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※紙面抜粋
※2023年3月3日 日刊ゲンダイ2面
※文字起こし
こんにゃく答弁でも窮する場面もなく予算案は衆院通過(岸田首相)(C)日刊ゲンダイ
いったい、こんな“茶番国会”が許されるのか。税金ドロボーと叫びたくなる国民もいるだろう。
一般会計で114兆円超という過去最大の2023年度予算案を、衆院がいともアッサリ「無風通過」させてしまった。今月1日から参院予算委員会での審議が行われているが、憲法の衆院優越規定に基づき、参院送付から30日で自然成立するため、年度内成立は確実だ。
今国会ほど、追及が必要なテーマが目白押しの国会はなかったはずだ。ところが議論は深まることなく、ただただ時間だけが過ぎていく。
「反撃能力」と言い換えた敵基地攻撃能力の保有の決定。5年間で43兆円という防衛費の拡大。運転期間延長や新増設を含めた原発の活用。統計開始初の出生数80万人割れという少子化の加速。首相秘書官の差別発言に端を発するLGBTなど性的少数者の人権の問題──。しかし、これらを追及され、岸田首相が答弁に窮する場面はほとんどない。それどころか、野党を、国会を軽視しているかのような“こんにゃく答弁”のオンパレードなのである。
岸田は国会召集前には、「国会論戦を通じて国民への説明を徹底する」と宣言していた。だが、始まってみれば、口をついて出るのは、
「手の内は明かせない」
「まず政策の中身を精査する」
「さまざまな視点からしっかり精査して判断する」
といった“常套句”ばかりで、真摯な姿勢はまったく見られない。
象徴的なのは、年初にブチ上げた「異次元の少子化対策」だ。「異次元」を「次元の異なる」と言い換えたり、「予算倍増」発言を修正したり。岸田が「家族関係社会支出を2020年度のGDP比2%から倍増する」と答弁したことが問題となった一件は、首相答弁を“訂正”させないために、木原官房副長官が尻ぬぐいしてさらにトンデモ発言を繰り出す愚。
「出生率がV字回復すれば、予算倍増は実現される」というア然ボー然の言い訳は、あらゆることが口先だけという、この政権の体質を如実に表している。
政治評論家の野上忠興氏が言う。
「国民が知りたいのは、もっと具体的な話。少子化対策の予算倍増と言っても、増税で手当てするなら世論の反応は変わってきます。岸田首相の対応は、糠に釘というか、開き直りというか。どうせ野党はバラバラで、対抗軸にならないと高をくくっている。内閣支持率が低迷しているとはいえ、危険水域の20%台後半から40%台までメディアによってバラつきがあり、微増傾向のものもある。当初は今国会を乗り切るのは大変とみられていたが、最近の岸田首相は変に自信を持ってしまっている。それで、国会もテキトーにやり過ごせばいいと思っているのでしょう」
野党はなぜ審議拒否して議論を深めないのか
目白押しの重大テーマ中でも、歴史的な大転換である防衛政策と原発政策については、もっと突き詰めた徹底的な議論が必要なはずだ。
敵基地攻撃能力の保有は、国際法違反の「先制攻撃」とみなされかねず、戦後の日本が国是としてきた専守防衛を逸脱する。米国製巡航ミサイル「トマホーク」400発を購入するというが、その性能には軍事の専門家も疑問符を付ける。敵基地攻撃能力を持つことがそもそも「抑止」になるのかどうか。むしろいたずらに近隣国を警戒させ、国民を危険にさらすことになるのではないか。
5年間で43兆円もの防衛費を捻出するために増税することにも世論は納得していない。国有資産の売却益や剰余金など、あらゆる“余り金”を当然のように防衛費に突っ込むのもおかしい。本来は、政策の優先順位が議論されなければいけないし、剰余金があるなら、むしろ少子化対策に充てるべきじゃないのか。
岸田がマトモに答弁しないから、こうした疑問や不安は解消されない。
そして、原発回帰である。
2011年の東日本大震災以来、この国は「原発依存度を可能な限り低減する」方針だったはずだ。ところが、ロシアのウクライナ侵攻による「世界的なエネルギー危機」を奇貨として、岸田は一気に再稼働、運転期間延長、新増設へと原発活用に舵を切った。
原子力規制委員会の委員の1人が反対した、60年超の老朽原発の運転延長をめぐる岸田の答弁も、とても納得できるものじゃない。多くの原子炉が設計時の記載に「耐用年数40年」とあるのに、岸田は「それは設計のためのもので、原子炉の寿命を示すものではない」と言ってのけた。安全より原発活用が優先なのか。
まもなく12回目の3.11がやってくる。いまだ3万人以上が避難生活を送っている。あの原発事故の悲劇は、岸田にとって忘却の彼方なのだ。
「岸田首相が説明不十分の居直り答弁をあれほど繰り返しているのに、野党はどうして審議拒否して抵抗しなかったのでしょうか。特に防衛費の問題は増税と絡むので、国民の関心は高い。野党が審議をストップしても国民は応援してくれたでしょうし、審議が止まればニュースになるので、国民に事の重大性がより伝わったでしょう」(野上忠興氏=前出)
議会と言論が健全でなければ民主主義は機能しない
確かにその通りで、予算案が「無風通過」した原因は野党にもある。
国の形を変えてしまうほどの政策転換なのだ。マトモな説明がないのなら、審議拒否をすることで、与党に「もっとしっかり議論しろ」「もっと具体的に説明しろ」と促す方法があったはずだ。野党第1党にまだ力があった頃は頻繁に審議拒否していたし、民主党政権下で野党だった自民党はその手法を乱発した。
自らと統一教会(現・世界平和統一家庭連合)との関係について公の場で記者会見を開かない細田衆院議長の下では審議できない、という正当な理屈だって、野党にはあるはずだ。
ところが立憲民主党は、国会戦術としての審議拒否を否定する“ゆ党”の日本維新の会と共同歩調を取っていることもあり、今国会では事実上、審議拒否を封印。結果的に与党を利することになり、自民はニンマリだった。
28日の衆院本会議の予算案採決でれいわ新選組の2議員が「牛歩戦術」をとって抵抗したことを与野党が「パフォーマンス」と批判しているが、彼らの方がよほど野党の矜持を見せているのではないか。
立憲が審議拒否に及び腰になったのには、大マスコミにも責任がある。「野党は批判ばかり」の大合唱で野党を萎縮させ、政権を監視して問題があれば批判するという野党本来の役割を弱体化させた。メディアが与党を利する片棒を担いでいるのだから、どうしようもない。
政治評論家の本澤二郎氏が言う。
「政権寄りの読売や産経だけでなく、どのメディアも無風の予算案通過を当たり前のように報じていたのには呆れました。健全な民主主義が機能するためには、議会と言論の2つともが健全でなければなりません。特に言論は重要。しかし、政権への忖度や弱腰、すり寄りが大マスコミに蔓延して、民主主義が腐ってしまった。本当に情けない」
この国は経済大国から没落しただけでなく、民主主義国家としても風前のともしびである。
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