元首相だった。第2次政権発足から5カ月後の2013年6月5日のこと。「大胆な金融政策」「機動的な財政政策」「民間投資を喚起する成長戦略」というアベノミクスの「3本の矢」によって、国民生活を向上させると自信満々だった。
「約束の日」まで3週間あまり。安倍の目標が達成される可能性は極めて乏しい。内閣府の国民経済計算年次推計によると、13年の1人当たり国民所得は292.5万円。最新の20年は298.8万円だった。「デフレからの脱却と富の拡大によって経済の好循環を実現する」とブチ上げ、異次元緩和で市場をジャブジャブにしたのに、所得は7年間で6万3000円しか増えなかった。コロナ禍前の18年から伸びが鈍化していたから、アベノミクスの深掘りが暮らし向きを悪化させたのは疑いようがない。
厚労省は9日、3月の毎月勤労統計調査(速報、従業員5人以上)を発表。物価上昇を加味した実質賃金は前年同期比2.9%減で、12カ月連続のマイナスだった。2月(確報)も2.9%減で、物価高で手取りが減り、家計を圧迫する状況が常態化している。基本給や残業代などを合わせた現金給与総額は0.8%増の29万1081円で15カ月連続プラスだったが、増加幅は3カ月連続で1%を下回った。
「100%ない」インフレ率低下
ロシアによるウクライナ侵攻が資源高を招き、アベノミクスが誘導する円安が加速。輸入物価高を引き起こし、価格転嫁が広がって値上げラッシュは止まらなくなった。足元では国産インフレが事態を深刻化させている。
経済評論家の斎藤満氏はこう言う。
「日銀は4月の展望リポート(経済・物価情勢の展望)で、インフレ率は今年度半ば以降に1%台に低下すると予想していますが、それは100%ない。断言します。全国の物価の先行指標である4月の東京23区の消費者物価指数(中旬速報値)は、(生鮮食品を除く)コアCPIが前月比0.5%上昇、(生鮮とエネルギーを除く)コアコアCPIは0.6%上昇で、いずれも3月から一段と加速した。19日に公表される全国の消費者物価指数はさらに上振れし、インフレの実勢を示すコアコアCPIは4%超えの可能性が高い。直近3カ月の瞬間風速は年率6%にもなっています。インフレ下の金融緩和継続はマイナス金利を拡大しているようなもので、物価上昇はますます進む」
そうでなくても、コアCPIを1%程度抑え込んでいる政府による電気・都市ガスの負担軽減策は、10月請求分(9月使用分)までの時限措置。このままいけば秋にはその1%が確実に乗っかってくる。
「日銀の植田総裁は長期金利を操作するYCC(イールドカーブ・コントロール)を問題視しているものの、就任直後の政策変更で角が立つことを警戒した。早ければ7月にYCCを撤廃する可能性はありますが、それ以上の手を打つかは期待薄。インフレ退治に失敗した米国を教訓にすべきなのに、米国発の金融不安の波及を恐れて臆病になっているのです。日本の個人金融資産は2000兆円とされていますが、インフレで確実に目減りする。物価上昇と賃金上昇の好循環なんてものは起き得ません。岸田政権も日銀も国民を欺いている。手を打たなければ、来年もインフレは収まらないでしょう。そのツケを払わされるのはまたしても国民なのです」(斎藤満氏=前出)
「国民負担率」は10年で7ポイント超も急上昇
米アップルが自社発行のクレジットカード「アップルカード」のユーザー向けに年4.15%の高金利預金サービスを始めて話題だが、日本は年金生活者を犠牲にしたゼロ金利がずーっと定着のアホらしさ。SNSで江戸時代の年貢割合「五公五民」という言葉が駆けめぐるほど、国民の負担は重くなっている。きっかけは、2月に財務省が発表した「国民負担率」。国民所得に占める税と社会保険料の割合を示すもので、22年度の実績見込みは47.5%だった。過去の推移をみると、1979年度から2012年度にかけて30%台を緩やかに上昇してきたのに、13年度に40%を突破すると急上昇。この10年ほどで7ポイント超も増えたのだ。この間、賃金はロクに上がっていない。キツイわけである。
