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東アジアで日米韓と中露とのつば迫り合いが激しくなっている
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2023.07.20 櫻井ジャーナル
朝鮮の金正恩第1書記の妹で外交政策に大きな影響力を持つ金与正は7月10日、同国のEEZ(排他的経済水域)の内側をアメリカの偵察機が飛行、迎撃機を発進させたと発表、侵入は8回あったと非難した。
同じ日に韓国の合同参謀本部は平壌が韓米同盟による「通常の飛行活動」を威嚇しているとする声明を発表したが、それに対する反論だと見られている。その2日後、朝鮮は「⽕星砲-18」と名付けられたICBM(大陸間弾道ミサイル)の発射実験を実施した。
その発射実験から4日後にアメリカは韓国と日本を従えて日本海で軍事演習を実施、これに続いて中国とロシアが日本海で艦隊演習を実施する。7月18日にはアメリカ海軍の核兵器を搭載したSSBN(弾道ミサイル潜水艦)の「ケンタッキー」が釜山に入港、朝鮮、中国、ロシアを威圧している。
イギリスは19世紀にユーラシア大陸の周辺部を海軍力で支配し、内陸部を締め上げて支配するという戦略を作成、アメリカはその戦略を引き継いでいる。スエズ運河の建設や明治維新がなければ成り立たない戦略だ。
アメリカ軍は2018年5月に「太平洋軍」を「インド・太平洋軍」へ編成替えしているが、これもその戦略に基づいている。日本を太平洋側の拠点に、インドを太平洋側の拠点に、そして両海域をつなぐのがインドネシアだとされている。つまりアメリカにとって日本、インド、インドネシアは戦略的に重要な国だということになるが、今のところ、アメリカに従属していると言えるのは日本だけだ。
アメリカは1949年にNATO(北大西洋条約機構)を創設した。加盟国はアメリカのほか、カナダ、イギリス、フランス、イタリア、ポルトガル、デンマーク、ノルウェー、アイスランド、ベルギー、オランダ、そしてルクセンブルク。ソ連に対抗することが目的だとされたが、その当時のソ連には西ヨーロッパに攻め込む能力はなく、ヨーロッパを支配することが本当の目的だった。
初代のNATO事務総長はヘイスティング・ライオネル・イスメイ。この人物はウィンストン・チャーチルの側近で、NATO創設の目的について「ソ連をヨーロッパから締め出し、アメリカを引き入れ、ドイツを押さえつける」ことにあると公言している。ヨーロッパですでに編成されていた破壊工作部隊はNATOの秘密部隊として活動し始めた。
現在、アメリカは日本、韓国、台湾、フィリピンなどを従えているように見えるが、従属国と言えるのは日本だけ。アメリカの支配層は不安だろう。そこでアメリカはオーストラリア、インド、そして日本と「クワド」を組織、さらにオーストラリアやイギリスと3カ国で「AUKUS」という軍事同盟も組織した。
オーストラリアはアメリカとイギリスの技術で原子力潜水艦を建造すると報道されている。ジョー・バイデン米大統領はオーストラリアへ売却する3隻のバージニア級原子力潜水艦を2030年代の初めに建造すると語っているが、山上信吾オーストラリア駐在大使はキャンベラのナショナル・プレス・クラブで2022年11月14日、日本がオーストラリアの原子力潜水艦を受け入れる可能性があると表明した。
NATOのイェンス・ストルテンベルグ事務総長は2020年6月、オーストラリア、ニュージーランド、韓国、日本をメンバーにするプロジェクト「NATO2030」を開始すると宣言した。
2024年中に連絡事務所をNATOは連絡事務所を東京に設置するとされているが、フランスのエマニュエル・マクロン大統領はその計画を承認しなかったという。NATOとは北大西洋条約機構を意味するのであり、「北大西洋地域の安全保障」を維持することが目的だという理由からだ。
フランスと違い、日本はアメリカに歯向かわない。岸田文雄政権は昨年12月16日に「国家安全保障戦略(NSS)」、「国家防衛戦略」、「防衛力整備計画」の軍事関連3文書を閣議決定、2023年度から5年間の軍事費を現行計画の1.5倍以上にあたる43兆円に増額して「敵基地攻撃能力」を保有することを明らかにした。その決定を「手土産」にしてアメリカを訪問、ジョー・バイデン大統領と1月13日に会談している。
現在、アメリカの軍事政策を動かしている勢力はネオコン。彼らはソ連が1991年12月12月にソ連が消滅した直後、アメリカが唯一の超大国になったと認識、国防総省の「DPG草案」という形で世界制覇プランが作成された。作成の中心がポール・ウォルフォウィッツ次官だったことから「ウォルフォウィッツ・ドクトリン」とも呼ばれてきた。
その後、アメリカの国際戦略はこのドクトリンに基づいて動くことになった。中心的な目的には新たなライバルの出現を防ぐことにある。警戒する地域には旧ソ連圏、西ヨーロッパ、東アジア、西南アジアが含まれる。ドイツと日本をアメリカ主導の集団安全保障体制に組み入れるともしている。ドイツと日本をアメリカの戦争マシーンに組み込もうということだろう。
戦争マシーンに組み込まれることを嫌がっていた日本に進むべき道筋を示したのが1995年2月にジョセイフ・ナイが発表した「東アジア戦略報告(ナイ・レポート)」だ。日本がアメリカの戦争マシーンに組み込まれることを嫌がる政治家や官僚もいたことから国連を中心とする主張する一派を排除、そして奇怪な事件が続く。
例えば、1994年6月に長野県松本市で神経ガスのサリンがまかれ(松本サリン事件)、95年3月には帝都高速度交通営団(後に東京メトロへ改名)の車両内でサリンが散布され(地下鉄サリン事件)、その10日後には警察庁の國松孝次長官が狙撃されている。8月には日本航空123便の墜落に自衛隊が関与していることを示唆する大きな記事がアメリカ軍の準機関紙とみなされているスターズ・アンド・ストライプ紙に掲載された。
結局、日本は戦争への道を歩み始め、自衛隊は2016年に軍事施設を与那国島に建設、19年には奄美大島と宮古島にも作った。2023年には石垣島でも完成させている。
アメリカの国防総省系シンクタンク「RANDコーポレーション」が昨年に発表した報告書によると、アメリカ軍はGBIRM(地上配備中距離弾道ミサイル)で中国を包囲しようとしているが、配備できそうな国は日本だけ。その日本には「専守防衛」の建前と憲法第9条の制約があるため、アメリカはASCM(地上配備の対艦巡航ミサイル)の開発や配備で日本に協力することにする。そしてASCMを南西諸島に建設しつつある自衛隊の施設に配備する計画が作成されたという。
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