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嘘を嘘で塗り固める高市早苗が「レクを受けていた」決定的証拠
https://www.mag2.com/p/news/569976
2023.03.17 新恭(あらたきょう)『国家権力&メディア一刀両断』 まぐまぐニュース
自身が「捏造」と言い放った放送法をめぐる文書を総務大臣が「正式な行政文書」と認め、存在を否定していた自らに対するレクを総務省が「行われた可能性が高い」とするなど、後がない状況に追い込まれた高市早苗経済安保大臣。それでもなお「文書の内容は不正確」との主張を続けていますが、一体どこまで信用することが出来るのでしょうか。今回のメルマガ『国家権力&メディア一刀両断』では著者で元全国紙社会部記者の新 恭さんが、もはや言い逃れが出来ない「決定的証拠」を突きつけ、高市氏の言に無理があると指摘。さらに総務省の文書が世に出てきた背景と、一連の騒動の本質的な問題を考察しています。
次々とバレるウソ。高市早苗は誰に何を訴えたいのか
高市早苗大臣が捏造と言う総務省の行政文書はやはりホンモノだったようだ。
焦点になっていた文書は、2015年2月13日に行われたとされる高市総務大臣の「大臣レク」に関するものだ。当時の安倍首相補佐官、礒崎陽輔氏が起案した放送法の新解釈案を担当局長が説明し、のちの高市大臣による国会答弁につながった重要な会議だ。
礒崎補佐官が総務省に働きかけ、放送法の「政治的公平」について無理やり解釈を変更した経緯については当メルマガ先週号を参照していただきたい。
【関連】総務省が全文公開の大誤算。高市早苗を追い込む放送法「行政文書」のエグい内容
高市氏はこのレクそのものがなかったと全面否定していたが、総務省の小笠原情報流通行政局長は今月13日の参議院予算委員会で、「大臣レク」が「あった可能性が高い」との考えを明らかにした。
「大臣レク」の記録文書には「西がた記」とあり、当時の放送政策課統括補佐、西潟暢央氏(現・データ通信課長)が作成したものであることはまず間違いない。小笠原局長はこう述べた。
「作成者によると、日頃確実な仕事を心がけているので、このような文書が残っているのであれば同時期に放送法に関する大臣レクが行われたのではないかと認識しているということでありました。2月13日に大臣レクが行われた可能性が高いと考えられます」
この確認に10日もの長い時間を要したことには疑問が残るが、総務省としては行政文書と認めている以上、そこに書かれた大臣レクがなかったというわけにはいかないだろう。でっち上げだったということになれば、省を揺るがす大問題に発展しかねない。
だが、納得できない高市大臣は奇妙な言い方で反論する。
「紙に書かれてあることは不正確だ。その時期たくさんのレクがあったので何月何日にどんなレクがあったか確認のとりようがないが、紙に書かれてあることは自信を持って否定させていただく」
これだけだと、レクはあったかもしれないが不正確だと言っているように読める。しかし、以下の部分はどう解釈したらよいのだろうか。
「磯崎補佐官が放送法に関心を持っているというのは今年3月になってはじめて知ったことであり、書かれているように磯崎補佐官からの伝言を受け取ったということはない」
文書を総務省職員から入手した小西洋之議員(立憲)の質問通告があるまで磯崎氏が放送法解釈に関わっていたことを知らなかったという。3月3日の参院予算委員会でも、こう主張していた。
「平成27年2月13日に私に対してレクをしたというが、27年5月に初めて藤川議員から“1本の番組だったらどうなる”という質問があった」
藤川政人氏は自民党の議員である。2015年5月12日の参院総務委員会で、磯崎案に沿った質問をし、高市総務相から放送法の新解釈案を引き出した。その質問通告があるまで、こうした問題提起があることを知らなかったという。つまり大臣レクはなかったと言いたいわけだ。
偶然とは言わせない。高市早苗がウソをついている決定的証拠
「私は委員会開催日でも、朝レクも前夜レクも受けない主義。5月の質問にどういう答えぶりをするかについて、2月にそのようなレクを受けるはずもない。磯崎さんが何の担当の補佐官か私は思い出せない。磯崎さんから放送法について話があったことすらない。言うはずのないことがたくさん悪意をもって書かれている。私をやめさせようとしたのかどうかわからないが、これは作られた文書だと思います」
不正確というより、レクそのものがなかったということを、これだけ何回も繰り返しているのである。高市氏は2013年の大分県での講演会で、磯崎氏について「この夏、礒崎さんにはホンマにお世話になりました」と語ったほどの間柄である。にもかかわらず、磯崎氏とは疎遠であるかのごとく装う態度にも違和感がある。
総務省はレクがあったと言い、高市大臣は捏造だと言う。このミステリーをどう解けばいいのか。
まず、客観的事実を押さえておく必要がありそうだ。磯崎補佐官が、TBSのサンデーモーニングなどの報道姿勢を問題視し、担当外であるにもかかわらず放送法の「政治的公平」に関する解釈変更を総務省にもちかけ、「自分と総理の二人で決める」と強引にコトを運んだことは間違いない。高市総務大臣が国会答弁で新解釈を提示したことも国会議事録で確認できる。
磯崎氏の主導した新解釈を、当時の安藤情報流通行政局長が高市大臣に説明したのが2015年2月13日の「大臣レク」だったことが、この文書に書き残されている。
ところが高市氏はレクそのものを否定し、藤川議員から質問通告を受けて初めてこの課題を知り、担当課からの答弁案や資料をもとに自ら答弁内容を考えたと言う。
