「ウクライナ侵攻はロシアの恥」 「プーチンは国民と経済を見殺しにしている」 「世界に私たちは黙っていないことを示したい」ロシア国内からSNSを通じてあげられた反戦や政権批判の声です。厳しい言論統制が行われているロシア。そうした状況の中でも、反戦や政権批判の声をSNSで投稿し続けるロシアの人たちがいます。今回、SNSを通じて連絡をとり、彼・彼女たちの反戦へ思い、生活状況、そして政権による弾圧などについて聞かせてもらいました。 ※この記事は2022年4月11日に公開されたものです ロシアでは厳しい言論統制が行われていて、ロシアの人権団体によりますと、ウクライナ侵攻以降、政権批判などで拘束された人は1万5000人以上にのぼるということです。 こうした厳しい状況の中でも、SNSなどで反戦の声をあげ続けているロシアの人たちがいます。ツイッターを通じて8人の人たちと連絡をとり、以下の5つの質問をしました。今回は、このうち4人の回答を紹介します。 (1)ウクライナ侵攻についてどう考えますか? (2)2月24日以降、ロシア国内でどのような変化がありましたか? (3)抗議の声を上げることにどのようなリスクがありますか? (4)リスクがありながらも声を上げるのはなぜですか? (5)今の政権をどう考えますか? (取材に応じてくれた方の中には、名前を公表してもよいという方もいましたが、安全のためすべて匿名としています) ◎23歳女性(モスクワ在住、外資系企業のデザイナー) (1)ウクライナ侵攻についてどう考えますか? 考えることはありません。ひどい、考えられない戦争です。 傍若無人です。 (2)侵攻後、ロシア国内でどのような変化が? 1、物価の高騰 2、社会の分断と国民の中での絶えないもめ事 3、独立系の新聞、テレビ、ラジオ、ウェブサイトが消えた 4、インターネットの遮断 5、VPNをいつも使わないといけない 6、Zの文字が現れ始めた(公共交通機関やタクシーでみられる) 7、戦争反対の旗も(赤のない旗、NOWAR、プーチンは殺人者、ウクライナに栄光あれ、ロシアは自由で平和な国になど) 8、デモなどを取り締まるものすごい数の警察や特別部隊 9、自由と権利を侵す法律ができたこと (3)抗議の声を上げることにリスクは? 私にとっては一番はじめにあるリスクは罰金です。 はじめは罰金、その後は刑務所に15年です。 (4)リスクがありながらもなぜ声を? いま黙っていることは血塗られた独裁者の側につくことです。最大で15年間、刑務所に入ることよりも、黙っていることのほうが私にはずっと怖いことです。 私は友達や親戚がウクライナに住んでいます。私の家族は第2次世界大戦でロシア、ウクライナ、ベラルーシの自由のために戦って死にました。 このウクライナ侵攻はロシアの恥です、私個人にとっても、世界にとっても。 これを支持していないということを見せたいのです。 ウクライナとロシア、両方の自由と安全のために戦いたい。私と人々、それに世界の未来のために、軍事主義ではない、独裁者が権力を持たない国に暮らしたい。世界に私たちは黙っていないことを示したい。ロシアはプーチンではない。 (5)今の政権をどう考えますか? 2012年から非合法に今の政党に支配された犯罪の政権です。 プーチンはクリミア併合を恥じなかった。彼は唯一の反対派のリーダーのナワリヌイ氏に毒を盛ることをためらわなかった。彼は、この21世紀に、歴史的にも民族的にもつながりのある国に対して戦争を仕掛けたことを恥じていないのです。 政権側にいること、プーチン側にいることは、悪魔の側にいるということです。それに対して、声を上げること、通りに出て声を上げること、反撃することが、正しい側につくということなのです。 ◎40歳男性(モスクワ在住、医療関係者) (1)ウクライナ侵攻についてどう考えますか? ロシアのウクライナへの軍事侵攻について、いろいろな考えがあります。 私はこの戦争は世界全体が経済的な犠牲を払うことになる、大きな失敗だと思います。多くの人が死に、さらに多くが負傷するという大きな悲劇です。 この戦争が皮肉なのは、世界中が新型コロナウイルスと戦い、人々の命を守り助けようと働き、経済を立て直そうとしているときに、プーチンはこの戦争を始めて、国民と経済を見殺しにしている。 ヨーロッパやアメリカの人がウクライナですべてが終わると思っていたら、それは間違いです。ポーランド、ジョージア、モルドバ、それにバルト3国にその脅威はすでにおよんでいます。 そして、プーチンは大量破壊兵器を使うくらい狂っていると思います。彼はすでにスクリパル氏やナワリヌイ氏に対して、化学兵器を使っていますから。 美しいヨーロッパの国が、美しい文化が、親切な人々が私たちの目の前で破壊されています。