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2023年8月30日 17時00分
https://www.tokyo-np.co.jp/article/273656?rct=tokuhou
百貨店そごう・西武の米投資ファンドへの売却計画に反発する従業員の労働組合が、31日から行使すると通知したストライキ権。記者会見に、高島屋など他の百貨店の労組も同席する異例の展開となった。業界挙げてのストは欧州では珍しくないというが、日本で根付かないのはなぜなのか。今回の事態を、消費者はどう受け止めるべきなのか。(西田直晃、山田祐一郎)
◆企業の枠を越えた「連帯」表明
「深刻異例の事態。こういうときにこそ、そごう・西武を孤立させない」
28日、都内で開いた記者会見で、全高島屋労働組合連合会の西嶋秀樹会長が語った。そごう・西武労組のほか、三越伊勢丹など五つの労組の代表が登壇し、共闘をアピールした。
ストを通告したそごう・西武労組には、これまでに業界内の13組合が支援を表明した。1月には「健全な労使協議」を求める要請書をセブン&アイ・ホールディングスと、米投資ファンドのフォートレス・インベストメント・グループに提出。さらに、そごう・西武従業員有志による「池袋本店を守る署名」集めに協力し、5月に約1万4400筆を豊島区役所に届けた。
「こちら特報部」の取材に、西嶋氏は「西武池袋本店は年間売上額が全国でも3本の指に入る屈指の規模。計画通りに家電量販店が入居すれば、百貨店の世界観ががらりと変わってしまう。人ごとではない」と強調。三越伊勢丹グループ労組の菊池史和本部執行委員長も「営業上は競合他社でも、労組として協力してきた。店舗が今後の営業をやめる際など、近隣の事業者に再就職のあっせん、雇用対応をお願いするケースはこれまでにもあった」と語る。
◆厳しい時代が続く百貨店業界
近年、百貨店業界は低迷にあえいでいる。日本百貨店協会によると、年間売上高はピークの1991年の9.7兆円から減り続け、昨年は4.9兆円とほぼ半減した。店舗数もピークの99年の311店から、昨年は4割減の185店となっている。西嶋氏は「コロナ禍での休業要請や営業縮小で過去にない痛手を受けた。駅の再開発などで、私鉄系百貨店も営業形態変更を余儀なくされた」と説明し、「危機の中で組合のつながりが強まった」と続ける。
西武百貨店を中心とした旧セゾングループの労組有志を代表する形で、クレディセゾン労組も署名活動などで側面支援を担ってきた。業界を横断する、こうしたサポートに対し、そごう・西武労組側は「心強くありがたいこと。感謝しかない」と歓迎している。
◆どの会社も『明日はわが身』
かつては高島屋などの大手百貨店でもストが行われていたが、今回西武池袋本店が突入すれば、職員の賃金闘争が折り合わなかった62年の阪神百貨店(当時)以来となる。セブン&アイは「(そごう・西武の)譲渡の一日も早い実現こそが、雇用維持及び事業継続に最も資する。ストライキが実施されれば、関係各位に迷惑をかけ、大変申し訳ない。今後も組合との団体交渉と協議を継続する」とコメントしている。
経済ジャーナリストの荻原博子氏は「百貨店はネット通販に客を奪われ、業界は斜陽を迎えている。従業員にとっては過剰な労働を強いられたり、身売りによるリストラを迫られたりする不安が大きい。先が全く見えない状況だ」と指摘。「どの会社にも『明日はわが身』という思いがある。1社では太刀打ちできず、再雇用確保のためには積極的に団結するしかない」
◆欧州では産業別労組で「同一労働同一賃金」
業界挙げての労働運動が定着しているのが欧州だ。
龍谷大の脇田滋名誉教授(労働法)は「多くの国で、産業別に組織された労組が使用者団体と交渉し、労働協約を結ぶ。労組は産業全体の労働者を代表しており、企業別の組織は支部という位置付けだ」と説明する。
「労働条件のほとんどが産業別全国協約で決まっている。職種や勤続年数などによって労働者をランク分けして仕事別の条件を決めるのが共通した特徴だ」。欧州連合(EU)はこれを根拠に、雇用身分による差別を禁じて「同一労働同一賃金」を徹底しているという。
これらを背景に、欧州ではストが労働争議の手法として広く使われている。「特にイタリアやフランス、スペインではストは個人の権利と理解されている」と脇田氏。「組合員は、多くの労働者のために協約改善の先頭に立って使用者と対峙たいじし、交渉する活動家。労働者は、自身の労働環境改善に直接つながるため、組合員でなくてもストに参加する。労働協約が更新される2、3年ごとにストの波が来る」と説明する。
各国で組合員数は1970年代にピークを迎え、減少傾向にあるが、この数年、イタリアやスペインでは再び増加傾向が見られるという。ドイツでは産業別労組が機能しており、労働政策研究・研修機構によると、労働争議の件数が2010年の約130件から20年は1200件余に増加。「産業別労組は、ある企業で整理解雇が進められる場合、その企業との闘争のために、全体で組織的・金銭的な支援を集中して対抗できる構造的な強みがある」と脇田氏は指摘する。
◆「多くの消費者は、同時に労働者でもある」
これに対し、日本では企業別労組が個別に交渉を行ってきた。加えて、同じ職場の労働者でも企業労組は正社員が中心で、契約社員やパート、派遣労働者などの非正規雇用者と分断がある。
ネットでは、今回のスト権行使通知に対し「労働者の当然の権利」「労働者と企業との力関係が変化するきっかけに」などと評価する声がある一方、「お客を人質に取り、要求を通す暴力的手法」「自分で自分の首を絞めてる」「迷惑」と批判する投稿も見られる。
実際、かつてはストで交通機関がまひするなど、利用者に大きな影響を与えることもあった。「企業別で1社だけがストで労働条件の改善を勝ち取っても、他社への波及効果が薄いため、迷惑行為と映ってしまう」とジャーナリストの竹信三恵子氏は話す。
今回、他の百貨店労組が支援を表明したことが、今後、業界全体で闘う仕組みへと広がっていくのか。「広がらなければ労働条件の改善がかなり難しくなってくる。ネット通販など購買行動が激変する中で、産業の構造転換の影響を大きく受けているのが百貨店業界。業界全体で危機感があるのだろう」
法政大の上西充子教授(労働問題)は「ストをなぜやるのか、広く知ってもらうため、今回の件に注目している」と消費者や顧客側の理解の重要性を説く。「働く人が疲弊していくとどうなるか。多くの消費者は、同時に労働者でもある。働く人がいて、初めてサービスを使えるという想像力を持つべきだ」
ストの判断を迫られるケースは他の企業でも起こり得る。労働者全体にかかわる問題でもあるとして、こう強調する。「日本の企業別労組の活動で目立つのは春闘の賃上げくらい。だが、交渉力を持ち続ける必要がある。非常事態でなければ表立って声を上げる必要はないのかもしれないが、今回の事案は他の労組がどう備えるか考える事例になる」
◆デスクメモ
交通機関がよくストをしていたころ、通勤で苦労する家族の姿を覚えている。大変だなあと思ったが、労働者の権利だからしょうがないよねという雰囲気が世間にはあった。働く者より企業の立場が圧倒的に強いのは今も同じ。分断の時代だからなおさら、連帯することが必要なのか。(本)
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