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日本に“本当の民主主義”は根づくのか? 国は国民を守るためにある 三枝成彰の中高年革命
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/life/317903
2023/01/28 日刊ゲンダイ
写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ
岸田総理は“いい人”なのだろうが、その政治は最悪だ。国会を空洞化させ、防衛費増額や反撃能力保有や原発再稼働を仲間内だけで決めた。就任以来、方々への気遣いで消耗してきた末に、自説を押し通す方策として「強国志向」に目覚めたのだとしたら、恐ろしいことだ。恥ずべき行いである。「閣議」の運営は内閣法にも規定がなく慣例によるが、それを逆手に取って批判が予想される政策を「閣議決定」するのは許されない。
日本人は戦後、幸せだった。自民党主導による日本の政治は常に完璧だったとは言わないが、国民に“1億総中流”の生活をもたらした。子どもの身売りも大恐慌もなく、国を右肩上がりの成長曲線に乗せてきたのだ。
それが安倍政権により一変し、岸田政権に至ってさらに落ち込んだ。このままでは日本は衰亡への坂道を転げ落ちるだろう。
故・安倍総理もここまでの対米従属はしなかった。来年度の米国製兵器購入予定額は1兆4768億円。バイデン米大統領の子分のごとく振る舞い、莫大なカネを支払って、目的は政権の延命?そんなバカな話はない。米海兵隊は組織改編で「海兵沿岸連隊」となり、有事の際は沖縄を含む南西諸島に分散配置される。そこに島民たちの安全確保は盛り込まれていないが、日本政府はそれを許し、自ら戦争に加担することをも可能にした。
ドイツがウクライナへ最新式戦車の供与を決めたが、なかなか踏み切れなかったのは「ナチスの再来」との非難を避けたかったからだ。
今回の安保政策の大転換は、それこそ“異次元”の事態を日本にもたらすことになる。増額された23年度の防衛費は6兆8000億円。それだけのカネを、なぜ国民生活の向上に使わないのか。使えない兵器を何千億円も出して買うなら、老齢年金の増額や社会的弱者の生活支援に使うべきだ。それができたら、確実にこの国はよい方向に変わる。内閣支持率も上がり、政府への信頼も深まるだろう。
米・ロ・中に気を使い、八方塞がりの今、かくなる上は「自立」を目指そうと、岸田総理は強い日本を夢見たのか。完全に見当違いだ。国は国民を守るためにあるという大前提が忘れられている。
私たちはいつ、羊の群れのようにおとなしい国民に成り下がったのか。声を上げねば為政者に侮られる。批判精神を忘れず、政治家にとって怖い存在にならねばならない。
次の選挙で私たちは、こんな愚かな亡国政権は絶対に受け入れないと声を上げるべきだ。あまたの犠牲の上に打ち立てた民主主義は、しっかりとこの国に根づいている──そう胸を張って言える日は来るだろうか。
実際に国力は落ちている。26日付の日刊ゲンダイによれば、人口1億2000万人で長らくGDP世界3位だった日本を、人口8400万人のドイツが追い抜くという驚きの予測が出た。2000年に世界2位の1人当たりGDPも27位で、29位の韓国に早晩抜かれるという。労働生産性の低下ゆえだ。今や平均給与は世界24位で米国の約半分しかないのである。年に100日も休んでいる場合ではない。皆がしばらく休日返上の覚悟で働かない限り、挽回はできない。もう目を覚ますべきだ。
さて、2017年10月から5年余り続けたこのコラムも、今回で最終回となる。よく続いたものだと思う。毎回勝手なことを書き連ねてきたが、おつきあい下さった皆さんには深く感謝申し上げたい。
今まで読んで下さり、本当にありがとうございました。
三枝成彰 作曲家
1942年、兵庫県生まれ。東京芸大大学院修了。代表作にオペラ「忠臣蔵」「狂おしき真夏の一日」、NHK大河ドラマ「太平記」「花の乱」、映画「機動戦士ガンダム逆襲のシャア」「優駿ORACIÓN」など。2020年、文化功労者顕彰を受ける。
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