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やっぱり今は金融危機への「黄信号」が灯っている ハーバード大学の「バブル研究第一人者」が警告/東洋経済オンライン
小幡 績 の意見
https://www.msn.com/ja-jp/news/opinion/%E3%82%84%E3%81%A3%E3%81%B1%E3%82%8A%E4%BB%8A%E3%81%AF%E9%87%91%E8%9E%8D%E5%8D%B1%E6%A9%9F%E3%81%B8%E3%81%AE-%E9%BB%84%E4%BF%A1%E5%8F%B7-%E3%81%8C%E7%81%AF%E3%81%A3%E3%81%A6%E3%81%84%E3%82%8B-%E3%83%8F%E3%83%BC%E3%83%90%E3%83%BC%E3%83%89%E5%A4%A7%E5%AD%A6%E3%81%AE-%E3%83%90%E3%83%96%E3%83%AB%E7%A0%94%E7%A9%B6%E7%AC%AC%E4%B8%80%E4%BA%BA%E8%80%85-%E3%81%8C%E8%AD%A6%E5%91%8A/ar-AA1fsS8H?ocid=msedgdhp&pc=U531&cvid=b706a13cf0d242a893e8127782d903b3&ei=7
日本でもアメリカでも、バブル崩壊、金融危機のリスクが高まっている。「オバタがバブル崩壊と言うのはいつものことだ」と思われるだろうが、実はハーバードビジネススクールの分析からも、警鐘が鳴らされているのだ。今回はそれを解説しよう。
バブル研究の第一人者来日、「バブル崩壊・金融危機」警告
同スクールには「行動ファイナンス・金融安定化プロジェクト」というものがある。そこのリーダーであるロビン・グリーンウッド教授らの研究では、バブル崩壊・金融危機へイエローカードが出ているのだ。
ちなみに、グリーンウッド教授は世界のバブル研究の第一人者で、博士号の指導教員は同大学のアンドレ・シュライファー教授だ(論文の引用数ではマサチューセッツ工科大学のダロン・アセモグル教授と世界で双璧)。実は、シュライファー教授は私の師匠であり、グリーンウッド教授はいわば私の「弟弟子(おとうとでし)」に当たる。
ンウッド教授と「兄弟子」たる私との実力差は歴然としている。メジャーリーグ、ロサンゼルス・エンゼルスの大谷翔平選手とチームメイトであるマイク・トラウト選手のような関係ではなく、超スーパースターと日本のプロ野球の2軍選手ぐらいの差がありそうだ。
それはさておき、グリーンウッド教授は慶應義塾大学ビジネススクールでの授業のために7月に来日、バブルと金融危機についての講演を行ったのである。
講演後の質疑応答の中で「日本とアメリカの今の金融市場の状態はどうか」と問われたグリーンウッド教授は、「レッドゾーンには入っていないが、いわばイエローゾーンだ」と答えたのである。講演の要約は上記リンクをクリックしてぜひ参照してほしいが、ポイントを示そう。
伝統的な現代ファイナンス理論では、代表的なノーベル賞経済学者でシカゴ大学のユージン・ファーマ教授が「バブルは存在しない」と言い放つ。
彼だけでなく、正統派とこれまで呼ばれてきた経済学者たちの考え方は、@バブルは存在しない、A存在するとしても例外的であり考慮する必要がない、Bバブルが存在し現実に大きな影響を与えるとしても、事前に予想・判断することはできないから、経済学者も政策担当者もバブルは崩壊後、事後的に処理するしかない、のいずれかに整理できる。
つまり、@〜Bの順にバブルの存在の認め方に濃淡(ここでは「淡濃」だが)はあるものの、いずれの見方においても「バブルなんてものは学問や政策のターゲットの外だ」と捉えている。
バブルは明らかに存在、大幅上昇後の株価は暴落
これに、グリーンウッド教授らは異を唱える(バブルを研究している行動ファイナンスの学者はほぼ全員そうだが)。例えば「バブルは事前に予測できる」ということを示したのが、「ファーマに捧げるバブル」(“Bubbles for Fama”)という2019年の論文である。
1926年から2014年のアメリカにおける産業ごとの株価のリターンを見たときに、2年で倍以上になった場合、その後の2年でどうなったか見てみると、約半数以上の場合で、クラッシュ(40%以上の下落)が起きていることを示した。
