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※紙面抜粋
※2023年3月6日 日刊ゲンダイ2面
※文字起こし
アベノミクスの破綻がここまで明らかになっても絶対非を認めない(左から、世耕弘成参院幹事長、萩生田光一自民党政調会長)/(C)日刊ゲンダイ
「アベノミクスは失敗ではありません。もし失敗して経済が悪くなっているのなら、われわれはとっくに選挙に大敗して政権を失っている」──。日曜の朝っぱらから、自民党の世耕弘成参院幹事長が吠えていた。
日銀総裁に経済学者の植田和男氏を起用する人事案などをめぐり、与野党の参院幹部が5日午前、NHK「日曜討論」で意見を交わした。立憲民主党の田名部匡代参院幹事長が、2%の物価目標を明記した政府・日銀の共同声明について「見直すべきだ。アベノミクスは既に失敗している」と訴えると、世耕は冒頭のように色をなして反論したのだ。
世耕は「今、出口を考える段階では全くない」「共同声明の見直しに手をつけたらパンドラの箱を開けてしまう。逆に市場に混乱を与えることになる」と主張。「2%の物価目標は、副作用をはるかに上回る国民経済上の大きな効果を生んでいる」と語り、植田氏が日銀総裁に就いても「この方針を全く変える必要はない」と強調した。
日銀の白川方明前総裁が国際通貨基金の季刊誌への寄稿で、黒田日銀の大規模金融緩和を「壮大な金融実験」などと疑問視したことにも、世耕は猛反論。怒気を含めて「白川総裁時代に金融緩和をかたくなに行わなかったことが、深刻なデフレに日本が陥った最大の原因」「まずはご自身の時代をしっかり総括していただきたい」と痛烈に批判した。
安倍派幹部の世耕は公共の電波を使って言いたい放題。全力で異次元緩和の「アベノミクス路線」を賛美しまくったが、ちょっと待て。世耕だってこの10年のアベノミクス時代を「総括」すべきではないのか。
「賃金の上がらない国」という負の遺産
アベノミクス路線の成果を実感できている国民は、ほとんどいない。むしろ、副作用に苦しめられる日々である。
当初は「2年で実現」と掲げた物価目標は10年経っても「道半ば」(世耕)。ダブついたマネーは行き場を失い、企業の銀行口座に眠ったまま。企業の内部留保は第2次安倍政権が発足した2012年度末の304兆円から、21年度には516兆円と初めて500兆円を突破。実に200兆円以上もの余剰資金が無駄に積み上がっただけだ。
国債やETFの大量購入で市場機能をメチャクチャに歪めた挙げ句、富裕層から低所得者に富が徐々に滴り落ちるというトリクルダウンは「起こらなかった」と、岸田首相ですら認めている。
番組で世耕は「安倍政権の間に雇用者数は500万人近く増えた。正規雇用も200万人増えている。民主党政権では50万人減らされましたよね」「正規雇用の有効求人倍率は1.18倍、完全雇用がほぼ達成できている。民主党政権の時代は0.5でありました」とアベノミクスの成果を強調。
「悪夢のような民主党政権」と繰り返した安倍元首相を彷彿させるいやらしい言い回しだったが、異様な円安政策が足元の物価高騰を招いていることは棚上げだ。
おかげで実質賃金は12年の年間404.6万円から、22年は380.9万円へと24万円近くも減ってしまった。この10年で日本の国際競争力は地に落ち、すっかり成長もしない、賃金も上がらない国に成り果てている。それこそがアベノミクスの負の遺産で、今すぐにでも異次元の金融緩和を見直さなければいけない根拠である。
親分のやったことに間違いなしの無謬性の病
ここまでアベノミクスの破綻が明らかになっても、安倍派の連中は異次元緩和の非を絶対に認めようとしない。それどころか、力ずくで継続をゴリ押しするありさまだ。
