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2024年9月19日 12時00分
https://www.tokyo-np.co.jp/article/354842
JR赤羽駅から西へ徒歩20分。マンモス団地の中にあり、昭和の趣を残す桐ケ丘中央商店街(北区)の一角に、3姉妹が3代目として切り盛りする「三益(みます)酒店」がある。周囲にはシャッターを閉じた店もある中、店頭で立ち飲みする「角打ち」や利き酒会などを通じてファンを増やし、地域とのつながりも深めている。
◆明るい雰囲気、一緒に飲んだら皆知り合い
カウンターに日本酒や焼酎のボトルが並ぶ。10人入れば満員になるこぢんまりとした角打ち「三益の隣」は酒とつまみの香り、そしてにぎわいに満ちていた。
「ここはスーパーで売っていないお酒が飲める」。北区の自営業、上松良憲さん(52)は品ぞろえの良さにひかれ、5年ほど通っている。一緒にわいわい酌み交わすうち、皆知り合いに。ほろ酔いで帰途につく客に、翌日が店の定休日でも「また明日!」と声が飛ぶ明るい雰囲気がリピーターを呼んでいる。
三益酒店を切り盛りする3姉妹は、長女で社長の小池美保さん(39)、次女で蔵元への営業や店舗管理担当の佐藤由美さん(37)、角打ちの料理を担う大島美香さん(29)。売り場に日本酒と焼酎を中心に500種類をそろえ、コロナ禍にもオンラインを通じて新たなファンを獲得してきた。「ブランド力のある酒店にしたい」という美保さんの思いからだ。
◆「三益祭」には300人が集まる
店は1948年創業。先々代にあたる姉妹の祖父は、戦後間もない時期に、地域の住民が食料品などを安く購入できる環境を整えた。時代が変わってスーパーなどで気軽に買えるようになると、2代目の父東海林孝生さん(75)は各地の地酒を扱うようになり、仕入れ先を開拓した。美保さんは店で働く中で「親の代で終わらせるのはもったいない」と思いをふくらませ、2016年に後を継いだ。
蔵元と顧客をつなぐイベントを開いたり、姉妹が選んだ酒とつまみのセットを毎月配送したり。SNS(交流サイト)も活用して販路を拡大し、売り上げは美保さんの社長就任前の約2.5倍に伸びたという。7月には常連客らが集う「三益祭」を開催。女性の蔵元を招いた試飲会やグラスの販売などを行い、約300人が集まった。
◆高齢化が進む団地の活性化にも
地元との縁も大切にしている。商店街のある「桐ケ丘団地」は高度経済成長期に建てられ、住民の高齢化が進む。美保さんらは住民向けに利き酒会を開いたほか、地域の音楽祭の実行委員長を務めた。子ども食堂の運営にも関わる。
「それぞれの時代に看板を守ってきた大変さがあって、今がある。次の世代に引き継ぐ日まで看板を磨いていたい」と美保さん。由美さんは「お客さんに蔵元の酒造りの様子を伝えるのがやりがい」と語り、美香さんは季節に合った酒やつまみを選びながら「お客さんの喜ぶ顔を思い描いている」。3人の夫たちも店で働く。そんな店の熱気が、街のエネルギーにつながるかもしれない。
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◆文と写真・鈴木里奈
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