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建国100年 トルコがめざすもの/出川展恒・nhk
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投稿者 仁王像 日時 2023 年 11 月 02 日 06:38:31: jdZgmZ21Prm8E kG2JpJGc
 

建国100年 トルコがめざすもの/出川展恒・nhk
2023年10月31日 (火)
出川 展恒 解説委員
https://www.nhk.or.jp/kaisetsu-blog/100/489142.html

■イスラエルによるガザ地区への攻撃や、ウクライナでの戦争など、近隣諸国の情勢が緊迫する中、トルコは、29日、建国100年を迎えました。アジア、ヨーロッパ、そして、中東の連結点に位置するイスラム教徒の国トルコが、今後、何を目指すのかを考えます。

■建国100年の記念式典の演説で、エルドアン大統領は、国のさらなる発展を誓うとともに、次のように述べて、イスラエルの軍事攻撃にさらされているパレスチナの人々に寄り添う姿勢を鮮明にしました。

【エルドアン大統領】
「抑圧されて支援を必要としている人のもとに駆けつけ、その手を握り、痛みを癒やすのがトルコであり、私たちトルコ国民だ」。

エルドアン大統領は、前日の28日には、パレスチナへの連帯を示す市民集会で演説し、「ガザ地区で起きているのは大虐殺であり、イスラエルによる戦争犯罪だ」と述べて、イスラエルの対応を厳しく批判しました。これに対し、イスラエルのネタニヤフ政権は激怒し、トルコに駐在する外交団を引きあげ、外交関係を見直す考えです。
トルコとイスラエルは、2010年以降、今回同様、パレスチナ問題・ガザ地区への攻撃をめぐって対立してきましたが、去年、関係正常化で合意したばかりでした。
エルドアン大統領が、修復した外交関係をあえて壊すような発言をした背景には、「弱者であり、守るべき対象である子どもや女性に危害を与える行為は決して許さない」という、イスラム教の倫理に基づいた自らの信念があるのだと思います。
エルドアン大統領は、敬虔なイスラム教徒で、20年前、イスラム政党である「公正発展党」を率い、政権の座につきました。以来、イスラムの教えと、国の大原則である「世俗主義」との間でどう折り合いをつけるか、苦心してきました。

■トルコの前身は、「オスマン帝国」です。イスラム法による統治が600年以上続き、中東、北アフリカ、東ヨーロッパにわたる広大な領土を支配しましたが、第1次世界大戦で敗北し、ヨーロッパの列強によって領土を分割され、国家滅亡の危機に直面しました。軍人で、のちに初代大統領となるムスタファ・ケマル・アタチュルクの指導のもと、独立戦争に勝利し、1923年10月29日、「トルコ共和国」の建国が宣言されました。
「建国の父」アタチュルクは、オスマン帝国が崩壊した反省から、ヨーロッパ型の国づくりを目標に据え、「世俗主義」、および、「領土と国民の不可分の一体性」を国の大原則と定めました。憲法に明記し、改正することのできない絶対的な国是としたのです。

■このうち、「世俗主義」は、宗教が政治に関わることはもちろん、宗教が公の場に入ることを禁止する極めて徹底した考え方です。たとえば、敬虔なイスラム教徒の女性が、職場や学校で、スカーフで髪を覆い隠すことさえ、認められませんでした。
そして、軍と司法府がこの「世俗主義」を守ってきました。イスラム政党が政権を握るなどして、「世俗主義」が危ういと判断した場合に、軍がクーデターを起こし権力を奪うということが、これまでに3回起き、トルコの民主主義は混乱しました。

エルドアン政権は、公正発展党が摘発の対象とならないよう、「世俗主義」の大原則は守りつつ、イスラム教徒が自らの信仰を表現できるよう改革を進めました。最も典型的な例は、敬虔なイスラム教徒の女性が、公の場でも、スカーフなどを着用できる権利です。着用の禁止を主張する司法府との激しい攻防を経て、今から10年前(2013年)、一部の例外を除いて、着用が認められました。イスラムの信仰を重んじる保守層など民意を背景に、少しずつイスラム色を出してゆくことに成功したのです。

