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※画像等はリンク先参照。
ウクライナ戦争、分裂する左翼---「社会愛国主義者」と「愚か者たちの反帝国主義」!
<記事原文 寺島先生推薦>
https://libya360.wordpress.com/2022/09/17/ukraine-war-divided-left-social-patriots-and-the-anti-imperialism-of-fools/
筆者:チャールズ・ピアス(Charles Pierce)
出典: INTERNATIONALIST 360°
2022年9月17日
<記事翻訳 寺島メソッド飜訳グループ>
2022年10月10日
二つの反戦集会、二つの全く異なるメッセージ
2月24日にロシアの軍事作戦が開始されて以来、社会主義左派はウクライナでの武力紛争への対応で分裂している。
一方は、米国・NATO・ウクライナ国家に同調して、ロシアを主な悪者として非難する人々である。もう一方は、この紛争を欧米の対ロシア新冷戦の結果であり、クーデター後のウクライナ政権はその新冷戦における西側(米国とその地政学的同盟国)の手先であると見なす人々である。
また、両方を非難するグループもある。ロシアは2月24日に軍事行動を起こし、米国とNATOはロシアの国家安全保障に関わる挑発行為を行ったとして、その両方を非難するグループもある。左派の発表する論評の多くは、役に立たない想定を繰り返し、重要な問題を回避し、紛争の現実を誤って伝えている。
分裂した左翼
左派の政治的見解が異なることは、何も新しいことではない。例えば、ベトナム戦争中、一部の社会主義者(実際はリベラル派)は当初、いくつかの根拠から米国のベトナム政策を支持していた。
それらの根拠には、米国の外交政策が「民主主義」のために「自由世界」を守ることであるという口実を受け入れていること、自由主義的自由の実存的な敵としての共産主義に揺るぎなく反対していること、西側帝国主義の人種差別的現実に盲目であるか無関心であること、などがあった。戦争が終わりの見えないまま長引き、大規模な民衆の反戦運動が起こると、戦争推進の「社会主義者」は反戦側に転向するか、信用を失墜させるかのどちらかであった。
そしてついに、戦争が世界におけるアメリカの影響力を弱めていることを認識した外交政策当局と国政の現実主義者が、反戦側に転向した(それによって支配階級が分裂した)。この時点で、反戦勢力は、米国の戦争継続を中止させるのに十分な強さを持っていた。
ベトナムの敗北は、アメリカ帝国主義にとって後退であったが、一時的かつ限定的なものに過ぎなかった。それは、アメリカ帝国主義の介入主義や「社会主義」左翼の分裂を終わらせたわけではない。
現在のウクライナ戦争について語るとき、「社会主義」を自称するすべてのグループが「反帝国主義」を主張している。しかし、この紛争でどの帝国主義に対抗するかについては、それぞれ異なっている。ロシアか、米国とNATOか、あるいはその両方か。
この紛争は、「帝国」ロシアが、「独立国」「民主」ウクライナを脅し、侵攻したことから始まったと(超党派の政治体制とリベラルな主流ニュースメディアによって)描写され、毎日のニュース放送でウクライナの苦しみと英雄的抵抗の画像が一方的に流されているので、体制側の物語を支持することはあまりにも容易である。
一方、このシナリオに異議を唱える社会主義者は、すべての責任をロシアに押し付ける「反帝国主義者」たちから退けられ、糾弾されることを予期しなければならない。実際、多くの左派系オンライン出版物は、ロシアを非難する「社会主義者」による非常に見下した、慇懃無礼な、そして糾弾的な論評を発表してきた。より衒学的な例をいくつか挙げてみよう。
• ビル・フレッチャーJr.、ビル・ガレゴス&ジャマラ・ロジャース[以下F&G&R]。「いつロシア侵略の許容をやめるべきか?」 ニューポリティクス、2022年5月11日。(PortsideとLeftLinks - CCDSによって再掲載された)