すべての街が地球上から消されていく、何千という命が失われていく、その一つ一つは過去と未来の何世代にもわたり、いくつもの家族からなっていて、それを失うことは耐えられない痛みです。 この戦火をどのように生き延びることができるのでしょうか。飛行禁止区域を設定することがウクライナの勝利につながると思っています。 (2)侵攻後、ロシア国内でどのような変化が? この国では、主に経済と人々のつながりが変化しています。 私の仕事はなくなりましたし、物が少なくなりました。電化製品の価格が去年に比べて2倍、3倍になりました。食品の値段も上がり、その種類も少なくなっています。薬がなくなっていますし、ほかの薬は週に何度も値上がりしています。薬は平均で月に30%値上がりしました。 それ以外は通常どおりに見えます。人々は仕事に行き、ぜいたくではない日常を過ごしています。 多くの人はこの事態をアメリカやNATOやウクライナのせいだと責めています。プロパガンダを信じている人が少なくないのです。 私の親戚のほとんどは、プーチンとこの戦争を支持しています。なので、私は彼らと話をしなくなってしまいました。彼らとのつながりはなくなってしまうでしょう。 私は街を歩いていて、街を見渡して、この景色がミサイルが落ちてきて破壊されることを想像せずにいられません。これが普通になってしまっている人がいるのです。信じられない状況です。 第2次世界大戦でドイツ人がそうだったように、戦争犯罪の共犯者になってしまっている気がします。それがとても怖くて、どうしたらこの悪夢が終わるのか、どうしたら人々が死んでいくのを止められるかを考えています。 (3)抗議の声を上げることにリスクは? この国には以前から政府の考えに賛成しない人や抗議することに対してリスクがありました。刑罰が重くなっただけです。 一番大きなリスクは、逮捕されることでも罰金を科せられることでもなく、拘束された人がなんの助けもなく、人権を侵害され、拷問され、屈辱的な扱いを受けることです。そしてそれは、助けを求めることや正当な防衛ができません。 拘束された人を助ける、「OVDインフォ」「Appologia Protesta」などの組織があります。「zona media」というメディアはそのようなことを報道しています。 こういった組織は法的なものではありませんが、政権の弾圧のなか活動を続けています。 (4)リスクがありながらもなぜ声を? 私は黙っていられないのです。ウクライナで起きている残虐な行為を前に、黙ってみていることはできないのです。今すぐ止めなけれはならない。 でも止めるには、世界中が力を合わせて行動することが必要なのです。プーチンは計画を立てていて、止まらないし、やりきるのでしょう。 この戦争で彼にとってなにもよいことはなく、それは彼が一番よくわかっているでしょう。 (5)今の政権をどう考えますか? 今のロシアの政権は、独裁的な民主主義による、封建的な奴隷制です。そして悲しいことにこの政権は私たちが作ってしまったのです。 でもこの政権には未来はありません。戦争はこの政権を救いません。 ◎21歳の女性(モスクワ在住、法学部の学生)
(1)ウクライナ侵攻についてどう考えますか? 支持していません。独立した国を攻撃することは許されません。 大統領や政府はこの戦争は「特殊作戦」だといいます。ウクライナの非軍事化と非ナチ化のため、そしてロシア語を話す人たちをナチスが迫害していると。 私はウクライナ人の友達がいて、ロシア語ではないニュースも見ますが、ウクライナはロシア語を使う人たちを虐げることはしていませんし、極右政党もなく、ネオナチが支持を集めてもいません。 友達が送ってくれたミコライウやイルピンの映像を見ました。友達は荒廃した街、殺された市民、レイプ、略奪、恫喝について話してくれました。 友達たちは嘘はついていません。それに私は独立系メディアのニュースをチェックしています。そして、私の国は侵略者であり、政府の中の人や兵士たちは戦争犯罪者です。 (2)侵攻後、ロシア国内でどのような変化が? 価格の高騰です。スマートフォン、テレビ、衣類、食品さえも高くなっています。ルーブルが暴落、アップルペイが使えない、ビザ、マスターカードも使えません。飛行機でほかの国に行くこともできません。 ロシア人の中でしかお金を送ることができません。多くの企業がビジネスをやめ、多くの人が仕事を失いました。 軍の情報やフェイクニュースを犯罪とする新たな法律や検閲ができました。この法律の刑罰は最長15年間の懲役・禁固刑という、おかしな法律です。最高裁判所はこれについて、見解を示していません。 将来、法律家になる私としては、人々の行為をどうやって犯罪と認定するのかわかりません。 警察の残忍さは増しています。すべての集会は禁止されています。