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※紙面抜粋
※2023年5月9日 日刊ゲンダイ2面
※文字起こし
原子力ムラは再稼働ありき(西村経産相)、能登半島では震度6強の地震(C)日刊ゲンダイ
ゴールデンウイークの真っただ中、5日に能登半島を襲ったマグニチュード6.5規模の地震はあらためて、この国が地震大国だという事実を思い知らせた。
避難指示が解除され、断水も解消したとはいえ、余震が続く中で多くの住民は不安な日々を過ごしているだろう。家屋倒壊など多くの被害が出た。震災発生翌日からの降雨で土砂災害も心配される。
東日本大震災や阪神・淡路大震災と比べると人的被害が少なかったためか、大メディアの報道は岸田首相の訪韓や英国王戴冠式、8日からの新型コロナ5類移行などの比重が大きくなり、早くも関心が薄れつつあるように見えるが、戦慄するのは、今回の地震で「震度6強」という最大の揺れを観測した石川県珠洲市に原発建設計画があったことだ。
珠洲市に原子炉2基を建設する計画が浮上したのは1975年。北陸電力・中部電力・関西電力の3社が共同で運営する計画だった。市議会も原発誘致を議決。2014年から稼働する予定だったが、住民の反対運動などで03年に計画は凍結され、建設には至らなかった。
もし珠洲原発が計画通りに建設され、稼働中に今回の地震が起きていたらと想像するとゾッとする。そもそも珠洲市のある能登半島周辺は活断層があることが知られ、ここ数年は群発地震も続いていた。
珠洲原発こそ建設されなかったが、能登半島には北陸電力志賀原発がある。東日本大震災以降は停止しているが、まさに再稼働に向けて動き出したところなのである。
実は志賀原発も、原子炉建屋直下に活断層がある懸念が拭えない。原子力規制委員会の有識者調査団も16年に「活断層と解釈するのが合理的」という見解をまとめている。しかし今年3月、規制委は志賀原発2号機の安全審査で、敷地内を走る10本の断層は「活断層ではない」とする北陸電力の主張を認めたのだ。このまま再稼働に走って本当に大丈夫なのか?
原発を動かすという目的ありき
ベストセラーになっている最新刊「分断と凋落の日本」でも原発の問題を縷々指摘している元経産官僚の古賀茂明氏はこう言う。
「そもそも日本の原発は地震に弱い。今は民間の耐震住宅だって3000ガル以上の耐震性があるのに、原発の耐震設計基準は1000ガル以下が大半です。2000年以降、1000ガル以上の地震は18回も起きている。東日本大震災の最大の揺れは2933ガルでした。岸田首相はよく『世界最高水準の規制基準』と言いますが、規制委も機能していないのが実情です。問題があっても先延ばしするだけで、本来は申請を却下すべきなのに規制委は絶対に『ダメ』とは言わない。何とか審査を通すためにあれこれアドバイスまでしている。原発を造った以上、長く動かしたいという電力会社の理屈に寄り添って、そのための法律やルールを政府が考えているのです。だから、実効性のあるものをつくるのが非常に難しい避難計画は規制委の審査対象から外され、政府が恣意的にお墨付きを与える仕組みになっています。何としても原発を動かすという目的ありきで日本のエネルギー政策は決められているのです」
列島は活断層だらけだ。この調子では、日本中すべての原発稼働計画に疑問の目を向けざるを得ない。実際、珠洲原発の計画凍結も直下の活断層の存在が理由ではなかった。用地買収が思うように進まなかったことや電力需要の低迷を受けて、電力会社側が珠洲市に凍結を申し入れて建設が中止された。電力会社側の都合が優先されてきたということだ。
反対しづらい「束ね法案」の形で国会提出する姑息
冷静に考えれば、活断層だらけで地震大国の日本で原発推進なんて正気の沙汰とは思えないのだが、岸田政権は安全性など度外視で原発再稼働にシャカリキだ。