• タラス・ビルース、[以下TB]。「ウクライナにおける自決と戦争」 Dissent, May 9, 2022. (リンクス・インターナショナル・ジャーナル・オブ・ソーシャリストリニューアルの再掲載とポートサイドによる掲載)
• ヴァン・ゴッセ&ビル・フレッチャー・ジュニア[以下G&F]. 「我々はどちらの側に加担するのか? ウクライナ戦争と左翼の危機」、ポートサイド、2022年4月19日号。
F&G&Rは長年の左翼活動家である。ビル・フレッチャーJr.は、黒人解放、反戦、組織労働運動の指導的立場にあり、現在はDSA(アメリカ民主社会主義者)の指導者である。ビル・ガレゴスは、チカーノ解放*と革命的社会主義において指導的地位を占め、「解放への道(Liberation Road)」**の長年の指導者である。ジャマラ・ロジャースは、黒人解放、革命的社会主義、そして「リバレーション・ロード」の指導者であった。
[訳注] *チカーノ解放: メキシコ系への偏見の強いテキサス州で、アメリカの政治システムの中からチカーノの生活向上と差別の排除を目的としてグティエレスが1969年に結成した政党。
**「解放への道(Liberation Road)」:サイトでは次のように唱われている。「私達は米国の革命的な社会主義者であり、社会的富がわずかの億万長者の手にあるのではなく、人々によって管理される社会システムのために闘うことに専念しています。1960年代と70年代の運動から来た社会主義組織を合体して、1985年に設立された。トランプに対する抵抗力を構築することを活動の中心に置いている、とも書かれている。
フレッチャーとガレゴスは、民主党内で活動した経歴を持つ。ヴァン・ゴッセは歴史学の大学教授であり、DSA(アメリカ民主社会主義者)とCC-DS(民主主義と社会主義のための連絡委員会)のメンバーであり、また民主党内でも活動している。タラス・ビルスは歴史学者であり、ウクライナの自由主義的な「社会主義」組織である社会運動組織(Social Movement organization)の主要メンバーである。
本評論は、ロシアの行動を肯定も非難もしない。その主要な目的は、米国の左翼論評に拡散した(特に反ロシアの親キエフ左派の)誤報と誤解に反論することである。
従って、ここで問題視しているのは、左派が、この出来事の関連する事実と文脈を回避し、あるいは確認できずにそのまま広めた議論についてである。実際、反ロシア左派は(主流のリベラルなニュースメディアのように)米国やそのNATOの同盟国とともに、キウフ政権をロシアの不当な、あるいは「いわれのない」侵略の無実の犠牲者であるとする虚偽を広めている。
「正当な理由がない」だって?---無視された事実のいくつか
米国とNATO
• 米国とNATOは、ドイツの再統一に必要なソ連の同意を得るために、1990年に交わした「NATOは中・東欧に拡大しない」という約束に背いた。
• 米国は、ポーランドとルーマニアに核ミサイル(モスクワや他のロシアの標的を素早く攻撃できる)を設置した(2008年から計画、2018年に設置)。挑発ではないというのか? 米国がトルコに同様のミサイルを設置した後、ソ連がキューバにそのようなミサイルを設置し、米国が核で世界の終末の瀬戸際に追いやったことを覚えているだろうか。
• NATOは、ロシアとの国境にあるバルト三国で、ロシアとの戦争の訓練をする戦闘演習を繰り返し行ってきた。
• 米国とNATOは、過去25年間のロシアの抗議(ロシアの国家安全保障に対する前述のNATOの脅威に対して)に対して、一貫して傲慢な強硬姿勢で対応してきた。外交を継続することは、明らかに是正するために有効な手段ではなかった。
• 米国は、特に全米民主主義基金(NED)を通じて、ソ連崩壊以来、ウクライナ(ベラルーシや他の旧ソ連諸国でも)で反ロシアの親西欧政治組織に資金を提供し、訓練を行ってきた。また、多くの国(ロシアも含む)で親欧米のメディアや市民社会組織に資金を提供し、訓練している。米国議会は1983年、CIAに代わって、米国の命令に従わない国(自由民主主義国を含む)の政権転覆を密かに推進する米国の主要機関として、NEDを設立した。
