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混迷アメリカ政治とバイデン再選への不安/橋祐介・nhk
2023年10月04日 (水)
橋 祐介 解説委員
https://www.nhk.or.jp/kaisetsu-blog/100/488237.html
アメリカの新年度予算案をめぐる野党・共和党の内紛で、マッカーシー下院議長が解任されました。議会の混迷が、バイデン大統領の政権運営にも暗い影を落としています。来年の大統領選挙でバイデン氏とトランプ氏が再対決したら、どちらが勝つか?バイデン氏の再選をめざす与党・民主党には、不安も広がっています。現状を分析し、今後を探ります。
【下院議長の解任動議可決 10月3日/ワシントン】
解任動議が可決され、就任10か月足らずで任を解かれたマッカーシー前下院議長。史上初の議長解任に賛成したのは、民主党の出席議員208人全員と、8人の共和党議員でした。
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議会下院は、共和党が多数派を占めています。しかし、共和党の保守強硬派グループ「フリーダム・コーカス」に所属する多くても40人以下とみられる議員らの一部は、指導部の方針にたびたび従わず、民主党との議席数の差が僅かなため、少人数でもキャスティング・ボートを握ってきました。
なぜ8人は同じ共和党の議長解任に賛成したのか?動議を提出した強硬派議員は、マッカーシー氏が、▽新年度予算案の審議で、議長選出の際に約束した大幅な歳出削減に動かず、▽当面のつなぎ予算を可決して、民主党に譲歩したからだと説明します。
前議長は、政府閉鎖を回避するため、民主党と協力し、つなぎ予算の可決に漕ぎつけたばかりでしたが、民主党は、議長の解任には“助け舟”を出しませんでした。
後任の議長選出は難航も予想され、議会は混迷を深め、機能不全を露呈しています。
強硬派議員らの多くは、共和党の大統領候補選びでトランプ氏を支持しています。ただ、今回の議長解任に、トランプ氏は明確な立場を示しませんでした。トランプ氏はSNSで、「共和党は内部抗争よりも民主党との対決に力を注ぐよう」呼びかけています。
9月下旬に公表された世論調査が民主党関係者に衝撃を走らせました。もし大統領選挙にきょう投票するとしたら、どちらを選ぶかをたずねたところ、トランプ氏が51%に対して、バイデン氏は42%にとどまり、9ポイント差で引き離されていると言うのです。
有力紙ワシントンポストは、ほかの調査で両者の支持率が拮抗しているとの理由から、「データの異常値のようだ」と分析し、ABCテレビも「質問の順番で先だって経済の現状評価などをたずねたことで、現職が不利になったかも知れない」という見方を伝えました。
両党の大統領候補が正式に決まっていない段階で、こうした架空の対決を想定して優劣を探る調査は“マッチアップ”と呼ばれます。実際の投票日はまだ13か月以上も先ですし、長丁場の選挙戦では、いわば瞬間風速の参考値に過ぎないと見るのがアナリストの通例です。
ところが、両者の“マッチアップ”について、主な世論調査の平均値を見てみると、トランプ氏は、4回目に起訴された8月半ば以降、支持率が顕著に上昇したのに対し、バイデン氏は下降し、9月の時点で逆転されています。
バイデン氏の再選に“黄色信号”が灯ったかたちです。もともと熱狂的な支持者が少なく、前回はトランプ氏の再選を阻止するため、いわば消極的な理由から支持を集めたとも言われるバイデン氏。だからこそ民主党陣営は、この逆転に危機感を募らせているのです。
【バイデン大統領がUAWスト参加 9月26日/ミシガン州】
階段を踏み外さないよう「エアフォースワン」から短い方のタラップを使って、激戦州のミシガンに降り立ったバイデン氏。現職の大統領としては初めて、全米自動車労働組合のストライキに参加したのは、みずからの重要な支持基盤をトランプ氏に奪われまいとするためでした。
