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2023年11月22日 06時38分
https://www.tokyo-np.co.jp/article/291501?rct=editorial
新たな経済対策の財源となる2023年度補正予算案の国会審議が始まった。最大の論点は、対策が物価高に苦しむ暮らしの支援に資するかどうかだが、対策の目玉である減税は、即効性に疑問が残る。より効果的な対策に向け大幅修正もためらってはならない。
内閣府が発表した今年7〜9月期の国内総生産(GDP)速報値は3四半期ぶりにマイナス成長となった。物価高騰の影響でGDP全体の5割超を占める個人消費が低迷したのが原因で、食料品や燃料費の値上がりに苦悩する家計の実態がうかがえる。
その一方、自動車関連、商社、旅行、小売りなどの大手企業は23年度に入り軒並み好決算を記録している。円安の強烈な追い風が輸出事業やインバウンド(訪日客)関連事業の利益を大幅に押し上げ好決算につながった。
家計や中小企業が物価高の犠牲となる一方、一部大企業のみが潤う構図だ。いびつな状況の改善が経済対策の目的のはずだが、的を射た内容とはとても言えない。
目玉である所得税・住民税の減税が実施されるのは来年6月以降で、事務作業によっては大きくずれ込む可能性もある。
消費の刺激や家計を支援するための減税は即効性が最優先されるべきであり、この減税時期の設定は理解に苦しむ。
総額約13兆1992億円の補正予算の財源は67%の約8兆8千億円を国債で賄う。減税財源は今回の補正の枠外であり24年度に国債増発で財源を捻出する見通しだ。税収の増収分の還元が国債増発にいつの間にかすり替えられた。
「大胆な金融政策」と「機動的な財政出動」を柱とする故安倍晋三首相主導の経済政策「アベノミクス」は今も踏襲される。
一部に恩恵をもたらしたが、過度な円安とエネルギー高騰、物価高を招き、家計が苦しさを増す元凶だ。総務省調査では、消費に占める食費の割合を示すエンゲル係数は1〜9月に月平均26%を超え、比較可能な00年以降の平均を上回った。日銀による銀行経由の国債引き受けも野放図な財政出動を招くなど、アベノミクスの弊害は鮮明になっている。
岸田文雄首相はアベノミクスとの決別を決断すべきだ。国民の暮らしや財政規律を犠牲にして一部の大企業が潤う、いびつな経済政策に終止符を打たねばならない。
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