2倍あがって40%落ちるとは株価は上がったままではないか、と思うかもしれないが、1万円だった株価が2万円になって、その後1万2000円になるということである。しかし、これはクラッシュの定義をそう設けただけで実際には、そのクラッシュの場合の平均下落率は53%である。
つまりトータルで下がっている、ということである。クラッシュしなかった場合も含めたすべてのケースの平均をとっても、その後の2年で10%下落している。そして、下落のピークをとると、クラッシュした場合はマイナス60%であり、クラッシュしなかった場合も含めた全体でも40%下落している。
要は、どう見てもバブルは存在するし、大きく株価が上がった場合は暴落することが多いのである。さらに、クラッシュした場合ではどんな特徴があったか統計的に分析すると、ボラティリティー(変動率)の上昇率が高く、新株発行額が多く、時価簿価比率が割高で、そして加速度が大きい(価格の上昇率が加速している)ことがわかった。つまり、このような特徴が見られる株価の大幅上昇では、その後クラッシュが起こる可能性が高いと予測できるのである。
私の解釈を加えれば、これは明らかに世の中にバブルは存在するし、そしてそのバブルは予測できる。さらに、バブルが膨張しているときに、それがバブルだと崩壊する前からわかっているのである。
グリーンウッド教授らは「われわれがバブルの特徴を発見したのではない。それはこれまでの多くの研究者が指摘してきたことであり、われわれは、それらを客観的なデータで、現代の統計的手法で、歴史的事実を分析し示しただけである」と述べている。
すなわち、ファーマ教授をはじめとする現代ファイナンスの研究者たちは、自分たちの主張である「金融市場は効率的であり、合理的だ」ということを説いて回り、これまでバブルがあるとか予測できるといっている人々の主張には根拠がないと自慢げに主張してきた。
だが、それは間違いであり、古くからバブルを研究してきた多くの研究者たち(経済史家のチャールズ・キンドルバーガー氏や、ファーマ教授と同じ年にノーベル経済学賞を取ったイェール大学のロバート・シラー教授など)の主張がやはり正しい、ということを示したのである。
グリーンウッド教授は、この研究の示唆として、ビットコインの例もこれによく当てはまると述べている。取引量が急増し、ボラテリティーも上昇。なんといっても新規発行ラッシュで、さらに価格上昇の加速度もぴったりだと。私に言わせれば、テスラ株も当てはまるかもしれない。
バブルになっても、価格は平均でさらに5カ月上昇
ただ、その一方で、グリーンウッド教授らは、バブル崩壊のタイミングを予測することは難しいことにも注意を喚起している。彼らが「バブルが起きている」、つまり前出のように2年で2倍以上上昇した後、実際にクラッシュが起きた場合でさえも、バブル認定から平均して5カ月はさらに上昇を続けることがデータから示されているからだ。
これが、現実の株式投資におけるバブルの扱いに悩むところである。バブルであることはわかるが、売るべきか最後にもう一山儲けておくか。ただ、私を含め多くの個人投資家(プロの運用者も)が感じている現実は、グリーンウッド教授らの統計的分析でも、ある意味、裏付けられているのである。
グリーンウッド教授らは、株価バブルの研究からさらに視野を広げ、金融危機が予測できるかどうかについての研究も行った。それが、2021年の「予測できる金融危機」(“Predictable Financial Crises”)という論文である。
これはいわゆる「FED VIEW(フェッドビュー)」、つまり「バブルは事前に判断できない。よって、金融当局はバブルかどうかは判断せずに様子を見て、崩壊したらそのとき金融市場を支えればよい」というアメリカの中央銀行の考え方に異を唱えている。
平たく言えば、「金融当局は警察官ではなく消防士であるべきだ」という考え方に真っ向から対峙する。「金融危機は予測できる。だから、事前に防止する努力をするべきだ。しかし、実際の政策運営では抑制に動くタイミングは難しい。それでも、その適切なタイミングに関する提言を示唆する分析を行う」というわけだ。なんとすばらしい、チャレンジングで使命感にあふれる研究だろうか。
「レッドゾーン」突入なら当局は「バブル抑制」を