脱炭素をお題目に、原発の60年超運転などを可能にする「GX(グリーントランスフォーメーション)脱炭素電源法案」が連休直前の4月27日の衆院本会議で与野党の賛成多数で可決された。
「どういう場合に60年を超えて運転できるのか、使用済み核燃料の問題はどうするのかなど、経産委員会で野党が質問しても、『状況に応じて検討する』『具体的な運用は、法改正後に決める』など政府の答弁は曖昧で、国会での議論が深まらないまま拙速に原発再稼働が進められています。原子力政策の大転換なのに、岸田政権はGXに関係する5本の法律をまとめた“束ね法案”で国会に提出してきた。5本の中には賛成できる法律もあります。安保法制の時もそうでしたが、野党が反対しづらい束ね法案の形で出してくるのが実に姑息です。ウクライナ危機や物価高騰で電気料金が高騰している今なら、原発再稼働に国民の賛意を得られるという計算もあるのでしょう。しかし、使用済み核燃料や事故処理を考えたら、原発ほど割高な発電はない。日本人は忘れっぽいといわれますが、電力不足も電気料金高騰も原発を動かしたい原子力ムラの思惑が背景にあることを忘れてはいけません」(法大名誉教授・五十嵐仁氏=政治学)
ウクライナ危機と物価高騰で、国民世論は原発稼働容認に傾いている。電力会社と政府にとっては絶好のタイミングなのだろうが、国民にとってはどうなのだろうか。いま一度立ち止まって考える必要があるのではないか。
「状況追従主義」の首相は危うい
東日本大震災の直後、すべての原発が停止したが、それでも全国の電力は賄えていた。電力会社や政府は電力不足をあおるが、不足はせいぜいピーク時に数%の話。節電すれば何とかなる。それに、今は震災当時よりも再生可能エネルギーの技術は進歩し、出力も上がっているから、危険な原発をあえて動かす必要はないはずなのだ。
世界の潮流は再エネで、蓄電技術も進んでいる。ドイツは今年4月に脱原発を実現した。東日本大震災に触発されてのことで、ひとたび事故が起きれば取り返しがつかないことになるとおののいたのだ。ところが肝心の日本が原発回帰なんて、国際社会から見たら不思議で仕方ないだろう。
「ドイツは地震国ではないのに脱原発を成し遂げた。万が一、事故が起きれば他国にも地球環境にも悪影響を及ぼすし、なにより“核のゴミ”を将来世代にツケ回しすべきではないという哲学があるからです。その根底には確固たる倫理観がある。一方、そういう理念が日本にはかけらもない。あれだけの過酷事故を経験したのに、喉元過ぎればで、電力会社の経営を楽にするための原発再稼働をやすやすと認めてしまう。今や原発は安全保障上のリスクでもあります。日本海側にズラリと並ぶ原発を通常ミサイルで攻撃すれば、核爆弾と同様の威力がある。ザポロジエ原発が攻撃を受けて世界中が肝を冷やしたウクライナ危機から教訓を得て、北朝鮮のミサイル問題に対抗するには、敵基地攻撃能力の保有より、まずは原発の完全停止でしょう」(古賀茂明氏=前出)
哲学も理念もない。それが岸田の特性だ。後先考えず、「安倍元首相にもできなかったことをやった!」と浮かれているだけ。そういう岸田のことを7日の朝日新聞デジタルの記事で、東大名誉教授の御厨貴氏が「ノンシャラン(無頓着)」で「状況追従主義」と喝破し、こう評していた。
<コロナでもウクライナでも広島で開く主要7カ国首脳会議(G7サミット)でも、利用できるものは徹底的に利用する。この精神はすごい。だから、あっという間に原子力政策をひっくり返す>
<そのスピードがすごい。状況追従主義は、ものを深く考えないから早く結論が出せる。そして、何を言われても動じない>
原発事故が起きる可能性を無視し、仮に起きても責任は取らない。そのツケは国民が被るのだ。
GX法案は参院での審議が始まるが、今回の地震を機にストップをかけられないようでは、国会の存在意義が問われる。
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