参院議院運営委員会で行われた新総裁候補の植田氏への所信聴取でも、世耕は質問に立ち、アベノミクス路線の継続を執拗に念押し。同じく安倍派幹部の萩生田光一政調会長は先月12日の「日曜討論」で、日銀の新総裁に「今の政策は継続しながら改革が必要だ」と注文をつけた。
植田氏の起用が伝えられる前から、メディアには「人選によっては、政権との向き合い方を考えなくてはならない」「路線を転換すれば首相を支えられない」などと安倍派幹部の匿名コメントが躍り、「アベノミクスを否定する人を充てるなら、国会同意人事で造反して反対する」(中堅議員)との声も漏れた。
岸田周辺も「日銀総裁人事で間違うと、安倍派と政局になる」とオロオロし、結局、アベノミクス路線を踏襲する植田氏を起用。議員96人を擁する最大派閥の「数の力」に頼り、アベノミクス継続を迫る安倍派は圧力団体さながらだ。このゴリ押し、ドーカツの裏に何があるのか。経済評論家の斎藤満氏はこう言う。
「安倍派の主張に理論的根拠はひとつもありません。単なる組織防衛です。安倍元首相という重し役を失って分裂含みの中、アベノミクスの継続だけが結節点。アベノミクスまで否定されれば派閥の存在意義を失う危機感の表れでしかない。世耕氏は5日の日曜討論で物価高騰の追加対策に『予備費が5兆円残っている。これをフル活用したい』とブチ上げましたが、お門違いもはなはだしい。
物価高を抑えるなら、日銀にインフレ退治を迫るべき。そのためにも金融緩和の見直しが必要なのです。親分のやったことは絶対で、アベノミクスの失敗を決して認めない安倍派は完全に『無謬性』の病に侵されている。そればかりか、親分を批判する敵は力をもって排除する動きは、政治家としてあるまじき態度。これ以上、彼らをのさばらせておくのは危険です」
今なお、元首相の亡霊がこの国と国民生活を狂わせているのだ。
死してなお暴走は受け継がれている
話題騒然の総務省作成とされる「内部文書」からも、安倍一派の暴走は読み取れる。14年から15年にかけて放送法の「政治的公平性」の解釈が、安倍に都合よく変更された経緯が克明に記録してあり、入手した立憲の小西洋之参院議員の言う通り本物なら、言論弾圧の「証拠文書」となり得る。
当時、細田派(現・安倍派)の参院議員だった礒崎陽輔首相補佐官はよっぽど安倍に気に入られたかったのだろう。TBS系「サンデーモーニング」などを「偏向報道」と決めつけ、「けしからん番組は取り締まるスタンスを示す必要があるだろう」などと総務官僚にガンガン求めた。
異彩を放つのが、総務省出身の山田真貴子首相秘書官(当時)の見識の高さだ。「(礒崎は)官邸内で影響力はない」と対応する総務官僚に指摘し、「変なヤクザに絡まれたって話ではないか」とバッサリ。
「どこのメディアも萎縮するだろう。言論弾圧ではないか」と懸念した山田氏は、安倍への説明の場で「官邸にとってプラスにならない」旨を進言した。
ところが、安倍もまた「ヤクザ」だった。山田氏の助言に耳を貸さず、「政治的公平という観点からみて、現在の放送番組にはおかしいものもあり、こうした現状は正すべき」とし、言論弾圧にゴーサイン。かくして、政治的公平性の解釈は従来の「一つの番組ではなく、放送事業者の番組全体を見て判断する」から、新たに「一つの番組だけでも放送法に抵触する場合がある」が加えられ、現在も踏襲されている。死してなお、安倍が暴走を続けている一例だ。
「安倍派だけでなく、岸田首相の政権運営も安倍氏の背に乗り、防衛費大幅増の戦争準備に原発の新増設など積極的推進と、むしろ暴走を加速させています。自民党政権が続く限り、安倍路線も延々と継続しそうです」(政治評論家・本澤二郎氏)
安倍の「遺志」を利用して金科玉条のように扱う輩たちが動かす政治には、絶望のため息しか出ない。
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