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軍事作戦で敗色濃厚のキエフ政権は破壊工作へ切り替えた可能性
https://plaza.rakuten.co.jp/condor33/diary/202208200000/
2022.08.20 櫻井ジャーナル
ウクライナの現体制は2014年2月のキエフにおけるクーデターで誕生した。そのクーデターを仕掛けたのはアメリカのバラク・オバマ政権である。その先にはロシア征服と分割が計画されていたのだが、南部のクリミアや東部のドンバス(ドネツクとルガンスク)を制圧することには失敗した。クーデター後、アメリカの支配層はドンバスとクリミアを制圧し、初期の目的を達成しようとしている。
ウクライナは歴史的な経緯から均質な国ではない。東部と南部はロシア語を話し、ロシア正教の影響下にあり、文化的にもロシアに近く、その東部と南部を支持基盤にしていたビクトル・ヤヌコビッチ大統領を排除したのが2014年2月のクーデターだ。
しかし、単純に「親ロシア派」の地域と「反ロシア派」の地域が対立していると理解することも正しくない。中東におけるスンニ派、シーア派、ユダヤ教徒のケースと同じように、対立は外部の勢力によって作り出されたと言える。ウクライナでロシアを敵視、ロシア人を抹殺しようとしてきたのはナチスと関係が深かったステパン・バンデラを信奉するOUN-Bの人脈。クーデターの主力になった勢力でもある。
ロシアにとってウクライナは通常の隣国と違い、両国の関係は特別だと指摘したのはヘンリー・キッシンジャー。2014年3月5日、つまりクーデターの直後に彼のウクライナ情勢に関する論評がワシントン・ポスト紙に載った。ロシアは「キエフ公国」から始まったと指摘、ロシアにとってウクライナは特別な存在だとしている。
ドンバスを含む東部の地域はロシア革命後に割譲されているのだが、クリミアの場合は1954年までロシアだった。当然、住民の多くはロシア語を話し、ロシア正教を信じている。ウクライナ語を話し、カトリック教徒が多い西部とは文化的に別なのだ。キッシンジャーもこの点を指摘している。
アメリカ/NATOは兵器を供与するだけでなく、自国の情報機関や特殊部隊のメンバーをウクライナへ送り込み、またウクライナの戦闘員をさまざまな場所で訓練してきた。ドンバスやクリミアを制圧する準備を進めてきたのだ。そして今年3月、ロシア語系住民を殲滅する軍事作戦を開始する予定だった可能性が高い。
今年2月19日に緊急アピール「大虐殺が準備されている」を出したオレグ・ツァロフはウクライナの政治家で、2013年11月20日にアメリアがクーデターを計画していると議会で指摘したことでも知られている。
ツァロフはアピールの中でウォロディミル・ゼレンスキー大統領がごく近い将来、ドンバスで軍事作戦を開始すると警鐘を鳴らした。その作戦はロシア語系住民を狙った「民族浄化」で、キエフ政権の軍や親衛隊はこの地域を制圧、自分たちに従わない住民を虐殺しようとしていると主張、SBU(ウクライナ保安庁)はネオ・ナチと共同で「親ロシア派」の粛清を実行するともしていた。
ツァロフがアピールを出した3日後にロシアのウラジミル・プーチン大統領はドンバスの独立を承認、2月24日にロシア軍はウクライナを巡航ミサイル「カリブル」などで攻撃を開始、航空基地や生物兵器研究開発施設が攻撃された。
軍事作戦を始めた後、ロシア軍はアメリカが設立した生物兵器の研究開発施設や司令部でウクライナ側の文書を回収している。そうした文書の中に、ゼレンスキーが出した指示に基づいて実施される予定だった軍事作戦に関するものがあった。
それによると、親衛隊のニコライ・バラン上級大将が1月22日にドンバスへの攻撃を命令する文書へ署名、攻撃の準備が始まったという。2月中には準備を終え、3月に作戦を実行することになっていたとしている。