モスクワのスタジアムで行われていた政府を肯定する「クリミアの春」という集会を除いては。 ロシアはいまや全体主義の国です。市民は貧しくなっていっています。 (3)抗議の声を上げることにリスクは? もし当局が私の考えを聞いたり、ツイートを見たりしたら、私は大学を退学させられるかもしれません。警察や調査する機関が犯罪とみなすかもしれません。 「お前は軍の信用を失墜させた」とか「過激派だ」と認定するでしょう。 (4)リスクがありながらもなぜ声を? 私はプロパガンダに対抗しています。 親戚や友達、近所の人たちが目を覚ましてもらえるように働きかけています。人々は真実を知るべきです。 この戦争の本当の顔、市民の殺害、戦争犯罪、荒廃した町や学校、産科病院の現状を。政府の嘘を知る必要があります、ロシア兵の死亡数などです。 私たちには自由が、ウクライナには平和が必要です。 ウクライナの人々の安全を祈っています。それと同時に私はいかなる侵略、暴力を許しません。人の命が最も価値があり、すべての命は守られるべきものです。 (5)今の政権をどう考えますか? 以前から私は好きではありませんでしたが、今は大嫌いです。私たちの国には政治の多様性がなく、人権が侵害され、大統領に反対する人はいません。 2015年にはボリス・ネムツォフ氏が殺され、ナワリヌイ氏は刑務所にいて、政治犯罪者にしたてられています。 言論の自由はありません。 そのほかにも問題がたくさんあります。しかし今、この政権は多くの人を殺しています。強い怒りを持っています。 彼らは市民のことは考えていません、兵士のことさえも、自分たち以外の人のことは考えていないのです。 この戦争はハーグで裁かれなければなりません。彼らは罰を受けなければならない。 ◎52歳男性(サンクトペテルブルク、フリーランス) (1)ウクライナ侵攻についてどう考えますか? これは戦争犯罪です。加害者は国際的な法廷で裁かれなければなりません。 (2)侵攻後、ロシア国内でどのような変化が? 1、活動家(多くはナワリヌイ氏の支持者たち)に対する法律が厳しくなり、弾圧も増えている。 2、多くのロシアからの移民。重い禁固刑を言い渡された活動家がロシアを去っています。 重要な職業で、最も高度な知識を持つ専門家がロシアを出て行っている。この悪夢の中で生きることができない普通の人たちも去って行っています。 しかし残念ながら、そうしたいと思うすべての人が国を出られるわけではありません。それが大きな悲劇なのです。 この国に残る人は、継続的に大きな危険にさらされることになります。ロシア人をこの国から避難させる国際的なチャリティーを作るのがよいのではないでしょうか。 3、すべての価格が上がっていて、特に食品と薬です。店にある商品の種類が劇的に減りました。世界的にメジャーなブランドの店がなくなり、国内から去っています。 (3)抗議の声を上げることにリスクは? 私は、プーチンが言う「特殊作戦」という欺まんに満ちたことばではなく、「戦争」ということばを使ったというだけで、いつでも逮捕され刑務所に長期間にわたって入れられる可能性があります。 プーチンの「法律」の中では、私はツイートするだけで15年の懲役・禁固刑を言い渡されるのです。これで、私がどんなところに住んでいるかわかると思います。 私たちの政権は、言論の自由、独立したメディア、選挙、独立した裁判所などがない、ファシストの独裁政権です。独裁政権の中ではプロパガンダだけです。 どうか信じないでください。 (4)リスクがありながらもなぜ声を? 私の国が占領下にあるときに、反対の声を上げないことができますか?私は奴隷ではなく、人間です。 私が尊敬し支持する政治家であり市民であるナワリヌイ氏はプーチンが軍の毒薬であるノビチョクを使って毒殺しようとしたあとでさえも、この国に戻ることを怖がりませんでした。リスクを知りながらも。 私がどうして声を上げないことができるでしょうか。 (5)今の政権をどう考えますか? この犯罪者の政権は過去20年、マフィアが牛耳る構造と旧ソビエトのKGBの残党との共生の結果、私のみじめな国で違法に権力を持ち維持してきました。 この政権は軍や警察、そして特殊部隊など数百万人とも言われる治安維持部隊と、プロパガンダからなっています。合法な情報源をすべて独占されて。 プーチンとプーチンに近い人たちがエネルギー資源を独占し、西側に売って、その金でこの弾圧の構造と宣伝員からなる巨大な軍を維持しています。ウクライナでの戦争もこの金で賄われている。 残念ながら、ロシアの予算は国民のために使われるのではなくて、間違った独裁者の非人道的な犯罪の企図のために使われているのです。
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