増税分は社会保障費に使うとの理由で19年に消費税が10%に引き上げられたのに、実際に回されているのは2割ほど。残りは国の借金返済にあてられている。その上、75歳以上の公的医療保険料は24年度から段階的に引き上げられる見通し。健康保険法などの改正案が参院厚労委員会で審議中だ。ネット上では笑顔で力拳を握る岸田首相の写真に「六公四民やります。自民党 五公五民を超えた異次元国家へ!」というテロップを載せたパロディー画が出回っているが、現実に近づいているから、もはやシャレにもならない。
国民負担率は上がる一方。すでに江戸時代並みなのに、マクロ経済スライドだ、なんだと給付をどんどん切り下げる国民愚弄。そのくせ、防衛費だけは財源後回しの聖域化だ。米国隷従を徹底する岸田首相は、27年までに中国が台湾に侵攻するとする米国の仮説に従い、安保政策を大転換。国是である専守防衛を逸脱する敵基地攻撃能力の保有、そして今年度から5年間で防衛費を43兆円に大幅増額すると決めた。税外収入や歳出改革、決算剰余金といったありとあらゆる“余り金”をかき集め、それを貯める「防衛力強化資金」という名の“別財布”までつくり、それでも足りずに増税する算段だ。
狂った自公政権に代わる政府を
対中包囲網を構築したいバイデン政権の顔色をうかがった岸田が日韓関係の改善にシャカリキになり始めた途端、表に出てきたのが日米韓3カ国の事実上の軍事同盟化である。米国を媒介にして日韓のレーダーシステムを接続し、情報の即時共有を進めるという。北朝鮮の弾道ミサイルを探知・追尾する能力を引き上げ、迎撃体制の強化につなげる狙いとされているが、米軍と一緒に戦う体制づくりにほかならない。ゼロ金利、五公五民の庶民苛めで軍拡政治。お人好しの国民はいつまで黙っているのか。
法大名誉教授の五十嵐仁氏(政治学)はこう言った。
「日韓関係が改善されたことで、日米韓の連携は確かに深まる。だとしたら、外交で問題を解決する手段が増えたのに、なぜ軍事VS軍事のエスカレーションに走るのか。平和主義を掲げる憲法9条との整合性は言うまでもなく、軍拡の必要性やそれに伴うリスクなどの議論が全くされていない。防衛費増額ありきで手順が逆転しています。そもそも、この国に軍備増強に回すカネがどこにあるのか。減税し、社会保険料率を引き下げれば、可処分所得が増えて消費に回るのに、そうした手当ては一切検討されない。自公政権は狂っています。国民の収入を増やし、将来の不安を軽減する社会福祉政策を真剣に考える政府をつくらなければ、この国は沈みゆくばかりです」
年金の受給開始年齢が現行の62歳から64歳へ引き上げられるフランスでは、反発が収まる気配はない。メーデーの1日に各地で行われた抗議デモは凄まじかった。内務省によると、参加者は全国で78万2000人。11万2000人が集まったパリなどでは一部の過激グループが火炎瓶や花火を投げ、逮捕者は全国で291人に上り、参加者との衝突で少なくとも108人の警官が負傷したという。
むろん、暴力による主張は正当化されない、だが、羊の群れのようにおとなしくしていては、権力者の思うツボだ。
▲上へ ★阿修羅♪ > 政治・選挙・NHK290掲示板 次へ 前へ
最新投稿・コメント全文リスト コメント投稿はメルマガで即時配信 スレ建て依頼スレ
▲上へ ★阿修羅♪ > 政治・選挙・NHK290掲示板 次へ 前へ
スパムメールの中から見つけ出すためにメールのタイトルには必ず「阿修羅さんへ」と記述してください。
すべてのページの引用、転載、リンクを許可します。確認メールは不要です。引用元リンクを表示してください。