いまバイデン大統領は、多くの難題が重なり、さながら“複合危機”に直面しています。
▼UAW=全米自動車労組のスト突入から3週間目になりましたが、労使交渉はまとまらず、経済への影響が心配されています。大幅な賃上げを求める組合側には、物価高騰への不満、バイデン政権が後押しするガソリン車から電気自動車への生産移行に不安もあるようです。
▼議会下院は、次男のハンター・バイデン氏のビジネスをめぐり、大統領の弾劾に向けた調査を開始。大統領は不正への関与を全面的に否定していますが、共和党は「大統領は説明責任を果たすべきだ」と追及しています。
▼上院では、民主党のメネンデス氏が、収賄の罪で起訴され、外交委員長を辞任。しかし、無罪を主張して議員辞職は拒み、来年の議席改選を前に、民主党は対応に苦慮しています。
▼そして今回の下院議長の解任で、予算案をめぐる審議紛糾が長引けば、ウクライナへの追加支援も停止を余儀なくされそうです。
大統領選挙の前年に、党派対立が激化し、現職が失速したことは過去にもありました。2011年、再選をめざしていた当時のオバマ大統領は、就任以来最低の支持率40%を記録しています。いまのバイデン大統領も、平均支持率が40%台前半で、ほぼ同じ水準です。
これから再選キャンペーンを本格化すれば、オバマ氏のように、きっと挽回できるはず。そうした楽観的な見方も民主党内の一部にあります。
しかし、高齢不安は、ひとたび懸念を抱かれたら、大きな改善が見込めません。
こちらの世論調査では、2期目の大統領として、バイデン氏の心身の健康状態に、多かれ少なかれ懸念を抱いている人は、合わせて86%に上っています。
バイデン氏より3年7か月若いトランプ氏は、合わせて60%でした。
民主党は、こうした懸念がありながら、11月20日で81歳になるバイデン氏の再選をめざし続けるでしょうか?
大統領にもしもの時、後継になるのは、ハリス副大統領(58)です。しかし、ハリス氏の支持率は、バイデン氏よりも低迷し“目立った実績に乏しい”という厳しい評価が大勢を占めています。
いま民主党内で次世代リーダーのひとりと目され、人気が高いのは、カリフォルニア州のニューサム知事(55)です。バイデン氏と同じアイルランド系のカトリック。少年時代の学習障害を乗り越えて、サンフランシスコ市長や州の副知事を歴任。不倫スキャンダルもありましたが、歯切れの良い弁舌と風貌で、全米に知名度を高めています。
来月テレビ局の主催で共和党のデサンティス・フロリダ州知事(45)と討論対決も予定されています。
しかし、ニューサム氏は、バイデン氏が再選を求める以上、自分は大統領選挙には立候補しないと言います。現職の大統領に党内から有力な挑戦者が出てきたら、支持層が割れて、本選挙で敗北したケースが多いからでしょう。
バイデン氏がみずから立候補を取り下げない限り、民主党には“プランB”がないのです。
では、2大政党以外から、“第3の候補”が出てきたら、どうなるか?
こちらは、自由を重んじる「リバタリアン党」、超党派を標ぼうする「ノーレーベルズ」、環境政党の「緑の党」からも、それぞれ立候補を想定した“マッチアップ”です。
バイデン氏は、トランプ氏よりも多くの支持層を“第3の候補”に奪われ、劣勢に立たされる可能性が高いという結果が示唆されました。
いま民主党で独自の戦いを進めるロバート・ケネディ・ジュニア氏も、無所属転出を模索していると伝えられ、波乱要因はさらに増えそうです。
民主党の大統領候補選びは、4か月後の来年2月から始まります。現職に代わる“本命候補”の差し替えは、党内に混乱を広げるリスクもあり、もう時間切れギリギリかも知れません。バイデン大統領は、民主党内に不安を抱えたまま、選挙戦に突入する可能性が高そうです。
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