• 米国は、2014年のクーデターを煽り、幇助したが、それは暴力的なネオナチ民兵が先導し、民主的に選出されたウクライナ政府を追放した。なぜか?同政権は、ウクライナをロシアと西側諸国の間で中立であることを選択したからだ。そして、米国がウクライナの指導者として選んだアルセニー・ヤツェニュクが首相に就任した。
クーデター後の政権は、全く有害な行動をして、一貫して反ロシア政策を追求してきた。
・2012年に制定された少数民族の言語使用の権利を定めた法律を撤回し、さらにロシア語(ウクライ人の30%が母語とする)の使用を制限する新たな法律を制定した。
• 共産主義者は、2015年の脱共産化法に基づいて、また、反ロシア政策に反対するとみなされるあらゆる政党を非合法化し、弾圧されている。
• ネオナチ民兵がロシア人、ロマ人、その他の少数民族を恐怖に陥れた時、免罪符を与えている。
• ナチス・ドイツの戦時中の協力者や大量虐殺の参加者を国家的英雄として称えている。
• 2014年のクーデターに抵抗し、その政権の企てに反発していた人々を、抑圧的な武力によってその抵抗を押しつぶそうとしてきた。そして、その紛争を解決するためのドンバス地方の自治に関する約束(2014年と2015年のミンスク合意)を実行することを拒否している。
・ロシアとの統一を望むクリミアの人々の意思を尊重することを拒否した。
• 反ロシアの軍事同盟であるNATOへの加盟を追求する。
米国は、ドンバス反乱軍に対する軍事作戦のために、ネオナチのアゾフ連隊を含むウクライナ軍を武装させ、訓練していたのである。これらの軍事作戦により、何千人もの民間人が死亡し、何百万人もの人々が避難し、多くの人々が身を守るために何年も地下で生活することを余儀なくされたのだ。
米国・NATO・ウクライナのクーデター後の政権による、多くの挑発行為があったことは明らかだ。しかも、そうした挑発がなければ、この戦争は起こらなかっただろう。
好戦的な者たちとその目的
この戦争を、悪のプーチン=ロシアが罪のないウクライナを食い物にしたという話に帰するのは、単純化された思い違いである。現在の紛争は(確かに2014年のクーデター以降)、決して単純にロシアとウクライナの間のものではない。
そして今、ロシアに対する経済包囲網(極めて厳しい制裁)と、キエフ国家への膨大な先端兵器の供給を行っている米国とNATOは、自国の兵士を戦いに投入していないにもかかわらず、非常に好戦的な存在である。
好戦的な者たちの目的
• 米・NATOの目的は、2014年のクーデター以前から、ウクライナを西側の顧客国家にすること、ロシアを弱体化させ、その限られた影響範囲を奪うこと、そしてプーチンを西側帝国の命令に服従する人物に
置き換えるための政権転覆を実現することであった。
• クーデター後のキエフ政権は、米国に促され、排外主義的なウクライナ民族主義者(ネオナチを含む)が支配し、一貫して反ロシア政策を追求してきた。ウクライナ語および民族意識を国内全体に浸透させ、少数民族を周辺に追いやるか、またはウクライナ化し、ロシアの影響を排除することであった。そして自治または独立を求めて少数民族が優勢である地域に対して、絶対的支配を強め、経済・軍事的に西側に統合しようとするものであった。
• 反ロシア的な「社会主義者」[F&G&R]の主張とは逆に、ロシアの目的は、独立した国としてのウクライナの存在を排除することでは決してなかった。ロシアが目指してきたのは、隣国ウクライナに敵対的な軍事基地(核ミサイルを含む)が存在しないようにすること、クリミアの人々がロシアとの統一を決めたことを守ること(同時に、クリミア海軍基地の支配を継続すること)、ドンバスのロシア系住民の権利を守ること(ウクライナ領として、反ロシア同盟への参加を妨げるもの)であった。
国際法?
