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※2022年10月18日 日刊ゲンダイ1面 紙面クリック拡大
※紙面抜粋
※2022年10月18日 日刊ゲンダイ2面
【盗人猛々しい被害者ヅラの政府・与党】
— 笑い茸 (@gnXrZU3AtDTzsZo) October 18, 2022
ズブズブの共犯者たちが「調査」のお笑い
日刊ゲンダイ pic.twitter.com/Vx5DOwoSma
※文字起こし
「関係を持たない私が責任を持って、未来に向けてこの問題を解決したい」──。のっけから、自らは統一教会(現・世界平和統一家庭連合)と関わりがないことを強調した答弁に驚いた。
ようやく、17日から始まった衆院予算委員会。冒頭のセリフは岸田首相が自民党議員の質問に答える形で、宗教法人法に基づく統一教会への「報告徴収・質問権」の行使検討を指示した際のひとコマだ。
宗教法人法に基づく質問権の行使が実現すれば初めて。結果次第では宗教法人格を剥奪する「解散命令」の請求につながる可能性はある。
しかし、今回の指示は自民党の統一教会総汚染で支持率下落に歯止めが利かず、岸田周辺がひねり出した窮余の一策に過ぎない。教団のせいで、無関係の自分が追い込まれているという被害者意識が透けて見える岸田の他人事のような答弁が、その証拠でもある。
そもそも、岸田に教団を解散させるつもりがあるのか。その本気度は極めて怪しい。まず、文化庁が指示を受け、宗教や法律の専門家による「宗教法人審議会」を開催するのは来週25日。その後は専門家の意見を聞きながら、「質問権」を行使する場合の考え方や基準、具体的な質問項目などをまとめる段取りだ。
権限行使の目標は「年内のできるだけ早いうち」(永岡文科相)。調査終了時期の目安については、衆院予算委で立憲民主党の山井国対委員長代理に何度聞かれても、岸田は「具体的に申し上げるのは難しい」と繰り返すのみだった。
教団2世の人権蹂躙を無視した時間稼ぎ
統一教会の問題に取り組む「全国霊感商法対策弁護士連絡会」(全国弁連)は、すでに政府に教団の解散命令を裁判所に請求するよう申し入れている。全国弁連の阿部克臣弁護士は「解散命令請求の要件は十分満たしている」「十分な資料を国も持っているはずだ」と13日の野党ヒアリングで訴えていた。
17日の予算委で永岡は「手続きの途中でも、解散命令請求に足る事実関係を把握した場合は、速やかに裁判所に請求する」とも語った。岸田も調査の理由について「2016年、17年に法人自体の組織的な不法行為責任を認めた民事裁判の例が見られた」と説明した。だったら、サッサと「解散の手続き」に入ってもよさそうなのに、なぜ、まわりくどいプロセスを踏もうとするのか。
全国弁連代表世話人の山口広弁護士は日刊ゲンダイの取材に「質問権を行使したところで統一教会に時間稼ぎされ、回答が返ってくるころには世間の関心が薄れてしまう」と懸念していた。それこそ「やっている感」をいきなり演出し始めた岸田以下、自民党政権の狙いではないのか。立正大名誉教授の金子勝氏(憲法)はこう言った。
「前例のない手続きであり、戦前の宗教弾圧の反省に基づき、憲法が保障する『信教の自由』も大事にしなければいけない。デリケートな問題をはらんでいるとはいえ、教団2世らは今も基本的人権を踏みにじられています。この問題を一刻も早く解決する気なら、岸田首相は最低でも『速やかに結論を出す』と調査期限を設けるべき。ただでさえ、調査権行使に強制力はない。早くしないと教団側に証拠隠滅の機会を与えるだけです」
岸田は17日の答弁で、過去に裁判所から解散命令が下された地下鉄サリン事件のオウム真理教と、霊視商法詐欺事件の明覚寺の2例を挙げ、「オウムで7カ月、明覚寺で3年、確定までにかかった」旨を説明した。
