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安すぎる「日本の初任給」は最低賃金のたった1.31倍
30年間の平均引き上げ率は、わすか0.63%
東洋経済 2023/04/20号
https://toyokeizai.net/articles/-/666948
「大卒男性の初任給」は日本の停滞を示す象徴だ
前回の記事(データが示す「転職が日本人の給料を上げる」根拠)では、アメリカでは自ら転職する人が極めて多く、それゆえに経営者に強いプレッシャーがかかり、それが給料を引き上げていることをご紹介しました。
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一方、日本の転職率はアメリカの7分の1しかありません(人口の違いは調整済み)。それゆえ、経営者にかかるプレッシャーが弱く、長期にわたって、賃金がまったく上がっていないのです。
今回は、日本の賃金の低迷を雄弁に物語っている驚きのデータをご紹介します。「大卒男性の初任給」の推移です。
「大卒男性の初任給」の推移を見れば、日本でいかに賃金が上がってこなかったかが一目瞭然になります。
日本の初任給の上げ幅は非常に緩やかで、1993年以降、30年間の平均引き上げ率は、わすか0.63%です。具体的な金額では19万300円が、30年後の2022年になっても22万9700円にしかなっていません。
ここ最近になって、初任給を大幅に上げることを発表してニュースになる会社も現れてきましたが、2019年あたりまでの停滞は目を覆うばかりです。インフレとデフレを調整した実質給与で見ても、適切な賃上げができていないという結論は変わりません。
大卒男性の初任給が最低賃金に近づいてきた
この一向に伸びない「大卒男性の初任給」を、日本の最低賃金と比べると、さらに驚きの事実が明らかになります。
日本の最低賃金が世界的に見て異常なまでに安いことは、記事や書籍の中で再三指摘してきたとおりです。しかし第2次安倍政権になってからは、中小企業の利益保護団体である商工会議所の激しい抵抗にあいながらも、最低賃金の引き上げは加速しました。特に2016年以降は、コロナ禍の影響が甚大だった2020年を除き、毎年3%以上引き上げられています。
その結果、最低賃金と時間給に換算した大卒男性の初任給との差が急激に縮小しました。
1978年から1994年まで、大卒男性の初任給は最低賃金の2倍以上でしたが、2019年には過去最低の1.48倍まで低下しています。また、最も高水準の東京の最低賃金と比べると、2019年には全国の大卒男性の初任給は1.31倍にまで低下しました。
つまり、日本では大卒男性ですら、最低賃金の1.31倍程度の給料しかもらえていないのが実態なのです。
高卒男性の初任給の平均と東京の最低賃金を比べると、1978年の1.70倍から1.22倍まで大幅に縮小しています。
最低賃金とは文字どおり「人を雇うのであれば、これ以上の賃金を支払いなさい」という、本当に最低水準を保証するものです。
最低賃金、もしくはそれに近い賃金しかもらえない仕事は、大卒ではなくても、誰にでもできる相対的に付加価値の低い仕事です。つまり働き手を選ばない、だからこそ最低賃金でも働いてくれる人を見つけることが可能なのです。
日本の大卒男性の初任給は、東京の最低賃金の1.31倍程度でしかないと先ほど紹介しましたが、日本の経営者は、大卒男性にはその程度の給料しか払う価値はないとみなしているのでしょうか。
逆に考えると、日本の大卒男性は昔に比べると、大幅に価値が劣化していることを意味しますが、本当にそうでしょうか。
最低賃金に対する倍率がここまで下がると、最低賃金が高すぎるか、大卒の初任給が低すぎるかのいずれかということになります。最低賃金の国際比較からすると、最低賃金の水準が高すぎるという結論は、とても正当化できません。
かつての水準に戻すと大卒31万円、高卒25万円が妥当
大卒男性の初任給を最低賃金の2倍まで戻すとすると、現状の23万円ではなく、31万円が妥当な水準となります。高卒男性もかつての1.70倍に戻すためには、現状の19万円から、25万円にまで引き上げなければなりません。
女性も含めて、若い人は最も消費性向が高く、国の将来を決定する年齢層です。そんな彼らがここまで犠牲にされていることは、本当に情けないです。
ちなみに、ここで大卒男性のデータを使っているのには、もちろん理由があります。データの整合性を担保するためです。