米国・NATO・キーウと連携する「社会主義」左派は、この戦争を(F&G&Rの言葉のように)ロシアが「主権国家への侵攻」によって「国際法」と「国家の自決権」の侵害を犯しているからだと考えている。これは単純化しすぎで、一層悪い説明になっている。
第一に、キーウ政権が、米国の後押しとこれまで以上に殺人的な武器の提供を受けて、ドンバス紛争の平和的解決を求めるロシアと分離ドンバス共和国の訴えに対して、強硬な姿勢をとり続けたという事実を回避している。
キーウはドンバス共和国の指導者との対話すら拒否し、武力による圧殺をもくろんでいることが明らかであった。しかも、(2014年に)ネオナチ民兵を含む新たに編成した軍を派遣し、クーデターへの抵抗を鎮圧したのは、キーウのクーデター政権である(当時の正規軍には、鎮圧するための十分な動機付けがなかった)。
ロシアは、ウクライナに対する軍事行動は、ドンバスにおけるキーウの侵略に対応したものでもあり、実際、最初に武力に訴えたのはキエフ政権であると主張している。
このように、ロシアの主張は、ドンバスへの軍事行動が、キーウがドンバス共和国に対して軍事的侵略を続けていることに対する正当な対応であり、国連憲章*でも認められているとしているのである。
*{訳注} 国連憲章第51条: この憲章のいかなる規定も、国際連合加盟国に対して武力攻撃が発生した場合には、安全保障理事会が国際の平和及び安全の維持に必要な措置をとるまでの間、個別的又は集団的自衛の固有の権利を害するものではない。 この自衛権の行使に当って加盟国がとった措置は、直ちに安全保障理事会に報告しなければならない。
ロシアのウクライナ侵攻について、プーチンの見解は、NATOがロシアの国家安全保障を脅かす動きを強めていることにキーウが協力したことで正当化されると考えている。しかし、ドンバスへの攻撃とロシアへの安全保障上の脅威に関して、そのどちらか、あるいは両方の正当性を問うことはできても、キーウ・NATOがすべて正しく、ロシアがすべて悪い、と明確に言えることはないのである。
第二に、米・NATO系の左翼は、ロシアに対して法律をたてにした激しい非難をおこなっているが、以下の2点のどちらか、あるいは両方の特徴が見てとれる。(1)不当な比較をする(特に米・英の2003年のイラク侵攻は、実際には、純粋な帝国による他国の政権転覆戦争であって、絶対的な嘘に基づいて正当化されたものだった)。(2)国連憲章と国際法が帝国主義による自国の不当な侵略の妨げとなったときにはいつも、国連憲章や国際法を繰り返し堂々と違反してきた犯罪行為の歴史には、蓋をしている。
これらの侵略には、以下が含まれる。
• 抵抗勢力の国において、暴力的で反動的な反乱軍(アフガニスタンのムジャヒディンやニカラグアのコントラのような)の武装化。
• 殺人的な経済包囲網(キューバ、イラク、ベネズエラ、イラン、...)。
• 脅迫的な軍事演習(バルト三国、韓国)。
• 民主的に選ばれた政府に対するクーデターの煽動と教唆(1949年シリア、1953年イラン、1954年グアテマラ、1973年チリ、他多数)。
• 暗殺と未遂(ルムンバ、カストロ、カシム、アジェンデ、カッザーフィー、・・・);実際、米国とその主要な同盟国は、日常的に国連憲章と国際法に違反しており、彼らに対して同法を執行する権限を持つ機関がないため、彼ら(その主要な違反者)の責任が問われることはないのだ。
• 多くの国の選挙への干渉(1948年のイタリアに始まる)。
• 他国の内戦において、抑圧的な反体制側に立って、破壊的な殺人的軍事介入(ギリシャ、中国、韓国、ベトナム、ラオス、コロンビア、・・・)。
• 人権に対する大規模な犯罪を犯している国家を武装し、庇護すること(シオニスト国家、サウジアラビア、...)。
• 政権転覆のための軍事侵攻(ドミニカ共和国、グレナダ、パナマ、イラク、リビア、...)
これらの人種差別的な帝国主義的介入の多くは(1945年以来、その数は膨大である)、何千万人もの人々を貧困に陥れ、恐怖に陥れ、避難させ、負傷させ、あるいは死に至らしめたのである。
最後に、上に挙げた欧米帝国による国際法違反の犠牲国のどの一国も、その抑圧国に対して国際法を執行させることができなかった。実際、米国とその主要な同盟諸国は、日常的に国連憲章と国際法に違反しており、彼らに対して同法を執行する権限を持つ機関がないため、彼ら(その主要な違反者)の責任が問われることはないのだ。
それにもかかわらず、反ロシアの「社会主義者」たちは、欧米の対ロシア介入を支持することを正当化するために、米・NATOの国際法の偏った適用と、誤った適用を繰り返しているのだ。
彼らは、米国の犯罪は別件だから関係ないと主張するかもしれない。その議論の誤りは、米国とNATOは2014年のクーデター以来ずっと、この武力紛争に反ロシアとして参加してきたことにある。
その結果、米国とNATOの擁護者たちは、事実上、無法地帯の世界における最悪の無法者が、より軽い犯罪容疑者に対して法を執行するよう求めているのである。つまり、当該の法執行者が自らの犯罪目的推進のために行動する加害者なのである。これではこれらの擁護者たちが法の執行を支援しているのではなく、世界最悪の犯罪集団に事実上の支援を与えていることになる。
「帝政ロシア」だって?