「言い訳めいています。調査権行使の期限は訴訟と違い、政府が独断で決められます。『国民が問題を忘れるまでの時間稼ぎ』とのそしりを免れたければ、岸田首相は期限を定めるべきです」(金子勝氏=前出)
癒着の実態解明にフタをし幕引き図る魂胆
17日の予算委で質問に立った自民党の萩生田政調会長は「私自身も地元の世界平和女性連合の方々とご縁があり、これが旧統一教会の関連団体ということだった」と言及。「今なお高額献金や霊感商法の返済が続いている方がいる」「関与が結果として教団の信用を高めることに寄与してしまったのではないか」と猛省のポーズを取ったが、いまさら内情を知ったようなスットボケに国民は皆、呆れたはずだ。
萩生田は信者らと長年にわたり関係を築き上げ、「家族同然」「八王子市議時代から30年の付き合い」などの証言がある。萩生田に限らず、自民党と統一教会はなぜ、これほどの癒着をしたのか、その歴史的背景に何があるのか──。
その実態解明もそこそこに、初の「調査権行使」への検討で問題の焦点をズラす。教団側にだけ責任を負わせ、ズブズブの共犯関係にフタをして幕引きを図る。浅はかな狙いはミエミエだ。
「宗教法人法に基づく法人格を持つ団体ではない」(永岡)と、教団「関連団体」を質問権の対象外にしたことからも、フザけた魂胆がうかがえる。自民党の「点検」の結果、教団との何らかの接点を認めた国会議員は計180人。大半が関連団体の会合やイベントに祝電を送ったり、参加・あいさつしたものだ。
統一教会側も教団本体の「組織的な選挙支援」を否定するのに、「政治に友好団体が強く関わってきたのは事実」(田中富広会長)などと関連団体を言い訳の材料にしてきた経緯がある。いわば関連団体の存在こそが、自民党と統一教会の癒着の“隠れミノ”。そこをハナから質問権の対象外にしたのは、宗教法人法に基づく調査がズブズブの共犯者たちに及ばないようにする「防波堤」にも映るのだ。
09年と12年が変節のターニングポイント
今や盗人猛々しい被害者ヅラの自民党と統一教会の共犯関係をひもとくには、安倍元首相の祖父・岸元首相以来「3代」に及ぶ蜜月を避けては通れない。ジャーナリスト・鈴木エイト氏の近著「自民党の統一教会汚染 追跡3000日」(小学館)によると、意外にも安倍は当初、教団とは一定の距離を置いていたという。
自民党全体にも当てはまる変節のターニングポイントは09年の政権与党からの下野。そして12年の第2次安倍政権の発足である。09年衆院選では萩生田や山際経済再生相らが落選、それを機に教団側への傾斜が強まったともいわれている。
また、この時期は全国に点在する統一教会系の霊感商法店舗が次々と摘発を受け、中でも教団幹部に衝撃を与えたのが09年、東京・渋谷の印鑑販売会社「新世」の摘発だった。社長や営業部長、街頭勧誘員ら5人が逮捕。本部のお膝元にある教団の施設が警視庁公安部による“ガサ入れ”を食らったのだ。
以降、教団側は「政治家対策を怠った」との反省から、保守系政治家への接触を強め、教団票を差し出すことで関係を深めていった。第2次安倍政権の発足以降は閣僚、副大臣、政務官人事において教団と関係が深い政治家が登用されるようになり、中堅・若手議員は競い合って教団との「縁」を求めるようになったのである。
前出の鈴木エイト氏が言う。
「16年には教団2世の大学生による政治グループ『勝共UNITE』が結成。『安保法制賛成』『憲法改正実現』『安倍政権支持』を訴え、現在も活動を続けています。歴代最長8年8カ月に及ぶ安倍政権は目先の国政選挙や憲法改正に向けた世論誘導のため、最も手を組んではいけない相手とギブ・アンド・テイクの関係を続けたわけです。国のトップが自らの政治的野心の実現に向け、反社会的教団と取引したことへの追及を緩めてはいけません」
ズブズブの共犯者たちが「教団調査」とはお笑いだが、その背景には決して笑えない闇が広がっていることを忘れてはいけない。
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