■次に、EU=ヨーロッパ連合への加盟問題です。
ヨーロッパ型の国づくりを進めるトルコは、EU加盟を悲願としてきました。その中で問題として浮上したのが、人口の2割弱を占める少数民族クルド人の存在、そして、「領土と国民の不可分の一体性」という、もう一つの国の大原則です。これは、国土が分割される事態を二度と起こさないという決意に基づくものです。
1990年代までは、「国民すべてがトルコ人」だとして、クルド民族の存在じたいを否定しました。クルド語の使用も禁止され、厳しい取り締まりの対象となりました。これに対し、トルコからの分離独立を掲げるクルド人の武装組織「PKK=クルド労働者党」が、テロや襲撃事件をくり返し、軍や治安部隊との間で激しい戦闘を繰り広げました。多くのクルド人が国外に流出し、PKKの指導者は、海外で身柄を拘束され、トルコで死刑判決を受けました。
トルコ政府は、EU加盟の条件を満たす努力を重ねました。死刑制度を廃止し、PKKの指導者に対する刑の執行も停止しました。さらに、クルド語の使用や、クルド人の政党の活動も認めました。いずれも、基本政策の大きな転換でしたが、EU加盟国の多くは、イスラム教徒の国トルコを異質なものととらえ、また、自らに権力を集中させたエルドアン大統領の強権的な政治手法や反対派への弾圧を問題視しました。トルコのEU加盟の見通しは立っておらず、棚上げとなっています。

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■EUへの加盟が閉ざされている中で、エルドアン政権は、「全方位」の外交姿勢を鮮明にしています。もともと、欧米の軍事同盟であるNATO=北大西洋条約機構に加盟し、イスラム諸国でつくるOIC=イスラム協力機構にも加盟するなど、さまざまな機構やグループに属してきましたが、陣営にはこだわらず、どの相手にも門戸を開き、実利をとる外交を進めようとしています。

それを端的に表しているのが、ウクライナ情勢への対応です。エルドアン大統領は、ロシアのプーチン大統領とも、ウクライナのゼレンスキー大統領とも直接対話できる関係を築いてきました。両国とも、黒海を挟む隣国で、経済と安全保障の両面で重要な関係にあり、これまで両国の停戦に向けた協議や、農産物の輸出再開の仲介にあたってきました。今後も、可能な限り、首脳どうしの対話や交渉を続ける考えと見られます。
トルコにとってロシアは、天然ガスや小麦の最大の輸入元で、多額の観光収入も得ています。ロシアのウクライナ侵攻には、反対する姿勢を示していますが、欧米各国によるロシアへの制裁には参加していません。

ウクライナ情勢に関連して、エルドアン大統領は、NATOへの加盟を申請した北欧のスウェーデンに対し、PKKへの支援をやめない限り、加盟を認めないと主張してきました。ところが7月、スウェーデンの対応に改善が見られたとして、一転して加盟を認める考えを表明。先週(23日)、議会に批准を求める法案を提出しました。

■一方で、アメリカやヨーロッパ諸国とは、ぎくしゃくした関係が続いています。NATOと対立するロシアから、地対空ミサイルシステムS−400を導入したことや、トルコ国内の人権問題をめぐって、批判を受けているためです。

■建国100年をトルコのリーダーとして迎えたエルドアン大統領が、今後目指しているものは、何でしょうか。現在、パレスチナのガザ地区で起きている戦闘で、強い怒りのメッセージを発していることからも窺えるように、イスラムの価値観を判断の柱にして、イスラム世界における精神的なリーダーを目指しているのではないか。そのように感じられます。
長年にわたってトルコと深い友好関係を築いてきた日本としては、この国が、国際社会の期待に応えるかたちで、民主国家として発展して行けるよう、ともに歩んでゆく姿勢が大切だと考えます。  

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