http://www.asyura2.com/22/senkyo289/msg/564.html
Tweet |
※紙面抜粋
※2023年3月14日 日刊ゲンダイ2面
※文字起こし
どこに圧力をかけるか、常に相談?安倍菅強権政権に唯々諾々(安倍元首相と菅前首相)/(C)日刊ゲンダイ
「恥ずかしながら、羽鳥アナウンサーの大ファンで、朝は8時から8時5分までの間は、羽鳥さんの顔をひと目見て出かけるくらいでございます」
いよいよ、詭弁のネタも底をつきたらしい。13日の参院予算委員会で高市経済安保担当相は放送法の「政治的公平」に関する総務省の行政文書のうち、当時総務相だった自身のものとされる「そもそもテレビ朝日に公平な番組なんてある?」との発言録を否定。同局朝の情報番組のMCを務める羽鳥慎一アナへの熱い思いを告白し、「テレビ朝日をディスるはずもございません」と言ってのけた。
国会審議で愛を打ち明けるのは異例だが、総務省側はこの日、高市が実施の事実を認めない2015年2月の担当局長によるレクについて「あった可能性が高い」と答弁。追い詰められた高市の言い訳のダシに使われる羽鳥アナもいい迷惑だろう。
高市の去就に問題が矮小化されがちだが、本質を見失ってはいけない。総務省の行政文書が突きつけているのは、安倍政権下における政府のメディアに対する不当な政治介入だ。
安倍元首相の個人的感情と「変なヤクザ」と評された礒崎陽輔首相補佐官の忖度により、憲法や放送法が保障する「表現の自由」が密室で歪められたおぞましい経緯の検証が必要である。
放送法4条の「政治的公平」は従来、一つの番組ではなく、放送局の番組全体から判断するという見解だったが、安倍政権下で「一番組でも放送法に抵触する場合がある」に変わった。それを15年5月に国会で答弁したのは高市だ。翌16年2月には放送局の電波停止にまで踏み込んだ。
メディアの掌握だけが唯一のレガシー
いくら高市が「文書は捏造」と言い張っても、過去の自身の答弁は覆らない。国会では連日、野党議員が安倍周辺のチンピラ補佐官の提案によって、放送行政が歪められたと追及しているが、肝心のTV局はおとなしい。本来なら「報道、放送、表現の自由」に関わる法解釈の変更を「見直せ!」と岸田政権に迫ってしかるべきなのに、NHKや民放キー局の幹部からはついぞ、そんな抗議の声は聞こえない。
思い返せばTV局への威嚇・ドーカツは約10年に及んだ安倍・菅両政権の常套手段。そしてその都度、強権政権におもねり、唯々諾々と恭順の態度を示してきたのが、この国のTV局の幹部たちである。政治評論家の本澤二郎氏はこう言った。
「数々の政治介入に、当事者である放送局側は少しでも抵抗したのか。正当な反論・批判を繰り返していれば、今回の行政文書が問題視されることはなかった。あたかも放送行政が歪められたかのような追及は後の祭り。安倍政権時代は、どのTV局も幹部連中は首相と『夜の会食』三昧。中にはフジテレビ会長だった日枝久氏のように、ゴルフコンペが恒例となっていた経営者までいた。TV局側が進んで政権に籠絡されたようなもので、高市大臣を図に乗らせているのも、TV局が怒らないから。アベノミクスや北方領土交渉など内政も外交もことごとく失敗した安倍政権でしたが、メディアの掌握だけが唯一の“レガシー”とは、皮肉な話です」
12年12月に第2次安倍政権が発足して以降、日本のTV史は時の権力に屈服し、自滅していった事象の連続だ。まずロコツな人事介入を受けたのはNHKである。
政権の暴走と重なる屈服と自滅の歴史
安倍は13年11月に会長職の決定権を握る経営委員に作家の百田尚樹氏ら“シンパ”を送り込み、政権のイエスマン、籾井勝人会長を誕生させた。経営委員として籾井氏を推薦したのは、JR九州会長だった石原進氏。彼は財界人による安倍応援団「四季の会」のメンバーで、会を立ち上げたのは昨年亡くなったJR東海の葛西敬之名誉会長だ。
ジャーナリスト・森功氏の著書「国商 最後のフィクサー葛西敬之」には、安倍と蜜月関係にあった葛西氏が歴代NHK会長の人選に関与した経緯が描かれている。前会長の前田晃伸氏も四季の会メンバーで、安倍・菅両政権下の会長人事は「アベ友」の葛西氏に仕切られたという。
