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国際刑事裁判所 プーチン大統領に逮捕状 ウクライナ情勢めぐり
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20230318/k10014012431000.html
2023年3月18日 4時54分 NHK
オランダ・ハーグにあるICC=国際刑事裁判所は、ウクライナ情勢をめぐってロシアのプーチン大統領に戦争犯罪の疑いで逮捕状を出したことを明らかにしました。
裁判所は、ロシアが占領したウクライナの地域から子どもたちをロシア側に移送したことが国際法上の戦争犯罪にあたり、プーチン大統領が関わったと信ずるに足る十分な根拠があるとしています。
ウクライナで行われたとみられる戦争犯罪などについて捜査してきた国際刑事裁判所は17日、ロシアのプーチン大統領と、子どもの権利などを担当するマリヤ・リボワベロワ大統領全権代表について、戦争犯罪の疑いで逮捕状を出したことを明らかにしました。
ロシアが占領したウクライナの地域からは、多くの子どもたちがロシア側に移送されていて、裁判所はこれが国際法上の戦争犯罪にあたり、プーチン大統領に責任があると信ずるに足る十分な根拠があるとしています。
裁判所のホフマンスキ所長は声明を発表し、「国際法は、占領した国家に対し住民の移送を禁じているうえ、子どもは特別に保護されることになっている。逮捕状の執行には国際社会の協力が必要だ」と述べました。
一方、国際刑事裁判所は日本を含む123の国と地域が参加しているものの、ロシアやアメリカ、中国などは管轄権を認めていないことから、プーチン大統領が実際に逮捕される可能性は極めて低く、逆に、ロシア側の猛烈な反発を招くものと見られます。
ゼレンスキー大統領「国家的悪事だ」
ICC=国際刑事裁判所がロシアのプーチン大統領などに対し逮捕状を出したことについて、ウクライナ政府からは歓迎するコメントが次々に発表されています。
ゼレンスキー大統領は、SNS上に公開したビデオメッセージで、「歴史的な決断だ。テロ国家の指導者が公式に戦争犯罪の容疑者となった」と述べ、歓迎しました。
この中でゼレンスキー大統領は、何千人もの子どもをロシア側に違法に連れ去る行為は国のトップの命令がなければ行えないと述べ、「子どもたちを家族から引き離し、ロシアの領土内に隠す行為は、明らかにロシアの国策であり、国家的悪事だ」として、プーチン大統領の責任を厳しく追及していく姿勢を強調しています。
また、シュミハリ首相もSNSに、「プーチン大統領に逮捕状が出されたことは正義に向けた重要な一歩だ。この犯罪やその他の侵略の犯罪に責任があるのはプーチン大統領だ。テロ国家の指導者は法廷に出てウクライナに対して犯したすべての犯罪について述べなければなない」と投稿しました。
ウクライナ大統領府のイエルマク長官もSNSで「これは始まりにすぎない」とコメントしました。
そのうえで、「ウクライナではロシアによる子どもの強制的な連れ去りが、1万6000件以上確認され、捜査が進められている。実際の人数はこの何倍にもなるかもしれない」と記し、子どもの帰還に向けた取り組みを進めていると強調しています。
ウクライナのコスティン検事総長もSNSに、「逮捕状が出されたということは、プーチン大統領は、ロシア国外では逮捕され裁判にかけられるべき人物となったことを意味する。世界の国々の指導者は、プーチン大統領と握手をしたり、交渉したりすることをためらうようになるだろう。これはウクライナと、国際法の秩序全体にとって歴史的な決断だ」と書き込み、逮捕状が出されたことを歓迎しました。
EU ボレル上級代表「責任追及のプロセスの始まりだ」
ICC=国際刑事裁判所が、ロシアのプーチン大統領などに逮捕状を出したことについて、EU=ヨーロッパ連合の外相にあたるボレル上級代表は、ツイッターに「責任追及のプロセスの始まりだ。われわれはICCの取り組みを評価し支援する」と投稿しました。
ロシア大統領府「言語道断で容認できない」
ロシア大統領府のペスコフ報道官は17日、ICC=国際刑事裁判所の決定について、ロシアメディアに対して「言語道断で容認できない。この種のいかなる決定も法律上の観点からロシアでは無効だ」と述べ、非難しました。
また、ロシア外務省のザハロワ報道官も、「ロシアはICCに加盟しておらず、何の義務も負っていない。法的に無効だ。何の意味もない」とSNSに投稿し、反発しました。