それでは、磯崎案と高市大臣の答弁がほぼ同一であるという事実について、高市大臣はどう説明するのだろうか。長くなるが、以下に磯崎案と高市答弁を並べてみる。
磯崎案をもとに修正を重ねた補充的説明(新解釈案)の最終稿は概ね以下の通りだ。
一つの番組のみでも、選挙期間中又はそれに近接する期間において、殊更に特定の候補者や候補予定者のみを相当の時間にわたり取り上げる特別番組を放送し選挙の公平性に明らかに支障を及ぼすと認められる場合や、殊更に一方の政治的見解のみを取り上げて、それを支持する内容を相当の時間にわたり繰り返すような極端な場合においては、一般論として「政治的に公平であること」を確保しているとは認められない。
次に、2015年5月12日の参院総務委員会における高市総務大臣の答弁。
「一つの番組のみでも、選挙期間中又はそれに近接する期間において殊更に特定の候補者や候補予定者のみを相当の時間にわたり取り上げる特別番組を放送した場合のように、選挙の公平性に明らかに支障を及ぼすと認められる場合といった極端な場合におきましては、一般論として政治的に公平であることを確保しているとは認められないと考えます」
どう見ても、高市大臣の答弁は、磯崎氏の考えを土台に作成した新解釈案そのものである。これを大臣に説明し、了承を得ることもなしに官僚が答弁書に書き込むことはあり得ない。高市大臣は官僚レクによらず自らが答弁を考えるのが自分流であるかのごとく言うが、これが偶然の一致だというのは、いささか無理があるのではないか。
むしろ、この文書は磯崎案と高市答弁の間をきちんとつないでくれる資料として後世に残す意味を持つ。「私がこんなことを言うはずがない」と高市氏は主張するが、そっくりそのままの言葉遣いを再現してなくとも、大意が書かれていれば共有文書としては十分なはずである。
なぜ総務省は行政文書を小西議員に流したのか
文書の中身を確認しておこう。大臣レクの出席者は、「先方」として高市大臣、平川参事官、松井秘書官、「当方」として安藤情報流通行政局長、長塩放送政策課長、「西がた」の名があがっている。
磯崎補佐官が「補充的説明」と称する放送法の新解釈について安藤情報流通行政局長から高市大臣に説明があった。
安藤局長 「大臣のご了解が得られればの話であるが、礒崎補佐官からは、本件を総理に説明し、国会で質問するかどうか、(質問する場合は)いつの時期にするか、等の指示を仰ぎたいと言われている」
要するに、安倍総理も了解のうえでまとめたこの「補充的説明」を国会答弁でしてもらいたいという磯崎補佐官の意思を高市大臣に伝えているわけであろう。これに対して、高市大臣はこう述べたことになっている。
「実際の答弁については、上手に準備するとともに、(カッコつきでいいので)主語を明確にする、該当条文とその逐条解説を付ける、の2点をお願いする」
「官邸には総務大臣は準備をしておきますと伝えてください。補佐官が総理に説明した際の総理の回答についてはきちんと情報を取ってください。総理も思いがあるでしょうから、ゴーサインが出るのではないかと思う」
答弁準備の指示や要請があまりに細かく、具体的であることには驚かされる。実務能力の高い大臣であればこそなのだろう。
今回、総務省が「放送法」解釈の大臣レクがあったことをほぼ認めたことで、高市大臣の立場はますます危うくなった。しかし、総務省は今のところ、「文書の内容は不正確かもしれない」と、「捏造」を「正確性」の問題にすり替えて、高市氏を守る姿勢も崩していない。
当然、「捏造でなければ辞任する」と啖呵を切った高市氏が実際に辞任に追い込まれれば、辞任ドミノに揺れた岸田政権にとって大きな痛手である。党内で孤立の色合いを深め、岸田首相との仲もいいとは言えないが、高市氏には安倍シンパの応援団がついていて、うかつに切ることはできない。「文書の正確性が確保されているものもあれば確保されていないものもある」と総務省側が曖昧答弁に終始しているのはそのせいに違いない。
ところで、総務省職員から小西議員にこの文書が流れたことについて、政治抗争の観点から解釈する向きがある。たとえば、岸田政権を揺さぶるため、総務省と親密な菅義偉前首相の息のかかった官僚が動いたとか、高市氏が奈良県知事選に擁立した新人候補と現職の自民公認候補との争いが波及しているとかだが、確たる情報のない現時点では揣摩憶測の域を出ないと見るほかない。
総務大臣時代の高市氏は、放送法の新解釈答弁にとどまらず、2016年2月8日の衆議院予算委員会で、場合によっては放送の電波を停止することもありうるという趣旨の発言をし、放送事業者を威圧したことがある。昨今、テレビ局が牙を抜かれて、あたりさわりのない報道番組が目立っているのはその悪影響といえるかもしれない。
「国境なき記者団」(本部・パリ)による報道の自由度ランキングで日本は71位(2022年度)に甘んじている。G7の中で最も評価が低い。自民党から民主党政権に交代して11位にハネ上がったこともあったが、安倍政権以降は下落の一途をたどった。
放送行政を政権が都合よく操ろうとする目下の状況に対する怒りが総務省の一部官僚の間にも渦巻いているからこそ、文書を世に出そうという動きが出てきたのかもしれない。筆者も自戒しなければならないが、高市氏が「捏造」とまくしたてるのに興味をひかれ、その真偽をさぐるばかりでは、目くらましの罠にはまるだけだ。
本質的な問題は、「政治的公平」の意味をはき違えた政権側を追及するどころか、「面倒なことはひかえよう」と縮こまってばかりいる報道姿勢にある。これを機に、メディアはそのことを強く自覚するべきではないだろうか。
image by: Instagram(takaichi_sanae)
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