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波乱含みの台湾総統選挙 その行方は/宮内篤志・nhk
2023年11月30日 (木)
宮内 篤志 解説委員
https://www.nhk.or.jp/kaisetsu-blog/100/490029.html
台湾で来年1月に行われる総統選挙の構図が固まりました。
2期続いた民進党政権の継続か、それとも政権交代か。
中国が統一への意欲をあらわにし、その出方に日本やアメリカが警戒感を強める中、東アジアの安全保障にも大きな影響を与える選挙の行方について考えます。
台湾の総統選挙は4年に1度行われます。
総統の任期は最長で2期8年、現在の蔡英文総統の任期は来年5月までとなっています。
その後任を決めるための投票が来年1月13日に行われます。
立候補の受け付けは先週締め切られ、主要政党から3人が届け出を行いました。
▼与党・民進党は現在の副総統の頼清徳氏、▼最大野党・国民党は現職の新北市長の侯友宜氏、そして、▼野党第2党の民衆党は前の台北市長の柯文哲氏です。
それぞれの経歴などを見てみます。
まず、与党です。
▼頼清徳氏は医師から政界入りし、台南市長などを歴任。
蔡英文政権1期目の途中で首相にあたる行政院長に就任し、2期目で副総統を務めています。
今回、コンビを組む副総統候補には、台湾当局で駐米代表を務め、アメリカとの太いパイプを持つ蕭美琴氏を起用し、蔡政権が進めてきたアメリカとの関係強化の流れを引き継ぐ姿勢をアピールしています。
続いて野党です。
▼侯友宜氏は警察のトップを務めたあと、台湾で最も有権者が多い新北市の副市長を経た後、市長に2期連続で当選しています。
その高い人気から、総統候補に擁立されました。
▼柯文哲氏も医師出身で、去年まで2期にわたり台北市長を務めました。
任期中の2019年には民衆党を立ち上げ、個人的な人気を背景に党勢を拡大し、とりわけ民進党と国民党の2大政党に不満を持つ若者の支持を集めています。
台湾では、1996年に初めて、総統を選ぶための直接選挙が導入され、2000年以降は2期8年ごとに政権交代が行われてきました。
今回も野党側は政権交代を目標に掲げていますが、立候補の受け付けが始まっても、選挙戦の構図がギリギリまで固まらない異例の展開となりました。
世論調査ではしばらく、民進党の頼氏がリードし、国民党の侯氏と民衆党の柯氏が追う形が続いていました。
野党側は、このままでは共倒れのおそれがあると危機感を強め、総統候補をどちらかに一本化することで11月15日に合意しました。
しかし、その決め方をめぐって双方が譲らず、話し合いは決裂したのです。
その結果、与党に対する批判票が分散することになり、与党に有利になったとも見ることができます。
しかし、一時、2位におよそ20ポイントの差をつけていた頼氏の支持率は、このところ伸び悩んでいます。世論調査でも、かなり追い上げられていて、今後、波乱含みの激しい選挙戦が予想されます。
さて今回、主な争点の1つが、中国との向き合い方です。
東アジアの安全保障という点で日本にも大きく関わってきます。
▼民進党の頼氏はかつて、「自分は現実的な台湾独立工作者だ」と発言したことがありますが、最近はこうした発言は抑制しているとみられます。
民進党政権下で途絶えている中国との公式な対話については、「対等で尊厳を保った前提のもとで、対話や交流を行う」として慎重な姿勢です。
▼国民党の侯氏は、「台湾独立」には反対の立場です。
一般的に中国に融和的とされる国民党ですが、侯氏は党内の中国寄りとされる勢力と距離を置いてきたこともあり、中間派の取り込みが期待されています。
「対話と交流を通じて地域の安定を見つけたい」として、中国との対話を重視する姿勢です。
▼民衆党の柯氏は、「国民党は中国に従順で戦いをおそれ、民進党は中国と交流せず戦いを求めている」として、2大政党の対中政策を批判しています。
防衛力の強化を訴える一方、中国との公式な交流の再開も必要だと主張しています。
各候補とも、中国に対する姿勢は異なりますが、「現状維持」という点では、程度の差はありながらも、おおむね共通しているといえそうです。
では、中国側は今回の選挙をどのように見ているのでしょうか。
習近平政権は「平和的統一」に向けた環境を整えるためにも、「1つの中国」を認めてこなかった民進党政権の継続は何としても阻止したい考えです。
これまで対話を重ねてきた国民党に肩入れすることで政権交代を促したいのが本音です。
こうした背景もあり、中国による選挙への介入が懸念されています。
例えば、野党候補が一本化に向けていったんは合意したことや、無所属で立候補する資格を得ていた郭台銘氏が最終盤で立候補を見送った背景には、与党以外の候補者が票を奪い合う状況は望ましくないと考えた中国の働きかけや圧力があったのではないかという見方が根強くあります。
台湾の世論に対する揺さぶりも続いています。
野党の候補一本化が決裂したのをうけて、中国政府は直ちに「台湾は平和と戦争の選択に直面している」という談話を出しました。
民進党政権が続けば、中台間の緊張が高まることは避けられないというけん制です。
11月に行われたアメリカのバイデン大統領との会談でも、習国家主席は、「中国はいずれ統一するだろうし、必ず統一する」と強調しました。
これまでも「決して武力行使を放棄しない」と明言してきただけに、改めて強い意志を示した形です。
サイバー攻撃や偽情報の拡散も懸念されています。
ただ前回2020年の総統選挙では、その前の年に香港の抗議活動を力でおさえこんだことなどから、台湾でも危機感が強まり、蔡総統再選の追い風になったという苦い経験があります。
中国が硬軟織り交ぜながら、どのように選挙に介入しようとするのか、注意深く見ていく必要があります。
また、アメリカも、ウクライナや中東も加えた「3正面」で対応を迫られる事態は避けたいだけに、選挙の行方に神経を尖らせているとみられます。
では、最後に選挙戦のポイントをみていきます。
実は、台湾では選挙戦の最終盤によく起きる特徴的な投票行動があります。
例えば、与党の支持率が1位でもリードが小さく、野党が2位と3位の場合、3位の候補者を捨てて、2位の候補者に乗りかえ、票を集めることで、逆転勝ちをさせるというものです。
かつて、2000年の総統選挙でも、こうした行動が起きたという分析があります。
民進党政権の長期化や相次ぐ汚職などへの不満から政権交代を望む雰囲気も漂い始める中、こうした声が反映されるかどうか予断を許しません。
また、総統選挙と同じ日に行われる議会、立法院の選挙も重要です。
総統選挙で勝利した政党が、立法院でも過半数の議席を獲得し、安定を確保できるのか。
経済など生活に密着した課題への対応についても、有権者の理解がどれだけ得られるかが鍵となります。
日本も含めた東アジア情勢にも直結する台湾の総統選挙。
その行方に目が離せない状況が続くことになります。
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