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2023年2月22日 06時00分
https://www.tokyo-np.co.jp/article/232457
相手国のミサイル発射拠点などをたたく敵基地攻撃能力(反撃能力)を巡り、岸田政権は具体的な説明を避け続けている。相手国が武力行使に「着手」した時点で日本が反撃する可能性を否定していないため、野党は国際法違反の先制攻撃とみなされるリスクや回避策を繰り返し質問。だが、政府は通常国会が始まって約1カ月が経過しても「ゼロ回答」に終始しており、専門家は説明責任を果たさない姿勢を問題視する。(川田篤志)
◆立民・枝野氏は基準を提案したが、首相は取り合わず
「先制攻撃の恐れが飛躍的に高くなる」。立憲民主党の枝野幸男前代表は15日の衆院予算委員会で、政府が安全保障政策の大転換で保有を決めた長射程ミサイルの危うさを強調。相手がミサイル発射に着手したと判断し、日本が撃つ場合のリスクに関して「実は相手ミサイル(の狙い)は日本の領海外だったなんて間違いを起こしたら、大変なことになる」と指摘した。
枝野氏は国際法違反の回避策として、基準を定めることを提案。相手国のミサイルが日本に着弾することが「外形的に明確になった時」などの例を挙げ、政府の考えをただした。だが岸田文雄首相は「どういった場合に対応するか事前に明らかにすることは、安全保障の観点から控えるべきだ」と取り合わなかった。
立民の泉健太代表も衆院代表質問などで「着手段階における日本の敵基地攻撃は先制攻撃にならざるを得ず反対だ」と追及したが、首相は「国際法の順守は当然」と答えるにとどめた。
国連憲章は敵の「武力攻撃が発生した場合」に自衛権行使を認め、発生の定義は相手の「着手があった時点」と解釈するのが国際法上の主流。このため、泉氏の質問はネット上で「国際法の解釈に誤解がある」などと批判を浴びた。
◆焦点は武力攻撃の「着手」の見極め
問題は相手国のミサイルが飛び立つ前の「着手」をどう見極めるかだ。例えば発射ボタンが押され、攻撃が後戻りしなくなれば着手といえるが、押されたことをどう把握するのか。泉氏はツイッターで批判に反論し、現代はミサイル技術の進歩で着手の把握が難しくなったと指摘。先に撃てば「国際法違反とみなされる可能性が高い」と訴えた。
だが、首相らは国会で議論に乗ろうとしない。敵基地攻撃能力の保有などを盛り込んだ文書を昨年末に閣議決定してから初の国会を迎え、首相がどう説明し、国民の理解を得るかが焦点だったが、正面から答える姿勢は見えない。
名古屋大の松井芳郎名誉教授(国際法)は本紙の取材に「着手段階の攻撃は国際法上、違法とは言えないが、危うい選択になる。着手の認定を誤れば日本が逆に侵略者になる」と警鐘を鳴らした。政府の姿勢に関しては「敵基地攻撃能力をどういう場合なら使うのかを具体化していくことは、国際社会で日本の立場を説明する際の下支えになる。政府は国会で説明責任を果たすべきだ」と話した。
◆ようやく説明 11.5兆円の使い道
浜田靖一防衛相は21日の衆院予算委員会分科会で、昨年12月に決定した2023年度から5年間の防衛費を総額43兆円程度とする防衛力整備計画のうち、公表してこなかった11兆5000億円分の内訳を明らかにした。決定から既に2カ月経過しており、立憲民主党の長妻昭氏は「中身が分からないとチェックしようがない。何兆円か節約できるのではとの強い疑念がある」と批判した。
防衛省が提出した資料によると、これまで未公表で新たに内訳が分かったのは、敵の動向を探る「情報収集・分析機能の強化」(3000億円)や、ミサイル防衛(MD)システムに関連した「迎撃アセット(装備品)の強化」(2000億円)など。項目数は25に上った。
政府は昨年12月、防衛力整備計画の支出内容の説明として、敵基地攻撃能力(反撃能力)として使うことができる長射程ミサイル購入など約30兆円分にとどめていた。
浜田氏は未公表だった項目は「主な事業に該当しないもの」と説明。今回の公表で支出予定額の96%超を公表したと強調したが、残る約1兆4000億円分は「かなり細かな部分」だとしてなお説明を避けた。(川田篤志)
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