G&Fはロシアを 「帝国主義的大国」と表現している。TBはロシアを「帝国主義」とか 「ファシスト」と呼ぶ。F&G&Rは、ロシアが 「失地回復主義」に突き動かされた 「帝国主義的大国」だとして、 その「侵略」を非難している。
このように、我々の反ロシア左翼は、プーチンのロシアを「独裁的」、「反民主的」、「帝国主義的」な国家として酷評しているのである。プーチンのもとでロシア経済はエリツィン時代(1991-1999年)に比べて劇的に改善したが、確かにロシアの国内政策には非難すべき点が多い(縁故資本主義、ロシア正教会の優遇、気候変動への無策、労働規制法、選挙の不正操作など)。
ドンバスやクリミア、あるいはその他の地域でのロシアの行動には、妥当な批判もあるだろう。しかし、ロシアの限られた勢力圏を維持するための努力は、本質的に防衛的なものである。さらに、ロシアは、NATO加盟国全体の17分の1以下の軍事費と、旧ソ連諸国以外に1つの軍事基地を持つのみである。世界中に何百もの軍事基地を維持し、ほぼすべての国に自分の意思を押し付けようと、世界中の人々を搾取し抑圧し、世界で唯一の現在の超大国が指導し支配する欧米帝国主義と比べて、ロシアは取るに足りないほど小さいものでしかない。
最後に、米・NATO帝国主義に対するロシアの不満や、ウクライナのクーデター政権に対するロシアの不満は、本当のことで妥当なものである。その現実から目をそらしながら、ロシアの欠陥を問題にするのは、プーチンのロシアに反対して、バイデン、ストルテンベルグ、キーウ政権と手を組むための口実を必要とする人々が抱く、都合のよい弁解に過ぎないのである。
「民主的な」ウクライナだって?
キエフ政権の弁護者たちは、「独裁的」なロシアに対してウクライナは支援に値する。なぜなら(彼らは)「民主主義」だからだと主張するのだ。F&G&Rはウクライナを「民主主義」を目指していると表現し、TBは不完全だが「守るに値する民主主義」だと表現しているのだ。
彼らは、数多くの逆の事実を省略し、回避している。
・ 現政権は、実際に普通選挙で選ばれた政府に対して、米国が支援した2014年のクーデターによって樹立されたこと。
• ゼレンスキーの最初の人気は、ドンバス共和国との和平を約束したことに大きく依存していたこと(就任後すぐに破られたが)。
• (2021年に)主要な野党(当時はゼレンスキー党を上回り始めていた)が活動停止になり、そのリーダー(ヴィクトル・メドベチュク)が自宅軟禁され、その後、反逆罪で起訴されたこと。
• キーウの反ロシア政策に反対する声は、クーデター後の政権によって日常的に弾圧されていること。実
際、ベトナム戦でのフェニックス作戦を彷彿とさせるもので、CIAの訓練を受けた国家治安部隊によって、多くの人々が誘拐され、拷問され、殺害されている。
ロシア兵による人権侵害(その一部はおそらく捏造)は、西側諸国とその支持母体の主流ニュースメディアによって大々的に報道されているが、逆にウクライナ人や捕虜のロシア兵に対する拷問や殺人といったキーウ国家の恐怖支配は、西側ニュースメディアでは全く報道されない。実際、キーウ国家は長い間、プーチンのロシアよりもはるかに抑圧的で反民主的であった。
民族・国家問題?