市民の犠牲を厭わなければ短期間にロシア軍はウクライナを制圧できたはずだが、マリウポリを含む東部の一部を占領していたキエフ政権が送り込んだ親衛隊は住宅地に攻撃拠点を築き、市民を人質にして戦い、ロシア軍に対抗してきた。
そこで時間は要したが、親衛隊やウクライナ軍は敗北、市民は解放され、親衛隊や軍の兵士は降伏し、戦闘の実態を証言している。この証言はウォロディミル・ゼレンスキー政権だけでなく、アメリカやイギリスの政府にとって封印したいものだった。
ところが、ロシア政府や独立系ジャーナリストだけでなく、人権擁護団体のアムネスティもキエフ政権側のそうした戦術を明らかにした。学校や病院を含む住宅地にキエフ政権側の武装勢力が軍事基地を建設、そうした場所から攻撃することで住民を危険な状態にしているとする報告書を8月4日に発表したのだ。その内容は現地で取材しているジャーナリストや住民らの証言と合致している。
その後アムネスティは西側の私的権力から強い圧力を受けたようだ。その結果、自分たちが発表した報告書を外部の「専門家」に検証させることにしたというイギリスの国際開発省、欧州委員会、アメリカ国務省などの各国政府機関、ロックフェラー財団、フォード財団などから資金を得ている以上、事実の追求は制限される。
ドンバスにおける戦闘でキエフ側が軍事的に敗北するとドイツの情報機関BND(連邦情報局)も分析していた。ドイツの有力誌「シュピーゲル」によると、BNDはウクライナ側の抵抗が7月一杯で終わり、ロシア軍は8月にドンバス全域を制圧できるというのだ。
少しでも戦闘を引き伸ばしたいアメリカやイギリスの政府はHIMARS(高機動ロケット砲システム)、M270-MLRS(M270多連装ロケットシステム)、空対地ミサイルのブリムストーン、あるいはM777榴弾砲といった兵器を供給、またロシア側の動くをリアルタイムでウクライナ軍へ伝えているという。ウクライナ軍の情報機関で副長官を務めるバディム・スキビツキーによると、衛星写真も受け取っている。その一方、情報収集活動しているロシアのスパイを排除するために米英は追跡しているという。
しかし、それにも限界がある。そこでキエフ政権側は正規戦からSBU(ウクライナ保安庁)を中心とする非正規戦へ比重を移動させているようだ。SBUは事実上、CIAの下部機関であり、CIAはイギリスのMI6、アメリカ軍やイギリス軍の特殊部隊と連携している。クリミアにおける破壊工作やドンバスでの軍幹部暗殺もその結果だろう。
イギリスのSOE(特殊作戦執行部)とアメリカのOSS(戦略事務局)に所属するSO(秘密工作部)は第2次世界大戦の終盤、レジスタンス対策として「ジェドバラ」と名付けられたゲリラ戦組織を編成している。大戦後、この人脈がCIAの秘密工作部門の中核になり、NATOの秘密部隊になった。
昨年11月、ドミトロ・ヤロシュがウクライナ軍参謀長の顧問に就任したが、この人物はネオ・ナチの幹部。「三叉戟」を中心に「右派セクター」を編成し、クーデターを実行している。
ヤロシュがネオ・ナチのグループへ入ったのはドロボビチ教育大学の学生だった頃。そこで知り合ったワシル・イワニシン教授はOUN-B人脈のひとりで、KUN(ウクライナ・ナショナリスト会議)の指導者グループに属していた。イワニシンが2007年に死亡するとヤロシュが後継者になる。
このタイミングでヤロシュはNATOの秘密部隊ネットワークに参加したと言われている。その当時、アメリカのNATO大使を務めていた人物がクーデターを指揮することになるビクトリア・ヌランドだ。ジェドバラ人脈に加わったということでもある。
全てのNATO加盟国で秘密部隊が組織されているが、中でも有名な部隊がイタリアのグラディオ。1960年代から80年代にかけて爆弾テロを繰り返し、クーデターも計画している。ウクライナにおける戦闘で残ったのはこの人脈だけなのかもしれない。
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