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いまあえていう 安倍政権の“コロナこじつけ”財政ばらまきを見逃すな!
毎日新聞 エコノミストオンライン
2020年9月7日
安倍晋三首相が8月28日、辞意を表明した。“一強”と呼ばれ、約7年8カ月続いた安倍政権が幕を閉じる。世は次期総理をめぐる総裁選の行方に視線が集まっているが、いまこの時こそ、安倍政権の「財政政策の検証」と「特別勘定の設置」の行うべきだ。
財政政策の検証は特に新型コロナウイルス対策における財政政策と支出の検証を行い、特別勘定の設置は新型コロナ対策分を一般会計から分離して管理し、両施策により財政の健全化を図る必要がある。
国債発行ついに1000兆円突破
新型コロナで2020年度の財政は別表のように大きく膨らんだ。新規国債発行額は90.2兆円に増加し、リーマン・ショック後の09年度の経済対策による国債発行額52兆円を大きく上回った。
これにより、公債依存度(一般会計歳出額のうち、国債発行が財源となっている割合)は、当初予算時には31.7%(うち赤字国債の割合は24.7%)だったが、第2次補正予算まで含めると56.3%(同44.5%)に跳ね上がった。国の歳出額の半分以上が国債という借金によって賄われる。
これは、補正予算(第1号)と第2次補正予算(第2号)の一般会計歳出分(いわゆる真水部分)の財源をすべて国債の発行に頼った結果であり、20年度の国債発行残高は、ついに1000兆円を突破することになった。
先進国で日本だけ公債依存度が増えている
1960年度の予算に占める国債費の割合は、僅か0.03%に過ぎなかった。それが、70年度に0.3%、80年度に5.5%、90年度に14.3%、00年度に21.4%と一貫して上昇している。
政府の公的債務(大半が国債で、ほかに借入金、政府短期証券など)の国際比較を行う場合には、公的債務の対GDP比が使われるが、IMF(国際通貨基金)の推計によると、19年のG7(先進7カ国)の公的債務の対GDP比は、日本が飛びぬけており、237.7%にもなっている。100%を上回っているのは米国(106.2%)とイタリア(133.2%)だけで、残る4カ国は100%未満だった。
それ以上に問題なのは、比率が継続して上昇しているのは唯一、日本だけだという現実だ。日本以外のG7各国は、財政規律に目を配り、財政健全化を進めている。しかも、20年の日本の公的債務の対GDP比は、2回の補正予算によって250%を超える水準まで上昇する。
コロナ効果が判然としない数々の財政支出
そこで問題となるのが、“果たして財政は健全に使われているのか”という点だ。安倍政権が終えんを迎えるのを好機と捉え、まずは新型コロナ対策に使われている財政を検証することから始める必要がある。
新型コロナ対策だけでも、いわゆる“アベノマスク”に始まり、持続化給付金をめぐる「サービスデザイン推進協議会」への不透明な業務委託問題。あるいは、安倍首相が自ら“強盗”と言い間違えたことで失笑を買った総事業費約1兆7000億円規模の支援事業「Go Toキャンペーン」の妥当性、加えて、このキャンペーンに事務経費が2割近い約3000億円にものぼる問題など、さまざまな問題点が指摘された。
だが、4月20日に閣議決定された「新型コロナウイルス感染症緊急経済対策」では、Go Toキャンペーンと同様に「V字回復フェーズ」として盛り込まれた様々な施策の中には、まだまだ疑問符が付く政策がある。
例えば、「自然災害からの復旧・復興の加速のための公共投資」や「防災・減災、国土強靱化の強力な推進のための公共投資」といった新型コロナとはまったく関係のない、通常は一般会計の公共事業として計上されるようなものや、「労働力不足の解消に向けたスマート農業の導入・実証」のように、新型コロナに無理やりこじつけたもの、あるいは、「生徒やアマチュアを含む地域の文化芸術関係団体・芸術家によるアートキャラバン」、「子供たちの自然体験・文化芸術体験・運動機会の創出」など新型コロナ対策として、どのような効果があるのか判然としないものまで盛り込まれている。
今こそ財政監視機関の設立を
もちろん新型コロナ対策に必要な財政は惜しむべきではないのは、いうまでもない。しかし、こうした事業に対して、国民の税金を“新型コロナを理由”に使わせてはならない。筆者は7月9日の拙稿「財政健全化をしない日本は先進国失格だ」で、独立財政機関(IFI:Independent Fiscal Institutions)を設立し、財政状況を管理・検証するべきだと述べた。今こそIFIを設立し、まずは新型コロナに関連した財政支出の検証を行うべきだ。
さらに、新型コロナ関連の予算については、一般会計と分離して特別勘定を設置し一元管理することで、その内容を厳しく管理しながら債務処理を行う方法を検討する。そして、この特別勘定は時限措置とし、期間内に新型コロナ関連の債務を処理するようにすべきである。
新総理はコロナ特別債の発行の検討を
11年3月11日に発生した東日本大震災からはや10年が経とうとしているが、このときには「東日本大震災復興特別会計」が作られ、震災復興に関する経費のすべてを復興特別会計の歳出として計上した。財源は「復興債」という国債を発行することで賄った。これを忘れてはならないが、国民は意外にもそのことに気づいていない。
この復興債の償還財源として、法人税は2012年度から2年間減税し、その後2年間は税額の10%を上乗せ、所得税は13年からの25年間、税額に2.1%を上乗せ、住民税は14年から10年間、年1000円の徴収が実施されている。
(復興債の償還財源が説明不足だったため加筆しました)
この事実をご存じろうか?
新型コロナについても、同様に復興債のような特別債の発行などを検討し、その財源を明確化した上で、償還方法として極力国民負担の少ない方法を検討すべきである。 安倍首相の後継首相には、ぜひ、新型コロナ関連の財政支出の検証と、それを実施するための独立財政機関の設立、そして新型コロナ関連の予算に対する特別勘定による一元管理を実現して欲しいものだ。
(鈴木透・ジャーナリスト)
https://weekly-economist.mainichi.jp/articles/20200907/se1/00m/020/001000d
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