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安倍政権の弊害についていまだにきちんと可視化されていない部分がある。それは、健全な官僚制を破壊し「亡国の官僚」が闊歩するようになったことだ。
民主党政権では官僚の天下りが規制されていた。ところが、安倍政権発足後の2015、16年ぐらいから完全に解き放たれてしまった。これが、いま深刻な事態を招いている。
経産官僚は電力関連や石油・エネルギー関連の企業や業界団体に天下っている。防衛省からは防衛産業への天下りが再開された。財務省からも政府系金融機関トップへの天下りが復活してきている。
その結果、何が起きたか。経産省は、電力会社が運営する原発の「原則40年、最長60年」という運転期間を除外する案を検討。また、物価高対策として電力会社や石油元売りに補助金を投入している。米国製兵器のライセンス生産を請け負っている防衛産業を天下り先にしている防衛省は、防衛費倍増をもくろむ。国民の安全や不安を無視して、自らの天下り先を優遇するようなやり方だ。
財務省に至っては、公文書を改ざんし、職員を自殺に追い込んでおきながら、政府系金融機関のトップに天下っている。その結果、元財務官の黒田東彦氏が総裁を務める日銀が「貸出金」という名目でバラマキを開始。コロナ緊急融資と称して約40兆円を中小企業への融資のために地銀や信金に拠出していたが、一方で政府系金融機関を通じて何十兆円というカネを大企業にもばらまいていたのだ。
感染が落ち着いてくると日銀は、今度は国債を大量に引き受けた。そして出てきたのが「コロナ予備費」と呼ばれる不透明な予算だ。国会に報告した約12兆円のうち9割超が「使途不明」状態だったいわく付きの予算である。財務省は巨額のポケットマネーを手に入れ、国民のチェックを受けずに自らの権限で使途不明のまま、ばらまいているのも同然ではないか。
各省庁からカネをつぎ込まれて肥え太る天下り先の企業・団体の姿は、ロシアのプーチン政権の下で甘い汁を吸い続けるオリガルヒ(新興財閥)に酷似している。国民が物価高に苦しむ中、オリガルヒを優遇する亡国官僚は、まるで潰れかけた家のシロアリのようだ。
こうしたタチの悪い連中が復活したのが安倍政権だった。その一面をキチンと見なければ、現・岸田政権の政策も本質が見えてこない。
金子勝立教大学大学院特任教授
1952年6月、東京都生まれ。東京大学経済学部卒業、東京大学大学院経済学研究科博士課程修了。法政大学経済学部教授、慶應義塾大学経済学部教授などを経て現職。慶応義塾大学名誉教授。文化放送「大竹まことゴールデンラジオ」などにレギュラー出演中。近著「平成経済 衰退の本質」など著書多数。新聞、雑誌、ネットメディアにも多数寄稿している。
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