ロシアを非難する「マルクス主義者」の中には、ロシアが「国家(ウクライナを含む)には自決権と独立した国民国家としての生存権がある」というレーニン主義の原則に違反したとする問題をでっち上げる者がいる。
プーチンがレーニンの民族政策に反対を表明したとはいえ、プーチンがウクライナの現在の民族的正当性を否定し、独立した国家としての存在を排除しようとしたという(F&G&Rの)憶測と主張はまったくの虚偽である。
その上でプーチンは、「ロシアとウクライナは、ドイツとオーストリアのように、共通の祖先と文化を持ち、友好的な関係を築くべき」と述べたのである。そして、「歴史的経緯」からウクライナは「独立国」であることを明確に認め、「それをどう扱うか」については、「敬意をもって」という答えしかないのである。欧米帝国主義に味方することを正当化するために、プーチンの感傷的表現の延長線上にある虚構を、彼の実際の行動と明白な意図に置き換えることは、単なる欺瞞である。
第一に、プーチンはソ連邦の復活が不可能であることを明確に認めている。ウクライナの独立国家としての存在を奪う意図はなく、ロシアの国家安全保障に対する脅威となることを防ぐためだけであることを明らかにしたのである。
彼は、ドンバス地方のウクライナ国内での自治の実施(キーウが2014年と2015年のミンスク協定で合意した通り)を、同地方の多くの民意がロシアとの統一を求めているにもかかわらず、8年近く粘り強く求めてきたのであった。実際、米国を含む国連安全保障理事会は、2015年に全会一致でミンスク合意を承認していた。
ロシアは、キーウが約束された自治を実施するのを妨げるようなことは何もしていない。しかも、米国は実際にキーウが自治実施を拒否するのを後押しした。これらは、反ロシアの「社会主義者」論者たちが、概して省略し、常に忌避している決定的な事実である。
第二に、これらの「レーニン主義者」は、ロシアのクリミア「併合」とドンバス離脱地域への援助を「ウクライナの主権領土の侵害」と決めつけることによって、米国とNATOに同調している。
F&G&Rは、クリミアの分離独立をロシアの 「クリミア強奪」と決め付けている。また、TBはキーウの目標(「勝利」)をドンバスとクリミアに対する絶対的な支配を取り戻すことと受け入れている。
これらの主張は、ここで適用されている民族・国家問題をひどく単純化しすぎて、誤用しているのである。これらの「レーニン主義者」は、米国やNATOとともに、ロシアから分離した独立国であるウクライナが多様な民族性を有しているにもかかわらず、その領土全体に対して絶対的主権を行使するウクライナ民族の「権利」を主張している。しかし(レーニンとは逆に)ウクライナは、少数民族が優勢な地域内での自治権さえ否定しているのである。
さらに、F&G&Rをはじめとする「レーニン主義者」の中には、クリミアやドンバスの人々が本心から、ウクライナからの独立や、ウクライナ国内での自治を選択したかどうかを疑うことで、国家主権を一方的に適用して自分たちを正当化しようとする人々もいる。彼らは明らかに、関連する事実上の証拠を確認することなく、判断を急いでいるのである。
• 1954. フルシチョフは、クリミアの人々の同意や承認なしに、クリミアをロシアソビエト共和国からウクライナSSR[ウクライナ・ソビエト社会主義共和国]に移すという(合法性が疑わしい)決定を画策した。
• 1991. ソビエト連邦崩壊の際、クリミアの選挙で選ばれた指導者が、クリミアをウクライナから独立した共和国として認めさせようとした。
• 1992. キーウとクリミアの間でクリミアの自治権の範囲について争った後、キエフはクリミアをウクライナ内の自治共和国として承認する妥協案に合意した。
• 1995年. キーウがクリミア憲法を廃止し、大統領職を廃止し、クリミア議会が選出した首相をキーウが拒否権を持つようにするなど、クリミアの権限を厳しく制限(自治権をほぼ否定)。
• 2008年. ウクライナ経済政治研究センター(モスクワの代理機関ではない)の世論調査で、クリミア人の64%がクリミアのウクライナからの分離独立とロシアへの加盟を希望していることが判明。
• 2009年11月. 国連開発計画(モスクワの代理機関ではない)は、クリミアで定期的に世論調査を実施した。そのたびに、少なくとも65%のクリミア人が、クリミアがウクライナから離脱し、ロシアに再統合することを支持した。
• クリミアのウクライナ離脱は、2014年に米国が支援したキーウでのクーデターに対する国民の直接的な反応だった(クリミアは追放された旧政権に対して圧倒的多数の支持票を投じていた)。クリミアのロシアへの再編入は、ロシアの「侵略」によって実現したという主張も虚偽である。クリミアに駐留していたロシア公認の軍隊が、独立住民投票とその後の分離・再編入を実現するために地元勢力を支援したが、こうした行動はクリミア人の大多数が歓迎しており、彼らはすでにその気になっていたのである。また、過去にモスクワ(1954年)とキーウ(ソ連崩壊後)の双方から自決権を否定された歴史を考えれば、クリミアの人々がウクライナから分離し、ロシアに編入する正当性は十分すぎるほどあった。社会主義者が「抑圧にとって最も一貫した敵」であると主張していたレーニンが生きていれば、このことに同意するだろう。
我々の反ロシア「レーニン主義者」は、米国、NATO、キーウとともに、ウクライナの民族主義者のための民族的権利を主張するが、クリミアとドンバスの人民のためのそうした権利を否定している。彼らは「領土保全」と「主権」を神聖化するが、レーニンに反して、抑圧と不正に対する闘いを否定する。
罠か?
