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財務省主導岸田内閣の利権財政
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2022年10月28日 植草一秀の『知られざる真実』
岸田内閣が総合経済対策を閣議決定した。
補正予算の一般会計歳出規模は29.1兆円。
大型補正予算編成だ。
その一方で岸田内閣は年金給付の開始年齢引き上げ、年金保険料引上げや消費税増税を検討している。
国民の利益ではなく官僚機構・利権政治屋・癒着企業の利益だけが追求される。
「利権の予算」は拡大する一方で、「権利の予算」は縮小する一方なのだ。
財政政策運営で一番大切なことは国費を何に使うかということ。
財政資金の配分こそ最重要のテーマ。
ところが、現実には予算規模だけが論じられる。
規模が大きければ積極予算、規模が小さければ緊縮予算と批判を浴びる。
規模よりも重要なことは予算の使い道。
財政資金配分が重要なのだ。
結論を示せば、「利権の支出」をゼロにして「権利の支出」だけにするのがよい。
「権利の支出」の中核は社会保障支出。
社会保障支出の特徴は制度が確定し、ルールによって支出が行われること。
これを「プログラム支出」と呼ぶ。
「利権の支出」は特定の事業者、団体に財政資金を配分するもの。
利権の巣窟になる。
これを「裁量支出」と呼ぶ。
財務省は「権利の支出」=「プログラム支出」を極限まで削減し、「利権の支出」=「裁量支出」を極限まで拡大する方針を示す。
「プログラム支出」は「票とカネ」にならない。
「裁量支出」は「票とカネ」になるから好まれる。
大型補正予算が編成されるとき、圧倒的シェアを占めるのは「裁量支出」。
一番透明な財政支出は国庫から国民にお金を直接手渡すこと。
一人10万円の給付金などは、もっとも透明公正な財政支出だった。
しかし、この方式は「票とカネ」になりにくい。
権利として給付を受ける国民は給付があったからといって自民党に投票しない。
特定の人、特定の事業者、特定の団体を選んで財政支出を実施すると、財政支出の恩恵を受ける者は恩義を感じて資金をキックバックしたり、選挙での協力を実行したりする。
旅行支援で自治体が特産品プレゼントを実施するとき、単純にくじ引きで商品を渡さない。
無意味なアンケートを実施して、アンケートを実施する外郭団体がプレゼント付与事業を受け持つ。
この外郭団体は役所の天下り団体。
この天下り団体に財政資金が流れ込む。
無駄なアンケートをやめれば事務手続き費をプレゼント代に回せる。
どの事業者の特産品をプレゼント商品にするのかも大きな利権。
ふるさと納税も同じ。
ふるさと納税の対象品に選定されれば事業者は利得を得る。
事業者は選定された見返りに献金を実行したり、選挙で応援したりする。
ふるさと納税は自分が居住していない地方公共団体に自分が居住する地方公共団体に支払うはずの地方税を振り替えるもので、そうすると返礼品をもらえる制度。
返礼品の分が節税になるからふるさと納税が行われる。
ふるさと納税を実行する人だけが減税の恩恵に浴す。
その金額を税金から差し引けばいいだけのこと。
しかし、特定の財、サービスが選定される。
これも利権。
すべての財政活動が利権化している。
2020年度は補正予算で70兆円も政府支出が追加された。
今回は29兆円。
これだけのお金があれば消費税減税を実施できる。
1年間、税率を5%にするのに10兆円あればよい。
巨大な国費を投下するなら消費税減税や国民全員に対する一律給付などが最も透明で公正だ。
一律給付の場合、給付金を課税対象にすれば高額所得者は給付金の多くを税で国庫に返納することになる。
岸田内閣の財政政策は、ほぼすべてが利権予算であり、ここに最大の問題がある。
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