安倍政権は13年12月に特定秘密保護法を強行採決し、14年7月には集団的自衛権行使容認の閣議決定を断行。暴走の加速と放送局への圧力を強めた時期は奇妙に一致する。
14年11月18日の会見で、安倍は消費税増税の延期を理由に衆院解散を表明。TBS系「NEWS23」に出演中、街頭インタビューに「厳しい意見を意図的に選んでいる」とブチ切れたのは、この日夜だ。その2日後、自民党は総裁特別補佐の萩生田光一筆頭副幹事長(当時)らの連名で、在京の全民放キー局に選挙報道での「公平中立、公正の確保」を求める文書を送り付けた。
以降、ニュース番組からはアベノミクス批判どころか、選挙報道そのものが自粛したかのように激減した。
渦中の行政文書によると、礒崎は「圧力文書」送付の3日後、11月23日OAのTBS系「サンデーモーニング」の番組内容が政権批判に「偏っている」と問題視。26日に総務省の担当部局に電話し、「政治的公平」に関するレクを持ちかけ、2日後に実現。総選挙の自民大勝を挟み、「けしからん番組は取り締まる」との趣旨で、法解釈は大きく歪められていく。
「報道の自由」は国民の側に立ってこそ
翌15年1月にテレビ朝日系「報道ステーション」のコメンテーターだった元経産官僚の古賀茂明氏が番組内で「I am not Abe」のフリップを掲げ、政権を批判。官邸からの圧力で降板させられると、同年4月、この件で自民党はテレ朝幹部を党の会議に呼び出し、事情聴取した。この時はNHK幹部も「クローズアップ現代」のヤラセ疑惑について説明を求められた。
政権与党が放送局の幹部を特定の番組に関して呼びつけるのは、圧力以外の何ものでもない。ところが、強制力のない聴取に応じたテレ朝の福田俊男専務(当時)は反発することもなく、「誤解が生じたら困るので、いい機会と捉えて出席した」と媚びたものだ。
15年11月には読売・産経両紙に突如、NEWS23のアンカーを務めていた故・岸井成格氏を名指しで糾弾する「放送法遵守を求める視聴者の会」の全面意見広告が掲載。ヤリ玉に挙げたのは安保法制審議が大詰めを迎えた同年9月の放送で、岸井氏が「メディアとしても廃案に向けて声をずっと上げ続けるべきだ」と発言したこと。岸井氏は、礒崎が問題視した「サンモニ」にも出演していた。
安倍応援団の文化人による意見広告の体裁を取っていたが、この時も礒崎は「極めて冷静で妥当な意見です」と即座にツイート。この会がTBSや総務省、岸井氏個人に放送法4条の遵守を求める公開質問状を送り、軌を一にするように高市の「停波」発言が飛び出したのだ。
そして翌16年春に岸井氏や、行政文書にも名前が出てくる「報ステ」の古舘伊知郎氏、「クロ現」の国谷裕子氏ら政権に批判的なキャスターたちが、軒並み番組を降ろされた。古賀・古舘両氏の降板当時、テレ朝の放送番組審議委員長は幻冬舎の見城徹社長だった。同社は多くの「安倍ヨイショ本」を出版。ここにも「アベ友」が影を落としている。
「権力の暴走を監視するマスコミは時の政権に煙たがられる存在でなくてはいけません。『報道の自由』が憲法で守られているのは主権者・国民の側に立ってこそ。政権にやすやすと切り崩され、迎合してしまえば『政権御用放送』と変わらない。健全な民主主義社会を維持するにはこれ以上、TV局の傍観は許されません」(立正大名誉教授・金子勝=憲法)
情けないことに、この国では放送法の解釈よりも、TV局トップの在り方が問題になってしまう。今こそ、その見識が問われる。
▲上へ ★阿修羅♪ > 政治・選挙・NHK289掲示板 次へ 前へ
最新投稿・コメント全文リスト コメント投稿はメルマガで即時配信 スレ建て依頼スレ
▲上へ ★阿修羅♪ > 政治・選挙・NHK289掲示板 次へ 前へ
スパムメールの中から見つけ出すためにメールのタイトルには必ず「阿修羅さんへ」と記述してください。
すべてのページの引用、転載、リンクを許可します。確認メールは不要です。引用元リンクを表示してください。