国際刑事裁判所 検察官 “ロシアでは大統領令で養子促進”
国際刑事裁判所のカーン主任検察官は声明を出し、これまでの捜査から少なくとも何百人もの子どもがウクライナの児童養護施設などから連れ去られ、多くはロシアで養子に出されたとみられるとしています。
カーン主任検察官によりますと、ロシアではプーチン大統領が出した大統領令によって、ロシア国籍の付与を促進するよう法律が改正され、こうした子どもたちをロシア人の家庭が養子にしやすくなっているということです。
カーン主任検察官は「こうした行為は、子どもたちをウクライナから永久に連れ去ろうとする意思を示している」としています。
国際刑事裁判所とは
オランダ・ハーグにあるICC=国際刑事裁判所は、世界各地の戦争や民族紛争などで非人道的な行為を行った個人を訴追して裁くための裁判所です。
管轄する犯罪は、民族などの集団に破壊する意図を持って危害を加える「集団殺害犯罪」いわゆる「ジェノサイド」や、一般市民への組織的な殺人や拷問などの「人道に対する犯罪」、戦場での民間人の保護や捕虜の扱いなどを定めた国際人道法に違反する「戦争犯罪」など、国際社会でもっとも重大な犯罪です。
戦争に関する国際裁判は当初、第2次世界大戦後の「東京裁判」や「ニュルンベルク裁判」などのように、特定の戦争や紛争を対象にしたものしかありませんでしたが、冷戦終結後、旧ユーゴスラビアやアフリカのルワンダでの集団虐殺などをきっかけに、常設の裁判所の設置を求める声が高まり、2003年、国際刑事裁判所が設立されました。
現在、国際刑事裁判所には、日本など123の国と地域が参加しているものの、ロシアやアメリカ、中国などは管轄権を認めていません。
ウクライナへの軍事侵攻をめぐって、国際刑事裁判所は、去年3月、ウクライナ国内で行われた疑いのある「戦争犯罪」や「人道に対する犯罪」などについて捜査を始めると発表し、現地に主任検察官を派遣するなどして調べを進めてきました。
ウクライナ「1万6000人以上の子どもが連れ去られた」
ウクライナの司法当局は軍事侵攻が始まって以降、東部のドネツク州、ルハンシク州、ハルキウ州、それに南部ヘルソン州であわせて1万6000人以上の子どもがロシアによって連れ去られたことが確認されたとして、捜査を進めています。
ウクライナ政府は、ウクライナに連れ戻すことができたのは300人ほどだとしていて全員の帰還に向け、情報収集などにあたっています。
ウクライナのコスティン検事総長は、17日、「ロシアは子どもたちを連れ去ることでウクライナの未来を奪おうとしている」とSNSに投稿し、プーチン政権は、連れ去った子どもたちにロシア国籍を取得させたりしていわゆるロシア化を進め、国家としてのウクライナを破壊しようとしていると非難しています。
その上でウクライナ側がまとめた1000ページ以上にのぼる証拠資料を国際刑事裁判所に提出していることを明らかにしました。
ロシア「連れ去りではなく保護」と主張
ウクライナから大勢の子どもがロシアに連れ去られているとする問題でロシアのプーチン政権は、戦地の孤児らを保護するためだと主張し、連れ去りを否定しています。
ウクライナ東部のロシア系住民の保護を名目に軍事侵攻に踏み切ったプーチン政権は、子どもたちを戦闘地域から避難させるのは当然だと正当化し、ウクライナの子どもをロシア人の養子にする取り組みを進めているほか、政権の主張に沿った愛国教育を行っています。
プーチン大統領はこれらの取り組みを後押しするため、去年5月、大統領令に署名し、ウクライナの孤児がロシア国籍を取得したり、ウクライナ国籍の子どもを養子にしたりする手続きを簡素化しています。
こうした政策を中心になって進めてきたのが、子どもの権利などを担当する大統領全権代表のマリヤ・リボワベロワ氏です。
先月、プーチン大統領と面会した際にも、何千人もの子どもをウクライナからロシアに移動させ、各地で養子縁組を進めていると報告していました。
また、ロシア人の養子になったウクライナの子どもたちの写真をSNSに頻繁に掲載し、プーチン政権の方針を正当化しています。
これに対して欧米各国や日本は、子どもたちの連れ去りに関する責任者だとして、資産凍結の対象にするなどの制裁を科しています。
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