日本では、1990年以降、人口が減っているのに、労働参加率は大幅に向上しています。そのなかで、賃金水準が相対的に低い高齢者や女性の雇用が急増しています。
このように雇用の中身が変化したため、国全体の平均賃金の推移をそのまま分析に使うと、誤った結論になります。つまり、雇用の中身の変化の影響を排除するために、大卒男性の初任給データを使っているのです。
最低賃金というのは、地方自治体ごとに異なる基準で決定されていて、政府が直接決めているわけではありません。しかし、しばらくは上昇圧力がかかり続けることが予想されています。
そうなると、大卒男性の初任給が一層、最低賃金に近づいていくことになります。このまま推移すると、最低賃金の引き上げが、大卒初任給に対する引き上げ圧力になるという、奇妙な事態にもなりかねません。もしそんなことが起これば、あまりに悲しく、そして情けない話です。
「『給料が上がらない会社』はいますぐお辞めなさい」でも指摘したとおり、政府は賃金の引き上げを要求しており、大企業でも中小企業でも内部留保が激増しているのにもかかわらず、経営者は初任給を上げてきませんでした。ここからは「経営者の本質」を読み取ることができます。
政府は最低賃金を引き上げて、企業にも賃上げを求めています。しかし民間企業の経営者は、政府の意図どおりには動いていません。多くの経営者は、給料を増やそうと努力していないように、私の目には映ります。
日本では今後何十年も人口が増えないので、1人ひとりの賃金が上がらないことには個人消費は増えません。当然、経済の成長は止まったまま、徐々に衰退していきます。
大卒男性の賃金が上がらないことは、日本経済の停滞の最大の原因になりかねない大問題なのです。
政府が継続的に最低賃金を引き上げて、初任給を引き上げさせることによって、その上の世代の給料も引き上げさせるべきです。
このように主張すると、間違いなく「最低賃金を引き上げては、中小企業が潰れるぞ」と反論が出るでしょう。しかし先ほども説明したように、最低賃金は2016年以降、2020年を除き毎年3%以上引き上げられています。しかし、それによって中小企業の倒産が続出したという事実はありません。この反論は、明らかにデマと言わざるをえません。
そもそも、人口が減少している中で、日本の若い人の賃金を抑えて、日本経済の成長を犠牲にして、初任給を上げるための経営戦略を実行しない経営者を守る理由はあるのでしょうか。私には、とてもそうとは思えません。
イノベーションを起こせる経営者を探し、転職しよう
経済成長はイノベーションなしには実現しません。そして賃金も、イノベーションがなされなければ上がりません。つまり、日本で過去30年にわたって賃金が上がらなかったのは、この国では目覚ましいイノベーションが起きてこなかったことを物語っているのです。
イノベーションを促す政策は別として、賃金はマクロ政策によって決まることはありませんし、消費税廃止や政府支出によって賃金を上げることもできません。
賃金はイノベーションによってのみ上がります。
前回記事「データが示す『転職が日本人の給料を上げる』根拠」でも説明したとおり、もはや転職を躊躇する理由はありません。
日本企業の経営者は現状維持にばかり腐心して、労働者が貧困に陥ることに関心を寄せていないように感じることすら多々あります。しかし、皆さんがそんな横暴な経営者の怠慢と慢心の犠牲になる必要はどこにもありません。
いま勤めている会社の経営者の実力やビジョンを見極め、イノベーションを起こせないようであれば、とっとと見切りをつけるべきです。同時に、イノベーションを起こして継続的に給料が上げられる企業を真剣に探して、転職に向けて動き出すべきです。
もちろん、そのためには自分の相場を見極めたり、イノベーションの実現可能な会社を見つけ出したり、また、そういった会社に採用してもらうために自分を磨いたりと、やらなくてはいけないことは多々あります。しかし、そうでもしないかぎり、皆さんの給料は上がりません。これが現実というものです。
皆さんが、積極的に行動し、自分にふさわしい会社を見つけ、転職することによって、解雇規制緩和をしなくても、日本でも労働市場は活性化します。そうなれば、日本経済はおのずと元気になるのです。
https://toyokeizai.net/articles/-/666948
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