彼らは金融危機が起きる可能性が高いことが予測できる状態を「レッドゾーン」と名づけ、第2次大戦後の世界中の金融危機の歴史的なデータの分析から、以下のような場合には、当局はバブル抑制に動くべきだと主張している。
すなわち、直近3年間で、@非金融セクターへの事業融資が急速に膨らんでいて、かつ同時に株価が大幅に上昇している場合、あるいはA家計部門への融資が急速に膨らみ、かつ不動産価格が大幅上昇している場合、そのどちらかである場合には、その後の3年間に40%以上の確率で金融危機に陥る、ということを統計的分析で示したのである。
ここで重要なポイントは、株価上昇や不動産価格の上昇だけではバブルを抑制すべきだとは言えないが(実体経済の技術革新などにより、実質的な経済成長が起きた結果の場合があるから)、それが融資の大幅な増大を伴うときには金融的なバブルである可能性が高く、抑制に動くべきだ、ということである。
われわれからすれば、当たり前のことに聞こえる。だが、大きなチャレンジの研究なのである。なぜなら、政策マーケットでは、前述の「FED VIEW」が主流であるからだ(少なくともリーマンショック前は絶対的優勢であった)。
これは金融市場関係者の意向でもある(できる限りバブル、あるいは株価・不動産価格上昇は続いてほしい、続けるように政策を打ってほしいという願望)し、「マーケットの世論」ではこうした考え方が圧倒的優勢である。
さらに、学問の世界でも、前述のファーマ教授などファイナンス分野の学者だけでなく、正統派マクロ経済学者のほとんどに支持されてきたからである。だが、繰り返すが、グリーンウッド教授らは極めて現代的な統計的な分析結果をもって、前出の経済史家のキンドルバーガー氏や、ハイマン・ミンスキー教授(「金融市場と経済はブームと破裂を繰り返す」という理論で有名。リーマンショック後、リバイバルブームになった)らの見方が正しいことを世の中(そして、とりわけ経済学者たち)に突きつけたのである。
そこで、冒頭の話に戻る。では、現在のアメリカや日本はレッドゾーンに入っているのか。答えは「レッドゾーンには入っていない。その手前である。いわばイエローゾーンであるということが、この研究からの示唆である」と、グリーンウッド教授は質問に答えたのである。
グリーンウッド教授はイエローでも、実はレッド?
ここからは、私の解釈も交えた説明である。なぜレッドゾーンに入らないかというと、リーマンショック後、とくにアメリカや欧州では銀行融資に対する規制が強化され、銀行融資が膨張しにくい環境になっているからである。
リーマンショック時には、いわゆるサブプライムやそれ以外の「リスクテイクバブル」(これは私の造語だが)で見られたように、シャドーバンキング(影の銀行、伝統的な銀行を介さない金融取引)という当局の監視外の分野が広がり、そこでマネーが膨張した。それが世界的な金融危機という結末となったのである。
では、今はどうか。民間セクターの融資の膨張には歯止めがかかっている。その代わり、いやそれ以上に、いや制限なく、公的部門でマネーが膨張しているのである。リーマンショックの処理を肩代わりした世界中での量的緩和および政府の財政出動により、マネーは世界にあふれ、そのリスクをすべて公的部門が引き受けた。しかも、コロナショックでそれは再度大膨張した。
グリーンウッド教授らの分析からは枠外となってしまうが、これら公的部門のマネーの膨張も、融資の膨張と同じ意味を経済や金融市場にもたらすと考えられないだろうか。もしそうだとすれば、イエローゾーンではなく、レッドもレッド、まっかっかな赤信号なのではないか(これは120%私の考えで、グリーンウッド教授の見方とは無関係である)。
この場合、消防士のはずの当局が、すでに「レッドカード」を出されているにもかかわらず、その消防士がリーマンショックで民間が自滅して凍りついた金融市場に自ら火をつけて回り、その後、コロナショックで火にさらに油を注いだ状態となっているおそれがある。
この表現が大げさすぎるとしても、今は消防署自体が火事になっていて、火消しをする能力のある主体が存在しないということは動かしがたい事実である。
こういう場合、地球上では、山火事は燃えるものがなくなるまで森が燃え尽きるのを待つしかない。人類の金融市場や経済もそうなるのだろうか。
(本編はここで終了です)
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