反帝国主義の専門家の中には、米国がロシアの安全保障問題に対して強硬であるため、意図的にロシアに罠を仕掛けたと考える者もいる。その主張には歴史の前例がある。ジミー・カーターは(1979年から)アフガニスタンのソ連系革命政府に対して反動的なムジャヒディンを武装化した。その目的は、ソ連系政府を守るためにソ連の軍事介入を誘発し、(彼の国家安全保障顧問のズビグニュー・ブレジンスキーが述べたように)ソ連をベトナムに似た泥沼に引き込むためであった。
米軍出資のシンクタンク、ランド・コーポレーションによる「Overextending and Unbalancing Russia(ロシアを過度に拡大させ、不安定化する)」と題する2019年の報告書では、米国の目標は 「冷戦時代にソ連にしたように、ロシアを弱体化させること」にあるべきと提言している。
バイデンの国家安全保障チームの内部通信にアクセスできるようになるまでは、彼らがロシアをウクライナでの自滅的な戦争に陥れることを意図していたと断言することはできない。しかし、米国の外交政策当局の中では、明らかにそのような政策が支持されていた。米国は和平交渉においてキーウの強硬姿勢を奨励しており、それが現在の米国の政策目標であることは明らかである。
反ロシアの「社会主義者」たちは、米国とNATOがロシアを孤立させ、弱体化させるために行動していたという明確な事実さえ認めようとしない。なぜか?なぜなら、プーチンのロシアを嫌うこれらの「社会主義者」は、明らかにその目的を米国やNATOと共有しているからだ。
国内政治
社会主義者は、ウクライナ戦争に対する見解がどうであれ、米国や他の多くの国々で偏狭な反動的政治派閥が台頭していることを当然ながら懸念している。
米国では、多くのリベラルな改革派の「社会主義者」は、民主党が労働者階級の選挙基盤を長年にわたって裏切ってきたにもかかわらず、民主党に忠誠を誓うことによって、共和党の反応に常習的に対応している。さらに、全国規模で民主党政治家のほぼ全員が、世界に対するアメリカ帝国主義の覇権と、その結果としてのアメリカの外交政策における帝国主義的犯罪を支持しているのである。
リベラルな「社会主義者」は、民主党に傾倒することで、反帝国主義に口先だけの厚意を示しているのである。だから、民主党が支配しているとき、そのような「社会主義者」は、一般に、外国の人々に対する米国の帝国犯罪に反対する民衆を組織するために何もしないのである。それどころか、彼らには、(ウクライナの場合のように)それらの犯罪のいくつかが故意に見えなくなることさえある。
社会主義者の正しい方針は、民主党の政治家が実際に社会正義のために戦うとき、戦術的に同盟を結ぶことである。しかし、同時に、民主党による社会正義の背信行為と裏切りについて国民に教えることが必要である。
このような教育を怠ると、資本主義の工作員に追従することになり、民衆の中に既存の無知と偏見を永続させることになる。私たちは、民主党に身を任せる有権者になるのではなく、社会正義に基づく連帯運動を構築する必要がある。従って、一時的な限定的戦術的同盟はありうるが、忠誠を誓うべきではない。
戦争推進の「社会主義者」
米国とNATOが、この戦争の恐怖を長引かせるために、これまで以上に殺傷力の高い武器を送り込んでいる。しかしその間に、苦しみながら死んでいくのは、ウクライナとロシア(NATO諸国ではない)の戦士と民間人である。
どちらが勝つかには関係なく、ロシアとウクライナの双方が大きな代償を払うことになる。しかしその間に、多国籍資本、特に兵器産業と化石燃料会社は、利益を増大させるだろう。
しかし、反ロシアの「社会主義者」たちは、ウクライナに西側の武器を送り、ロシアに対して強硬な制裁を行うことを提唱している。このように、彼らはヨーロッパにおける西側の新しい冷戦(今は熱い戦い)に支持を与えているのである。
[注:社会主義者が適切に米政権に諸手を挙げて支持を表明した例外的な戦争とは、米国の対外軍事行動が(利己的な理由で)、抑圧的な敵に対する正当な戦争であった場合だけだった。しかし、ウクライナ戦争は明らかにそのような例外ではない]。
主要な矛盾点
「ポートサイド(公然たる「左翼」オンライン出版物)」は、米国平和評議会(USPC)*によるウクライナ戦争についての確固たる反帝国主義的分析を掲載したが、その後、「ポートサイド」が[アメリカのウクライナ戦争に]賛成しない別の視点を提示するためにそうしたのだと示した。その後まもなく、ポートサイド社はUSPCの声明に対して11のコメントを発表したが、一つを除いてすべてUSPCの分析に反対しており、そのうちのいくつかは非常に非難的な言葉で述べられている。
[訳注]*米国平和評議会(USPC)は1979年に設立された平和および軍縮活動家組織。世界平和評議会と提携しており、そのアメリカのセクションを代表している。しかし、ウィキペディアでは「USPCはソビエトの利益のためのフロントグループであり、緊密な関係を維持したと批判している。Wikipedia site:ja.wiki5.ru」
そのうちの二つは、他の多くの反ロシア左派の論者とともに、反帝国主義の分析を「愚か者の反帝国主義」あるいは「馬鹿者」と非難している。三つ目は、米国の「マルクス主義者」を自認するカール・デビッドソン(「民主社会のための学生会」(SDS)や革命組織の元リーダー、その後、民主党内で活動、現在はCC-DSのリーダー)、この紛争の「主たる矛盾」は「ロシアの主権国家への侵攻とウクライナの主権防衛」だとコメントしている。
明らかに、反ロシアの「社会主義者」たちは、欧米帝国主義と、封じ込め、征服、政権転覆を狙われた世界中の多数の標的(ロシア、中国、イラン、シリア、北朝鮮、キューバ、ベネズエラ、ニカラグアなど)との間の矛盾は、もはや主要な問題ではないと判断したのだろう。
このウクライナ紛争で米国とNATOに同調している彼らは、社会愛国主義者に変質している。この言葉は、1914年に主要交戦国の社会党の指導者たちが、第一次世界大戦で双方の帝国政府を支持することを正当化する口実をでっち上げたことに由来する(帝国主義に関して党員の教育を何年も怠ってきたのだから)。現代の社会愛国主義者たちは、頑固者トランプの選挙勝利を阻止する必要性に執着し、原則を犠牲にして政治的体面と大衆的影響力のために、意識的または無意識的に帝国主義リベラル派に同調しているようである。
社会正義のための闘いにおける彼らの過去の貢献を考えれば、1914年の先達とは異なり、彼らがその誤りを認識し、修正することを願うばかりである。
我々の現在の課題
私たちは、ウクライナにおけるロシアの軍事的対応を不適切なやり過ぎだとか、不謹慎な行為だとか、あるいはその両方と考えて、ロシアの軍事作戦の手法を非難するかもしれない。しかし、反対の意見を述べることはあっても、ロシアの決断に影響を与える能力はないのである。
西側の反帝国主義の社会正義の活動家である我々の仕事は、(ウクライナへの武器供与やロシアへの制裁を含む)米・NATO帝国主義を非難し、強力に反対することである。
我々は、ロシア嫌いの戦争プロパガンダの嘘を暴露しなければならないし、その真の敵との戦いを粘り強く支援しなければならない。たとえ一部の公然たる「社会主義者」によって、「プーチン擁護者」、「愚か者」、「馬鹿者」と中傷されようとも、それが我々の義務なのだ。
チャールズ・ピアースは、社会正義の活動家(1960 年代初頭の青年期から反人種主義、反帝国主義)、元労働活動家(組合執事、地方役員)で、現在は歴史と政治に関する研究者、執筆者である。チャールズの連絡先は、cpbolshi@gmail.com。
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